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デロイトでは世界124カ国、1万1000人以上のビジネスリーダーや人事部門責任者へのアンケートとインタビューによる調査を実施。その調査からわかった人事部門・人材活用の課題とトレンドを「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド」というレポートにまとめている。6回目となる今年は10の人事・組織トレンドが取り上げられた。
「ソーシャル・エンタープライズ」への転換が進んでいる
デロイト トーマツ コンサルティングの執行役員で、HR Transformationリーダーの小野隆氏は、現代の企業が変化を求められている要因として「個人の力の増大」「企業に対する社会でのリーダーシップの期待の高まり」「テクノロジーの変化による社会・働き方への影響」を挙げた上で、営利企業からソーシャル・エンタープライズ(社会的企業)へ転換が今進んでいることを説明した。
「ソーシャル・エンタープライズ」とは、収益の増加と環境やステークホルダーの尊重・支援の双方を使命とする企業を指す。
このトレンドの背景を説明すると、まず、私たちはもはや財務的なパフォーマンス、および製品やサービスの質だけで企業を評価することはほとんどしていない。企業がもたらす社会全体へのインパクトに加え、従業員、顧客、コミュニティとの関係性において評価することが増えているのだ。
また、2017年までは企業内のコラボレーションと柔軟性を強化する目的でネットワーク組織型へ移行する動きが見られたが、2018年ではさらにその動きが組織内から組織外部へも広がり、エコシステムへ焦点を合わせる動きも伴っているという。
これらのトレンドをひと言で表すと、営利企業からソーシャル・エンタープライズへの転換が進んでいるということだ。
こうした「ソーシャル・エンタープライズ」への転換という背景を踏まえた上で、2018年人事・組織分野における10のトレンドを見ていこう。
2018年人事・組織分野における10のトレンド
1.シンフォニックな経営陣:チームがチームをリードする
2.労働力のエコシステム:企業を超えた管理
3.新たな報酬:パーソナライズ、アジャイル、ホリスティック
4.キャリアからエクスペリエンスへ:新たな道筋
5.健康寿命延伸による恩恵:人生100年時代における仕事のあり方
6.企業市民とソーシャルインパクト:社会は企業を映す鏡
7.ウェルビーイング:戦略と責任
8.AI、ロボティクス、自動化:人間参加型
9.ハイパーコネクテッドな職場:生産性へのインパクトとは?
10.ピープルデータ:どこまでが許容範囲か
2018年人事・組織分野における10のトレンド
1.シンフォニックな経営陣:チームがチームをリードする
「シンフォニックな経営陣」とは、各自のチームを指揮しながら、経営陣自身もチームとして一丸となって協調するということだ。
デロイトの調査では、回答者の85%が経営陣のコラボレーションを「非常に重要」もしくは「重要」と評価している、という結果が得られた。「経営陣のコラボレーションは、2018年度の最も重要な課題となっている」と小野氏は指摘する。
ただ現実には、回答者の73%が、経営陣がプロジェクトや戦略的イニシアチブにおいて協力することは極めて稀だと回答している。「経営陣のコラボレーションが企業成長につながる。これからはコラボレーションできる人材開発も必要になる」(小野氏)
業界ごとの課題の重要度
(調査回答者のうち「重要」「非常に重要」と回答した人のパーセンテージを出し、降順に並べた)
テクノロジー・メディア・通信(87.4%)
消費財(86.4%)
プロフェッショナルサービス(86.3%)
金融(85.6%)
ライフサイエンス(85.6%)
製造(84.9%)
資源・エネルギー(83.6%)
不動産(82.6%)
パブリックセクター(77.1%)
2.労働力のエコシステム:企業を超えた管理
調査では回答者の37%が、2020年までに契約社員の利用が増加すると予測。また回答者の50%が、自社の労働力の大部分を契約社員が占めていると回答した。
つまり従来のように、正社員や契約社員だけではなく、フリーランスやギグワーカー(インターネットを通じて単発型の仕事を請け負う労働者)、クラウドワーカーなど多様な立場の人材が業務を担うようになっていくという。
したがって組織はタレント・マネジメントの範囲を従業員だけではなく、エコシステム全体の労働者に及ぶよう拡大すべきだという。そしてHRチームは法務やIT部門と協力して、コミュニケーションのためのシステムを確立し、彼らの生産性を高め、企業戦略に沿った行動ができるよう適切なトレーニングやサポートを行う必要があるという。
さらに、今後はAI(人工知能)やロボティクスなどの人間以外の労働力を組み合わせた要員構成もしていかねばならない。だが、「このような多様な労働力を管理するための一連の方針と実績を確立している回答者は16%に留まっている」と小野氏は話す。
業界ごとの課題の重要度
プロフェッショナルサービス(73.0%)
テクノロジー・メディア・通信(69.3%)
資源・エネルギー(66.7%)
不動産(66.2%)
消費財(65.0%)
金融(63.4%)
製造(60.9%)
パブリックセンター(58.9%)
ライフサイエンス(58.5%)
3.新たな報酬:パーソナライズ、アジャイル、ホリスティック
「報酬に関わるさまざまな選択肢を提示し、それをパーソナライズする方法を提供する制度は、今日の多様化した人材と彼らが持つ多様なニーズに応える唯一の仕組みだと言える」と小野氏。
このようなパフォーマンス・マネジメントの仕組みを整備することで、個人のリテンション、エンゲージメントを高めることができるだけではなく、より早い育成につながるという。
業界ごとの課題の重要度
不動産(81.6%)
テクノロジー・メディア・通信(80.2%)
消費財(79.7%)
プロフェッショナルサービス(79.3%)
金融(79.2%)
製造(77.7%)
資源・エネルギー(75.3%)
ライフサイエンス(74.4%)
パブリックセクター(65.8%)
4.キャリアからエクスペリエンスへ:新たな道筋
回答者の61%がAIやロボティクス、新しいビジネスモデルに関する職務を積極的に再設計していると回答。また41%が新しいキャリアモデルの構築を非常に重要と見ていると回答している。
「21世紀において、キャリアは職務とスキルによって狭義に定義されるのではなく、経験や学びの早さによって定義される」(小野氏)
業界ごとの課題の重要度
テクノロジー・メディア・通信(88.9%)
金融(86.1%)
不動産(86.1%)
プロフェッショナルサービス(84.5%)
消費財(83.9%)
資源・エネルギー(83.3%)
ライフサイエンス(82.8%)
製造(81.2%)
パブリックセクター(78.6%)
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