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アップル創業者のスティーブ・ジョブスをはじめ、グーグルやフェイスブック、ヤフーなどの最新の大手企業が研修などで取り入れたことなどをきっかけに、ビジネスの世界でも「マインドフルネス」という言葉はよく耳にするようになった。マインドフルネスとは、仏教用語である「念」の英訳であり、「今ここ」だけに集中することで、瞑想(めいそう)などを通じて実現する。果たしてマインドフルネスや禅は現代を生きる私たちにどのような恩恵をもたらすものなのか。
テクノロジー疲れの現代こそ瞑想が必要
ゲストパネリストとして参加したのは、さまざまな形で禅やマインドフルネスに携わる3名。
細川晋輔氏は龍雲寺の12代目住職であり、祖父はベストセラー「般若心経入門」の著者であり、禅の教えを大衆に広めた第一人者でもある。
ヒューマンポテンシャルラボ 山下悠一氏は、もともと外資系のコンサル企業で働いていたが、どれだけ成功しても社会が良くならないことに疑念を抱き退職。資本主義の“次”の社会の仕組みを考えていくために、マインドフルネス×テクノロジーのスタートアップを立ち上げた。
Relook 熊谷祐氏は、瞑想アプリ「Relook」を開発。音声コンテンツが呼吸の方法や意識の向け方を誘導し、初心者でも気軽に瞑想の世界へ足を踏み入れることができる。
ファシリテーターは外務副大臣 鈴木 けいすけ氏とともに、イグニション・ポイント コンサルティング事業本部 シニアマネージャーの松本武士氏、タレント 黒田有彩氏が務める。
坐禅は2500年以上前から存在し、その間、科学やテクノロジーがこれだけ進歩しながらも、コンセプトや方法はシンプルで変わらないままである。その点について細川氏はこう語る。
「人の心というものは長い歴史の中でもあまり変わっていない。だからこそ論語や仏教の思想など何千年も前にできたものに私たちが引きつけられる。科学は進歩しても、人間の本質はあまり変わっていないのかな、と思います」(龍雲寺 細川氏)
一方で、現代においてなぜこれほどマインドフルネスが求められるようになったのか。ヒューマンポテンシャルラボ 山下氏はこう分析する。
「もともとはグーグルのチャディーメン・タンさんがマインドフルネスプログラム『サーチ・インサイド・ユアセルフ』を開発したことがきっかけでシリコンバレーで広く知れ渡るようになりました。その背景には、僕たちの意識がFacebook、Instagram、YouTubeなどのSNSに引きつけられ続けて、マルチタスク状態になっていることがあります。脳も疲労するし、パフォーマンスも落ちる。情報化社会の中で『今ここ』に集中するために、古くて新しい方法として生まれているのかな、と」(山下氏)
その発言を受け、鈴木氏はこう語る。
「最新テクノロジーについて人から話を聞く中で、どうしてもテクノロジーと人間の心とのギャップを常に感じています。そう考えるとこの時代だからこその、禅やマインドフルネスの役割はあるかもしれません」(鈴木氏)
禅は、得るものではなく捨てるもの
今回の対談を立案したイグニションポイント 松本氏は「僕は禅の初心者ですが、言語化しづらい感覚があります。マインドフルネスに興味がある人に実際にやってもらいたいと思って、今回企画しました」と語り、龍雲寺 細川氏による禅の手法についての解説が行われた。
細川氏は禅において重要なポイントをこう語る。
「坐禅は、何かを得るものではなく、捨てるものです。そのために必要なのは、姿勢、呼吸、心、この三つを調えていくこと。呼吸に集中し、今日あった嫌なことや明日への不安を押し出していく。たったひとつのことで充満している状態、それを“無心”と呼びます」(細川氏)
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