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- 2025/01/26 掲載
「ドラゴン桜」の編集者が「成功のために普通でいる」「頑張らない」を重視するワケ
「面白くない」と感じるとき、問題があるのは…
たとえば、日本には雨に関する言葉が400種類以上あると言われている。春雨、五月雨、梅雨、秋雨などである。パラパラ、ショボショボ、ポツポツ、シトシト、ザーザーなど、雨が降っている様子を表す言葉も含めると、その数はさらに増える。でもこの400種類の言葉、果たして日本人全員が知っているかというと、そうではない。雨がよく降る地域で暮らす人たちのほうが、雨があまり降らない地域の人たちよりも知っていることだろうし、雨に対して興味をもっている人のほうが興味のない人よりも知っている。
同じことが他の要素でもいえる。たとえば、雪。雪がよく降る地方の人たちは、雪に関する多くの種類の言葉を持っていると言われている。北極圏に住むエスキモーは、日本語にはないような言葉を含め、雪を表現する言葉が数多くある。
で、ここから本題である。雨や雪に関するような言葉を多く知っている人。逆にあまり知らない人。それぞれの人が観光地などに行き、自然豊かな環境に対峙した場合、どのような印象や感覚をもつのか。
自然に対する言葉を多く持っている人のほうが、圧倒的に深い面白みを感じることだろう。一方で、目の前の自然に興味や面白みをもてなかった人は、自分がなぜそのような感情になっているのか、気づいていないことも多い。
なぜか。ひとつには、雨といったらザーザー降るもの。雪といったら、白くてサラサラなものといった具合に、自分の中で目の前の対象物をこうだ、と決めつけてしまっているからだ。いわゆる「バイアス」である。低い解像度で世界を見て、判断してしまっている。
世界を見て、面白くないと感じるときは、対象に問題があるのではない。自分が観察をやめて、観察をする前から、既存の知識で判断してしまって、毎回同じ結論に達してしまっているというサインだ。
観察力が高まったことで得た“気づき”
仕事、ビジネスシーンでも同様だ。僕は日々、作家と打ち合わせしているわけだが、以前の僕は作家の心境を「売れっ子になりたい」「ヒット作を打ち出したい」と限定していた。まさに思い込み、確証バイアスである。だが、観察力を高める旅を続けていることで、実はこのような心境の作家ばかりではない、ということに気づくようになった。たとえば、新人の作家だったら売れる・売れない以前に、自分はこれから本当に、作家としてご飯を食べていくことができるのか。
そのような思考にとらわれていて、どうやったらヒットするのかを考える余裕がまだない作家もいることに気づいたからだ。さらに今となっては、もっと別の理由でクリエイティブな仕事に従事している人がいることも、実感をもって理解できるようになった。
このように観察力が高まったことで、作家とのコミュニケーションも変わっていった。以前は、ヒット作となるための足りないポイントを的確に伝えられるよう努力していた。ダメ出しをする機会が多かった。しかし今は、違う方法を模索している。新人作家が自然と夢中になれる余白のあるお題をどう見つけて、提示するかを考えている。
コミュニケーション力を高めることで、相手と協力しやすい環境も生みたいと思っている。コミュニケーションやビジネスにおける交渉というのは、自分の意見を相手に理解してもらったり、取り入れてもらったりすることではなく、相手と自分の位置を理解し、その中間地点を探すことなのだ。その実現のためには、自分の意見を磨くだけでなく、観察力を高める必要がある。 【次ページ】「普通」でいるために「悪いことを考える」
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