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すでに聞き慣れた言葉となった「働き方改革」。働くことに対する価値観が多様になっている中、今後求められる働き方とは何だろうか。『
これからの会社員の教科書』を上梓した元ZOZO執行役員の田端信太郎氏と、クリエイティブディレクターで『
言語化力』を上梓した三浦崇宏氏に話を聞いた。若手からも支持を得る両氏が語る、働き方改革とマネジメント論とは?
取材・執筆:ビジネス+IT編集部 本橋実紗、撮影:伊藤孝一
取材・執筆:ビジネス+IT編集部 本橋実紗、撮影:伊藤孝一
「22時までに絶対帰る」は働き方改革?
──昨今の「働き方改革」についてどう思われますか?
田端信太郎氏(以下、田端氏):働き方改革の取り組み内容を聞くと、“事なかれ主義”が多くなっていますよね。残業を減らすことにフォーカスされがちだけど、それが本当に今働いている人たちの幸福度や生産性の向上につながっているのかなと疑問に思っています。もちろん無駄に残業するのは、全く意味がないんだけどね。
三浦崇宏氏(以下、三浦氏):働き方改革に関しては、僕も疑問に感じることが多いですね。たとえば、「22時以降残業してはいけない」というルールを決めることが働き方改革ではないと思います。
「働く」ということは、人間としての尊厳や社会との関わり方をデザインする行為なので、“個人の主体性”が何より重要になります。「22時に帰れ」と企業が個人に命令することは、「働く」という行為から1番大事な主体性を奪うことだと思うんです。
三浦氏:過労で仕事が嫌になる人の多くは、労働時間が長いこと以上に、主体性がない労働に自分を費やさなければいけないことに心を痛めていると思うんです。その方たちに、「君たちは22時になったら絶対帰るんだ」と言うのは、主体性の喪失状態に対して、さらに主体性を“剥奪”することによって解決しようとしているわけです。つまり、根本的な解決と全く逆の行動ですよね。
とはいえ、ようやく今、残業などのルールが未整備だった状態から「いったん22時に帰ろう」というパワープレーによって、状況が少しは改善したと思うんですよ。だからこそもう一度、「今のルールを続けることが正しいのか」「もう少し個人の裁量を考えた方が良いのか」「働くとはどういうことなのか」を社会全体が考え直さなければいけない段階になっているのだと思います。
田端氏:僕は年を重ねるごとに、ビジネスや会社って、こんなに面白いところないだろうと思っていて。働き方改革も「お金の稼ぎ方改革」とか「お客さま喜ばせ方改革」とか、具体的にモチベーションを高められる方向で取り組んだらいいんじゃないかと思います。働くことの定義は、働く人の数だけあるから。「働き方改革って、とりあえず残業をなくして社員帰せばいいんでしょう?」で終わってほしくないよね。
三浦氏:そうですね。あと、僕がよく言っているのは、ブラック企業の対義語はホワイト企業ではなくて、カラフル企業。ブラックの反対がホワイトだと、生きづらいじゃないですか。サーフィンに行ってから会社に来たい人もいれば、モテるために働きたい人もいるし、今はブラック企業でも自分の成長につながれば良しと思っている人もいるように、それぞれの多様な働き方が認められる、カラフル企業でありたいと思っています。
言葉の意味は関係性で決まる
田端氏:マネジメントは、普遍的な解がないから難しいよね。「上司も部下もいろいろ」という前提で1つ言うと、結局マネジメントは人間と人間の関係性なので、良い意味でぶつかり合うしかないんですよね。
堀江さん、前澤さんのようなワンマン社長に仕えていると時々思うんですけど、「朝令暮改」と「臨機応変」って、客観的に見るとやっていることは変わらないです(笑)何が境目かといったら、そこに信頼があるかどうかなんです。
田端氏:信頼関係が築けていると、朝言ったことが夕方に変わっても、「さすが。きっと俺らには何か見えないものがあるに違いない。だから正しいんだ」って部下は思う。ところが、そこに信頼がなければ、「また言っていること変わったよ、あの人。現場の身にもなってくれよ」と感じます。
三浦氏:パワハラも相手との信頼関係がないから起こるんですよね。たとえば、「お前バカじゃないの?」が褒め言葉のときってあるじゃないですか。一方で、単純に失礼な言葉になるときもあるので、それは相手との関係を見極めた上で発言をしないといけない。
言葉に罪はないんですよ。その言葉がどんな意味を持つのかは、関係性によって決まります。その関係性を読み解けないマネージャーが今増えていることが問題なのかなと思っています。
【次ページ】両氏が語るマネジメント論「マネジメントもラグビー」「部下は最大のクライアント」
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