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「大変なプロジェクトが終わって、達成感がある」。これだけ聞くと、「良かったね、お疲れさま」と言いたくなるが、一度考えてみてほしい。そのプロジェクトは「大変」である必要はあったのだろうか。もっと簡単にできたのではないだろうか。働き方改革が叫ばれ、生産性向上が重視される中、我々は無意識のうちに「達成感」を求めてやらなくていいことをやっていないだろうか。ここで、生産性を本当に上げるためのプロジェクトマネジメントをお伝えする。
「うまくいかなくて当たり前」?「うまくいって当たり前」?
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とはプロ野球監督の言葉である。負けるときは、負けにつながる必然的な要因があるが、勝つときには、その明確な理由が思い当たらない。
これは、私たちが日々直面するプロジェクトの世界においても当てはまる考え方だ。
プロジェクトには極論すると2つの状態しかない。すなわち「うまくいっている」か「うまくいっていない」かだ。
プロジェクトの世界で、「うまくいっていない」状態は非常に見えやすくわかりやすい状態で、「炎上」「遅延」「予算オーバー」として観測される。
思っていた結果がでない、それによって全体の計画が狂う。プロジェクトとはそんなことばかりだ。そしてその直接的な要因はたくさん見つけられる。計画を立てたときの想定の甘さやメンバーの経験不足。「負けにつながる必然的な要因」には事欠かない。
一方でプロジェクトが「うまくいっている」ときというのは、実は曖昧な状態だ。炎上もなく遅延もなく、スケジュールも予算も計画通りに進行する。そういうことも、たまにはある。しかしそれが一体なんのおかげなのかというと、うまくいっているだけに、特定しづらい。
顧客のものわかりがよくて、無理難題を押し付けてこないからかもしれない。ベンダーが有能で、無理難題を頑張ってこなしているからかもしれない。顧客とベンダーの双方が協力しあって、難しい要件をともにクリアしているのかもしれない。
ベンダー側のプロジェクトマネージャーが優秀なのかもしれないし、顧客側プロジェクトオーナーが優秀なのかもしれない。いや、彼らは凡庸なのだけど、伝説のスーパーアーキテクトが下支えしていることによって平和が保たれているのかもしれない。
いや、ことはもっと単純で、最初から要件が簡単だっただけなのかもしれない。
同じ状況、同じ課題に対して、複数のチームが同時に取り組めば、その比較によって成功要因は分析できるかもしれないが、もちろんそういうことはできない。
考えてみれば、プロジェクトとは計画立案時においては「うまくいって当たり前」だが、実行時には「うまくいかなくて当たり前」という不思議な性質を持っている。さらに、「比較対照ができない」という性質を加えると、そこに携わる人の能力や努力、各人の貢献度合いというものを客観的に評価することが極めて困難だということがわかる。
【次ページ】生産性が上がらないのは「達成感」のせい
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