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コロナ禍で健康への意識が変わった人も多いのではないだろうか。ヘルスケアよりもさらに広義の「健康」を目指すウェルネス産業は、いまや477兆円の巨大市場となっている。不動産やメンタルヘルス、睡眠など、さまざまな分野が注目されるウェルネス産業だが、日本には大きく2つのウェルネスに関する課題がある。調査で明らかになった、日本の働く女性の深刻な健康問題とは。
本記事は2021年7月15日開催「ウエルビーイング エキスポ&カンファレンス2021 Summer」(主催:インフォーマ マーケッツ ジャパン)の講演を基に再構成したものです。
市場規模は477兆円、巨大化するウェルネス産業
「ウェルネス」という言葉になじみがない人も多いかもしれない。ヘルスケアが「健康や健康維持のための行為や管理」と定義されるのに対し、ウェルネスは「心と体と環境や社会的な豊かさを目指すこと」といった、より広義的な意味を持つ。このウェルネス産業はいまや巨大市場に急成長している。
「世界のウェルネス産業の市場規模は、2020年に477兆円まで成長しています。この数字は日本のGDPに匹敵するほどです」と説明するのは、インフォーマ マーケッツ ジャパンの江渕 敦氏だ。
ウェルネス市場とひと口に言っても、「パーソナルケア」「ビューティー&アンチエイジング」「ウエルネスツーリズム」「食事」など、さまざまなカテゴリーがあり、時代とともにトレンドも変化している。
ウェルネス産業の変遷と今後の動向
ウェルネス産業の国際会議であるグローバルウェルネスサミット(GWS)では、グローバルウェルネスインスティテュートによる調査結果が毎年発表されている。同調査をもとに近年の動向を少し振り返ってみよう。
2017年のGWSでは、これからは自分の“身体”に関わる分野から自分を取り巻く“環境”へ、たとえば「ウェルネス不動産」や、健康経営に関わる「職場環境の健康」に意識が向かい、オフィスや学校、住宅環の最適化に注目が集まるだろうと予測されていた。
「当然ですが、屋内環境の最適化にあたっては、建築工法や建材、塗料などの問題に加え、空気や換気、居心地の良いウェルネス建築、温度・音・光などに影響するサーカディアンリズム(体内時計)への配慮が求められるようになってきました」(江渕氏)
2019年のGWSでは、スポーツやフィットネスなどの“運動”に関するフィジカルアクティビティの市場規模が拡大しつつあることが発表された。江渕氏は、「興味深い点は身体活動と幸福度に相関関係があることです。運動参加率の高い国は、幸福度も高いという調査結果が出ています」と振り返る。
そして、コロナ禍にオンラインで開催された2020年のGWSでは、12.7兆円に伸びたメンタルウェルネス市場が注目された。調査自体は2019年に実施しているため、この結果はコロナ禍による意識変化ではなく、すでにその時点で“身体”から“精神”的なウェルネスへ思考が向かっていたことになる。
今年1月に発表された2021年のウェルネス産業のトレンド予測では、フィットネスやアプリ、TV番組などを通じたエンタメ業界のウェルネスへの参入や、免疫へのアプローチ、ウェルネス建築などがトレンド入りした。
江渕氏は「このほかに、誰もがウェルネスを求める時代になること、お金へのリテラシーを上げて心も豊かな人生を設計すること、コロナ後でのウェルネス目的の旅行などの進展も予測されています」と語る。今後ますますの成長が見込まれるウェルネス産業だが、いま日本のウェルネス産業では解決すべき2つの深刻な課題があると江渕氏は指摘する。
【次ページ】日本の2大ウェルネス課題「シニアの肥満」と「若年女性のやせすぎ」
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