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  • 2019/01/30 掲載

「カスタマーサクセス」を取り入れてはいけない

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最近「カスタマーサクセス」という言葉が脚光を浴びている。「自社の業務にカスタマーサクセスを取り入れるには、どうすればいいか」と考える人もいるだろう。しかし、カスタマーサクセスが何か、何をすべきかを理解していないなら、「カスタマーサクセス」を取り入れてはいけない。その理由をお教えしよう。
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カスタマーサクセスは取り入れてはいけない?
(© daniil - Fotolia)

IT業界から他業種に広がる新興概念「カスタマーサクセス」

 「カスタマーサクセス」とは、自社のプロダクトが顧客の事業に貢献し、それが次の商談や成長の機会につながるという考え方で、IT業界から生まれたものだ。

 筆者なりにこの言葉を定義すると、次のようになる。

顧客が自社の提供する製品・サービスを活用し続けるための一連の組織的活動。顧客の事業目的、目標、及びその実現過程における状況や課題を理解したうえで、自社製品・サービスを通して顧客の課題を解決すること。あわせて、この活動を最大多数の顧客に対して低コストで提供できるための、自社製品・サービス、ならびにその顧客への提供方法の改善点を発見し、改善を実現し続けること。

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 さまざまな製品やサービスが日進月歩で生まれ、進化する今日の状況にあっては、「良いものを作ったら、自然とそれが発見され、求められ、売れていく」という考えはもはや通用しない。「なぜ自分たちのプロダクトが顧客にとって不可欠なのか」。この問に答えることこそが、真の課題解決につながるのである。

 IT業界の過去を振り返ると、SIerが大規模なIT製品・システムの導入を担ってきたこれまででは、IT製品・システムの受益者・提供者が限られていた。技術についても豊富な選択肢があったわけでもなかった。その結果、ユーザーよりもベンダーが力を持ち、機能の提供側の論理が強いものが生み出されてきたのであった。

 しかしいま、クラウド・コンピューティングの発展により、従来製品を上回る機能や利便性をすばやく提供するプレイヤーが続々と出現している。そのため、ユーザー側の力が強くなってきている。

「購買」の概念の変化と「カスタマーサクセス」

 ベンダーとユーザーの力関係が変化することで、「購買」という言葉の意味も変わってきた。

 いまや「購買」とは、製品やサービスそのもの所有するために金銭を支払うことではない。購買とは、製品やサービスを利活用することで得られるメリット、利便性、結果、といった最終成果物を金銭との交換で手に入れることなのだ。

 この考え方はもともとIT業界で発生したが、いま小売りや流通、教育、飲食などさまざまな分野で取り入れられている。

「カスタマーサクセス」は効果があるものではない

 カスタマーサクセスが叫ばれているいま、「我が社の未来のためにも、ここはひとつ取り入れよう」と考える経営者がいてもおかしくはない。そうした経営者は、手始めに「カスタマーサクセス責任者」を任命したり、「カスタマーサクセス部門」を立ち上げたりするだろう。

 しかし、急にカスタマーサクセス担当者に任命された人は「うちには営業部門も、顧客サポート部門もある。一体私の仕事って、何をどうすることなのだろうか?」と思うだろう。

 既存顧客を回って課題をヒアリングしたり、導入時のコンサルティングや技術営業的なことをやってみたりすれば、それなりに仕事らしさは出てくる。だが、コストを回収するだけの明確なロジックは、実はそこにはない。

 カスタマーサクセス活動は、何をしたらどこにどう作用するのか、その構造が見えづらい。利益とコストが比較的換算しやすい開発部門や、伝統的にコストセンターとして認識されているコーポレート部門とは違うのだ。

 ひとくちに「カスタマーサクセス」といっても、人によってその受け取り方はさまざまだ。

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カスタマーサクセス部門にありがちな失敗

 「顧客満足第一主義」と理解する人もいれば、「サポートに毛の生えたもの」と認識している人もいる。カスタマーサクセスは、プロフィットセンターとしてとらえるのか、コストセンターとしてとらえるのかという位置づけもバラバラだ。

 だからこそ、深く考えずに「カスタマーサクセスを取り入れる」と、チグハグ感の否めない状況が生まれてしまう。

【次ページ】カスタマーサクセスの最大の敵は、「部門間利益相反問題」
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