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  • 2022/09/10 掲載

経産省に聞く「未来人材」の育て方、採用傾向から予測する “受験と就活”の姿

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経済産業省が2022年5月、「人材版伊藤レポート 2.0」とともに公開されたのが、今後のあるべき人材像やスキルを示した「未来人材ビジョン」だ。日本企業の人材戦略をバックアップする経済産業省のさまざまな戦略や施策について、レポート作成を担当した同省 経済産業政策局 産業人材課長 島津裕紀氏(当時)に聞いた。未来の採用や、採用と密接に関わる受験、就職活動はどのように変わるのだろうか。
聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

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経済産業省
経済産業政策局 産業人材課長
島津裕紀氏

将来必要となる人材像を赤裸々に描き出した「未来人材ビジョン」

 経済産業省が今後あるべき人材像や人材育成・確保の課題などについてまとめ、2022年5月に発表した「未来人材ビジョン」は、SNSを中心に大きな話題に上るなど記憶に新しい。

「2030年と2050年の未来を見据え、求められる人材像を描き出した上で、そうした人材を育成するために産官学が一体となって取り組むべき課題をまとめました。人材について日本社会全体が抱えている問題を、データを使って浮彫にしています」(島津氏)

 この「未来人材ビジョン」の策定には「人材版伊藤レポート 2.0」の検討会がきっかけとなった。この委員会には数々の大手企業の幹部が参加したが、どの企業もおしなべて経営トップが人材投資について強い課題感を抱いており、トップダウンで大胆な改革を推進しているという。

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日本の人材の競争力は下がっている
(出典:経済産業省 未来人材ビジョン)

 そのうちの数社は、過去に深刻な経営危機に直面した際に大胆なリストラを断行しており、有無を言わさず抜本的な人事制度改革に踏み切らざるを得なくなったというのだ。

 経済産業省が人材版伊藤レポートをはじめ近年人材関連の施策に力を入れている背景には、こうした企業の前例を踏まえて、深刻な事態に陥る前に先回りして適切な人材戦略を立案・実行できるよう企業を支援していきたいとの思惑があるという。

 一方、経営環境の変化に合わせて変化を迫られるのは、何も企業の経営者だけではない。企業の現場で働く従業員も、環境の変化へ柔軟に適応していくことが求められる。

 特に近年ではデジタル技術の急速な発展や脱炭素経営の世界的な広がりにより、従業員一人ひとりに求められるスキルも目まぐるしく移り変わっている。そのため、企業が従業員に新たなスキルを習得させる「リスキリング」の重要性がクローズアップされるようになってきた。こうした背景があり、未来人材ビジョンの策定に至ったというわけだ。

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現在は「注意深さ・ミスがないこと」、「責任感・まじめさ」が重視されるが、将来は「問題発見力」、「的確な予測」、「革新性」が一層求められる
(出典:経済産業省 未来人材ビジョン)

大学と産業界を結んだ「産官学」一体の人材育成を目指す

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 なお未来人材ビジョンは、2021年12月に経済産業省内に設置された「未来人材会議」が中心となって取りまとめた。これに先立ち、2021年7月には人材版伊藤レポート 2.0の検討会が既に立ち上がっていたが、島津氏は早い段階から「人材版伊藤レポートだけではピースが不足している」と感じていたという。

「人材版伊藤レポートは主に企業に対して提言を行うものですが、企業の取り組みだけでは日本社会全体の課題解決には至らないのではないかという思いが拭えませんでした。ちょうどその頃、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に半導体工場を建設する計画に対して、経済産業省の基金から補助金を支給することが決まりました。実はこのことが、未来人材会議設立のきっかけになりました」

 新工場では地元で一千人超の新規雇用を生み出すことを謳っていたが、肝心の半導体技術者が九州ではまったく集まらないという問題が持ち上がった。急遽、九州の各大学が半導体関連の教育プログラムの強化に乗り出したが、こうした事態を目の当たりにした同氏は改めて大学と産業界がつながっていないと、国家戦略として人材育成に取り組むのは難しいと痛感したという。

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大学で学んだ学問分野と産業界で必要な専門性のギャップ
(出典:経済産業省 未来人材ビジョン)

 そんな折、2021年10月の岸田内閣の発足により、「人への投資」は重要政策の一つとなった。教育界と産業界が密接に連携してこれからの社会で求められる人材を国家戦略として育成する気運も高まり、そのための戦略を検討する場として未来人材会議を立ち上げることになった。

「産業界は大学側に対して『こういう人材を求めている』という情報が発信できていませんし、大学側もそうした声に耳を傾けていない。この両者を接続して産官学を挙げて人材を育成していかないと、日本という国は2050年の時点で立ち行かなくなってしまうのではいか。そんな危機感に基づいて、未来人材ビジョンはまとめられました」(島津氏)

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日本の国際競争力は、この30年で1位から31位に落ちた
(出典:経済産業省 未来人材ビジョン)

【次ページ】大学と産業界を結んだ「産官学」一体の人材育成を目指す
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