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  • 2018/01/23 掲載

伝説のマーケター ジェイ・エイブラハム氏「日本の熱意のなさは危機的」

ジェイ・エイブラハム氏×ピョートル・グチバチ氏対談(前編)

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”伝説のマーケター”と称賛され、FedEx、The New York Timesを指導し、米フォーブズ誌で全米トップ5の経営コンサルタントにも選ばれたジェイ・エイブラハム氏が来日した。今回、エイブラハム氏と元Googleのリーダーシップ開発スペシャリストで、現在はプロノイア、モティファイの2社で活躍し、日本企業のマネジメント改善を行うピョートル・フェリークス・グチバチ氏の対談が実現。両者がそれぞれの視点から、日本経済と日本企業の問題点を語った。現状を打開するために、経営者が考えるべき点とは何か。
(聞き手・編集:編集部 佐藤 友理)


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プロノイア 代表取締役、モティファイ 取締役 チーフHRサイエンティスト
ピョートル・フェリークス・グジバチ氏(左)とマーケティング・コンサルタント ジェイ・エイブラハム氏(右)

伝説のマーケター、ジェイ・エイブラハムとは?

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 ジェイ・エイブラハム氏は、465の幅広い業種、7000社以上をコンサルティングして成果を上げた人物だ。そのクライアントにはIBM、マイクロソフト、シティバンクなども名を連ねる。数字でわかる範囲では、これまで企業に9,700億円以上の利益価値をもたらしているという。

 同氏はコンサルタントであり、経済戦略のメンターでもある。同氏を「メンターのなかのメンター」と仰ぐ経営者も多い。

 現在、マーケティングの常識となっているアップセル/クロスセルや、USP(Unique Selling Proposition)、リスク・リバーサル(返金保証)といった基本概念を広めたのは、ジェイ・エイブラハム氏だ。

 同氏は1970年代~1980年代の日本で品質管理の重要性を説いたウィリアム・エドワーズ・デミング博士の活動を継承する団体「デミング・インスティテュート」をクライアントに持ったことがある。

 同団体とのやり取りを通し、「どのようにビジネスを最適化するか」「どのように質の高いものへと変革していくか」「いかに他社と差別化を図るか」といった方法論を考え、現在の自身の礎となる「卓越論(Strategy of Preeminence)」を構築した。

 一方、ピョートル・フェリークス・グチバチ氏は、Googleのリーダーシップ開発スペシャリストとしてラーニング・ストラテジーに携わった。現在は独立し、プロノイア、モティファイという2社で活躍しつつ、日本企業に対して組織論やリーダーシップ論、働き方改革のアプローチなどを説いている。

 そんな2人に共通しているのは、現在の日本企業を見て感じる「大いなる憂い」だ。

社員の62%が仕事に熱中していない国、日本

 ジェイ氏はこれまで7回来日しており、今回で8回目になる。

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日本の若者の将来を危惧するジェイ氏

「毎回、経営者や企業を変革したいと思いながら来日しています。特に今回の来日の目的は、日本の若者を応援することです。数年前に本を書いたとき、多くの日本の若者が毎年自殺をすると知り本当に驚きました※注1。そこで彼らに情熱を伝え、勇気づけたいと考えました。自分自身の可能性を知り、もっとチャレンジして欲しい。そんなことを伝えたくてやってきたのです」(ジェイ氏)

※注1:政府による2017年版の自殺対策白書では、16年の自殺者数は2万1897人に上る。特に先進7ヵ国で、若年層の自殺と事故の死亡率を比べると、自殺が事故を上回ったのは日本だけ(約2.7倍)。人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率では、日本は7ヵ国中最も高い。

 いまの日本には、かつての「Japan as Number One」といった勢いはなく、「Lost Two Decades in Japan」(失われた20年間)に企業の成長も停滞した。実際に現在もアジアなど新興国の追い上げにあい、大企業に陰りがみられ、世界的なイノベーションの流れにも取り残されつつある状況だ。それを端的に表すのが、「企業の社員の関係」なのかもしれない。

 ジェイ氏は「日本において、特に気になるものがあります。企業と社員の関係です。いまの企業と社員の関係は非常に拘束的で、社員同士が関係性を構築すること、コラボレーションすること、教育をしあうことが難しい。これが企業の成長や協力関係を阻害しています。ピョートルから、日本企業の社員のエンゲージメントは62%(62%の社員しか仕事に熱中していない)とも聞きました。それが企業の生産性に悪影響を及ぼしているのです。この状況を改善しないといけません」と語る。

 もちろん経済的な効果を高めたり、企業のブランド力を向上させるという定石の改善方法は大切なことに違いない。

「しかし何よりも、自由で創造的な職場環境をつくりあげることが、いまの日本にとって最も重要なことです。すべての社員の働き方が最適化され、創造的でフレッシュな考え方を持ちながら働ける環境が求められています。そんな環境を築ければ、企業や従業員の力を何倍にも拡大でき、彼ら自身も仕事にもっと意義と情熱を持てるようになるでしょう」(ジェイ氏)

【次ページ】日本企業のエンゲージメントの低さが世界に損失をもたらす
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