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挨拶の仕方から口癖。取引先との折衝における交渉スタイル。トラブルが発生したときに、重要視するポイントや初動対応の流儀。同じ企業に属する人々は、部門や階層が違っていても、何かしら似た特徴を備えているものだ。とはいえ、実際に実現したい「企業バリュー」と、実際に定着している企業カルチャーにギャップがあり、「どうすればいいカルチャーが根付くのか」と悩む経営者、マネージャーは多い。その問題を解く鍵は、「上長の言動」と部下の「絶望の学習」にある。
「あの会社の人」っぽさが企業カルチャー
ある企業の人々に会うと、似たような雰囲気があり、少しおかしく感じる。そのような経験をしたことはないだろうか?
たとえば、ある会社の人々は、時間にルーズで、定刻よりも数分遅れて会議室に集まるのが通例。時間だけでなく、事前の準備や当日のアジェンダの検討、どの面においても、あいまいさや詰めの甘さがある。
このような組織の人々は「断定することを避ける」傾向にある。口癖は「二転三転してすみません」「あらためて社内確認の上、回答します」という感じで、一事が万事、おぼつかない。
その人が営業部門であっても、開発部門であっても、なんとなく、そのルーズさが共通する。
別の例もある。ある企業では、誰と会っても、打ち合わせの定刻の数分前に集合が当たり前、終了時間も揺らがない。協議事項は綿密に検討され、隙がなく緊張感が強い。見積書や提案内容のチェックも厳密であれば、プロジェクトマネジメントも厳密、自社にも取引先にもとかく厳格なのである。
前者のような「あいまいさを重視する傾向」や後者のような「明確さを重視する傾向」といったものは、「企業カルチャー」と呼ばれる。
企業カルチャーにはさまざまなものがある。
筆者が実際に接点を持った経験では、
- ・何かと言えば責任問題をあげつらうことを好むカルチャー
- ・自社(あるいは自身のチーム)の予算消化に余念がないカルチャー
- ・新規性のあるものに飛びついては失敗することを好むカルチャー
- ・同僚の仕事に対してとにかくドライで互いに干渉しないカルチャー
- ・いつも互いにマウンティングすることに余念がないカルチャー
- ・成果ではなく労働時間や作業時間を重視するカルチャー
などがある。どのクライアントと仕事をするときも、ある程度関係性が濃くなると、そのカルチャーを感じる瞬間というものが訪れる。それを分類し、系統化すると、「企業行動生態学」とでも呼ぶべき学問になりそうで、筆者は興味深く感じている。
神戸製鋼事件から考える「実際のカルチャー」と「バリュー」のギャップ
企業カルチャーを考えるときには、「企業バリュー」(社員が持つべき価値観)とセットで考えることが重要だ。
一般的に、「バリューの統一が強い実行力を実現する」と言われている。しかし、「掲げているバリュー」と、「実際のカルチャー」にギャップがあることが多々ある。
企業バリューを形にしたものにもいろいろあるが、「企業規範倫理」はその1つだ。先日大きなニュースになった神戸製鋼でも、「
企業規範倫理」が策定されている。
これを参照すると、いの一番に記載されているのがこの文言だ。
1.法令その他の社会的規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行う。
一体この言葉にどの程度の実効的価値があったのだろうか。
もちろん実態として何が起きていたのかについては、さまざまな検証、処分、報告等を待たねば軽率に断定することはできない。しかし、虚偽・不正があったことと、虚偽・不正を否定する「社会的規範の順守」が規範倫理として、企業バリューとして謳われていたことは、揺らぐことのない事実だ。
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