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コロナ禍を機に、多くの企業がリモートワークを導入した。その結果、リモートワークの利点も認識され、今後はオンサイトとリモートという2つの働き方が混在するハイブリッド型の職場環境がメジャーになりそうだ。そのために企業が準備すべきことは何か。米IDCの調査から、投資が進む分野と企業の現在地、日本企業の特徴などが明らかになった。
ハイブリッドワーク環境整備に不可欠な3つの視点
ワクチン接種が進む米国でも、デルタ株などの変異種の流行で感染が再拡大、経済再開が実施されては中断の繰り返しだ。企業もそれに影響を受け、リモートワーク社員をオンサイトに戻す計画に遅延が生じている。
今後数年はオンサイトとリモートのハイブリッドな働き方が不可欠となる中で、より効率的なオフィス運営には何が必要なのか。米IDCでは3つの視点でハイブリッドワークに不可欠な要素をまとめている。
1つ目は、「デジタルワークスペース、ワークプレイスの再構築」だ。企業がオンサイトワークの原状になかなか戻れず、リモートワークの導入が続く中で、リモートワークの効率化を目的とした投資が進んでいる。このフューチャー・オブ・ワーク・テクノロジーと呼ばれるものには3つのコアが存在する。
- スペース(コネクテッドで安全な仕事環境、時間やスペースの独立性)
- カルチャー(新しいデジタルスキルにより結び合わされた社員の能力強化)
- 拡張(ヒトとテクノロジーの協働)
この3つの柱に対する企業の投資額は膨らんでおり、米IDCの調査によると2019~2024年のCAGR(年平均成長率)は、スペースは23%、カルチャーは18%、拡張は16%とそれぞれ順調な伸びが予想される。実際にこれらに対応するテクノロジーへの投資額は、2021年でスペースが4,140億ドル以上、カルチャーが350億ドル以上、拡張が2,060億ドル以上となっている。
これだけの投資が行われる理由として、米IDCが企業に対して行ったアンケートで、「パンデミック以降に最も残りそうな仕事の形態とは何か」という質問に対し、最も多くの回答があったのが「リモート・ハイブリッドのワークモデル」(49%)だったことが挙げられる。リモート、ハイブリッドは一時的なものではなく、今後長く働き方の形として残ると多くの企業が考えている。
その他の回答も「インテリジェント・デジタル・ワークスペース」「クラウド・マネジド/ベースド・サービス/コネクティビティ/デバイスへのシフト」などが上位を占め、コロナがきっかけであったとしても、未来の働き方としてクラウドで情報を共有し、最も働きやすい場所で働くという形が、ある意味定着しつつあることを示している。
「均等なテクノロジー供給と習熟度」実現済みはたった14%
一方、ハイブリッドワークを成功に導くためには、すべての社員に均等なテクノロジーが供与されることに加え、均等な習熟度が要求される。自宅であっても会社と同様のネット環境、仕事関連の情報へのアクセスが必要であり、またどの社員も均質な情報処理能力を持ち、テクノロジーを使いこなせることが肝要となる。
これを実現するためには企業の業務遂行方法のリデザインが必要となるのだが、米IDCのアンケート調査では44%の企業が「実行途中:ほぼすべてのリソースにリモート社員もアクセスできるが、ごく一部についてはユーザーエクスペリエンスの不足により完全なアクセスができていない」と回答した。
続いて21%が「初期段階:社員がリモートワークを効率的かつ可視的に行えるためのテクノロジー導入などを行っている」で、「すべての社員が社内リソースにアクセスでき、習熟度もほぼ均等」と回答したのは14%にとどまる。
この結果からも、今後5年間で前述の「スペース」領域に対する投資は順調な伸びが期待できる。
【次ページ】ハイブリッドワークに不可欠。自動化技術は何から導入している?
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