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  • 2020/05/22 掲載

なぜプロジェクトに「ヒーローはいらない」のか? 苦労を求めるヒーロー症候群の弊害

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多くの仕事にはマニュアルがある。しかし、当初の計画から変化していくタイプのプロジェクトは、過去のプロジェクトの計画書や議事録、成果物だけを見てもそのプロセスが明らかにならず、成功に導くことが難しい。こうしたとき、プロジェクトを窮地から救ってくれる「ヒーロー」的存在に頼りがちだが、プロジェクト・コンサルタントの後藤 洋平氏によれば「安易にヒーローに頼るべきではない」という。それはなぜか。同氏に、プロジェクト成功の秘訣を教えてもらった。
本記事は『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』の内容を一部再構成したものです。
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プロジェクトがトラブルに見舞われたとき、チームを救ってくれる「ヒーロー」。ありがたい存在のはずだが、なぜ「いらない」と言い切れるのだろうか?

プロジェクトの成功とは何か

 どんなプロジェクトでも、終盤になっていざ蓋を開けてみたら、当初の想定と異なる現実に直面することがあります。現実との関わりをもつ中で、状況は絶えず変化しているからです。ですから、プロジェクトの成功とは、最初に描いた通りの物事を実現することではありません。

 社会を見渡すと、プロジェクト当初に描いた青写真にこだわりすぎて、それが実現しない現実とのギャップを埋められず、炎上に炎上を重ねてしまうことが多いですが、それではいけません。プロジェクトとは、「自分たちが本当にやりたいこととは、何なのだろうか」と探求する過程そのものだ、ともいえます。

プロジェクトは更新し続けることが大切

 「Xという状態を目指して、AとBとCを実行する」。新しい物事を始めるときは、誰だってこのような単純な図式を最初に思い浮かべます。ですが、ここから始まる戦いがプロジェクトです。

  1. AとBとC をやってみた結果、Cは不要で、代わりにDとEが必要なことがわかった
  2. 最初からやり直したいが、コストと時間が足りない
  3. 考え直したところ、XでなくYを実現すれば用が足りると判明した

 ここで起きているのは、「X=A+B+C」から「Y=A+B+D+E」への更新です。プロジェクトの進行に長けた人は、例外なく「更新」のためのアイデアを発想したり、それを関係者同士に伝えたりするコミュニケーションを得意としています。

 なぜプロジェクトを立ち上げるのかといえば、いまここにはまだ存在しない価値や成果を実現させたいからです。あらかじめ持っている部分的な知識や情報だけでは、最初からすべてを見渡した完璧なプランを立てることはできません。まず考え、実行し、結果を解釈して、次の一手をまた実行する。その繰り返しの中で、本当のテーマにたどり着くのがプロジェクトです。

 つまり、プロジェクトにおける成功とは、「理想と現実の間を往復することで、本当にやりたかったことは何かを発見し、その姿にたどり着くこと」です。ただし、「臨機応変」と「なりゆき任せ」には歴然とした違いがあります。後者であってはいけませんし、「思いつき」「口からでまかせ」「出たとこ勝負」などもってのほかです。

 そうならないために、必要なのはただ一つ。「本当に得たい価値とは、一体何なのだろうか?」を問い続けることです。

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本当にやりたかったことは何かを発見することが、プロジェクト成功のカギだ

苦労しないとヒーローになれない!?

 プロジェクトが炎上してしまった際、火消しに走り回って奮闘する姿が「がんばっている」「よくやっている」と評価されることがあります。もちろん課題解決のために力を尽くすのは大切ですし、我が身を惜しまずチームに貢献するのは尊いことです。

 しかし無意識のうちに、あえてそのような状況に喜びを見い出してしまう困った心理状況になることがあります。また、急なトラブル対応や徹夜、残業はときに、自己顕示欲や達成感を満たしてくれます。「自分がいないと現場が回らない」「やっぱり自分の力が必要なんだ」といったことを感じたいがために、困難な状況を内心嬉しく思うことは、ヒーロー症候群とよばれています。

 どんなに難しいプロジェクトでもトラブルなく無事に終わったら、なんとなく周囲の人は「当たり前」とか「そんなに難しいものではなかった」といった印象が残るものです。

 筆者自身の体験としても、「いろんな工夫をして、トラブルを未然に防いでうまく進めたプロジェクト」よりも「不注意のせいでミスがあったけど、がんばって挽回したプロジェクト」のほうが評価されたり、感謝されたりします。改めて考えると、なかなか不思議なものです。

【次ページ】本当に有効な行動は何か
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