- 会員限定
- 2017/07/27 掲載
「子どもが熱を出しました」にイラっとする管理職は許されるのか?
働き方リテラシー
「社会人の常識」という「呪縛」
この「社会人の常識」と呼ばれる「呪縛」の力は絶大で、休む方も、休まれる方も、しっかりと縛りつけられている。
だからこそ、共働き&子育て中ワーカーは起床してから出勤時間までの極めて短い時間で、「仕事に出られるよう段取りをするための夫婦間の交渉」に頭を悩ませ、我が子の健康状態に対する不安にさらされながら「上司や同僚にイレギュラーな調整をお願いしないといけない申し訳なさ」に胃を痛め、上司や同僚は「気にしないで」と声をかけつつも「面倒なイレギュラー対応」をしながら心の中で舌打ちする。
こうして複雑な思考や感情が当事者たちの間をかけめぐり、大きな精神的負担となっている。
「働きにくさ」の原因は「男性中心」という前提
こうした社会情勢の必然的なりゆきとして、世は「ワーク・ライフ・バランス」「ダイバーシティ」真っ盛りである。
「特別な事情がなければ、20代のうちに結婚、出産をする。男性が働きに出て、女性は家事をする。すべての人がこのスタイルで働くべきであり、また実際にそういう状態にある」という社会であれば、子ども看護休暇にまつわる葛藤に象徴される、「個人個人の事情や都合に関する考慮や配慮」は、随分と少ないものとなる。もちろんそのほうが面倒は少なく、生産性は高い。
こうした「従来の男性中心の世界観」は、いまだに「自覚なき前提」として多くの人の頭の中に息づいている。これだけ男女関係なくみな働く社会となっても、いまだに、漫画「働きマン」が活写したように、女性もまた「男性化」して働く、というイメージがある。ドラマ「逃げ恥」が描いたのは「子を持たず、稼働率100%を実現できるライフスタイルを女性が選ぶ権利があってもいいじゃないか」ということだった。
「仕事に穴をあけるべきではない」「働く人は限りなく稼働率を100%に近づけるべき」という常識は、それを可能にする社会構造があってこそのものだ。今現在、その前提が崩れつつあるにも関わらず、「べき論」については変更がない。これは非常に辛い話である。
「子どもが熱を出しました」に内心イラッとしたら、マネージャー失格なのか? この宙ぶらりんな状態にあって、「子育て事情は優先すべき」という概念は、新たな正義となりつつある。いまのご時世、「子どもの病気で仕事を休むなんて、あり得ないというのは、あり得ない」という感覚である。
しかし本音のところ、多くのマネージャー諸氏は、部下に「休みます」と言われた瞬間、「内心はイラッすることや納得のできない気持ちはあるが、それをそのまま表現するのは憚られる」といったところではないだろうか。
「ワーク・ライフ・バランス」「ダイバーシティ」これ自体は結構な話だ。しかし、「その政治的な正しさを実現するために、なんで自分が余計なスケジュール調整をやる必要があるんだ?」と思うのである。
看護休暇だけでなく、部下の育児休業申請も同じ話だ。子どもができたことは、間違いなくめでたい話である。部下からそれを報告されたら、きっとそこでは「おめでとう」という言葉がふさわしい。それが大人のマナーであり、作法である。
サイボウズの青野慶久氏、ドワンゴの川上量生氏、文京区長の成澤廣修氏を始めとして、経済界や政界の著名人が育児休暇をとるというニュースも増えてきた。
世のマネージャーにとっては、もしかしたら、これらは苦々しいニュースなのかもしれない。確かに、企業トップは、育児休業を取ったら美談のように語られるかもしれない。しかし自分の部下が育児休業を取るという話は、美談でもなんでもない。それはただ、「今そこにある、どうにか調整をしなければならない余計な仕事が増やされること」なのである。
現場にいる者たちは、目標達成するかどうかギリギリのラインで進行している仕事の現状も忘れるわけにはいかない。業績責任を負うマネージャーが、「そんな簡単に休むと言われても困るんだよ」と、内心「イラッ」としたら、そのマネージャーは「マネージャー失格」なのだろうか?
【次ページ】競争のカギは「ドライでさっぱりした働き方」
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
投稿したコメントを
削除しますか?
あなたの投稿コメント編集
通報
報告が完了しました
必要な会員情報が不足しています。
必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。
-
記事閲覧数の制限なし
-
[お気に入り]ボタンでの記事取り置き
-
タグフォロー
-
おすすめコンテンツの表示
詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!
「」さんのブロックを解除しますか?
ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。
ブロック
さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。
さんをブロックしますか?
ブロック
ブロックが完了しました
ブロック解除
ブロック解除が完了しました