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在宅勤務をきっかけに、自宅の環境を整える人が増えた。その流れを受け、リフォーム業界では「新しい生活様式」に最適な住宅へのリフォーム需要に期待を寄せている。国土交通省の補助金制度が設けられるなど機運が高まる一方で、「家は狭いし、お金はかけられない」のが現実だ。リクルート住まいカンパニー「SUUMO」副編集長の笠松 美香氏も、「リフォームで業者さんが入るとしても数日程度。在宅勤務で時間の余裕が生まれ、可能な範囲は自分でする傾向がある」と話す。「職住融合型住宅リフォーム」市場の現実と行く先を探る。
テレワークで「職住融合型住宅リフォーム」は拡大する?
バブルの時代に「平成の急成長分野」ともてはやされた「住宅リフォーム」だが、それも今は昔の話。当時は、参入障壁の低さから過当競争になり、悪徳業者や欠陥工事の問題も噴出した。
2010~2019年の国内市場規模は6兆円台で一進一退を繰り返し、2019年は前年比5.1%増の6兆5,351億円だった。2020年はコロナ禍の影響で9.0%減の5.9兆円、2021年は回復して4.8%増の6.2兆円と予測されている(矢野経済研究所「2020年度住宅リフォーム市場の展望と戦略」2020年8月)。
コロナ禍に見舞われ、住宅リフォーム業界は久々の市場規模6兆円割れを喫する見通しだが、悪いことばかりではない。前述の矢野経済研究所の調査レポートでは「テレワークが推奨される中、職住融合型リフォームや郊外の中古住宅需要の増加といった、新しい生活様式(ニューノーマル)に対する需要が見込まれる」と期待をにじませている。
そこで期待されているのが「職住融合型住宅リフォーム」だ。これは、テレワーク、在宅勤務、あるいは副業で自宅でも仕事ができるように住まいをリフォームすることを指す。具体的には、ワークスペースを設けるなど、どこかの部屋を改造して「勤務」ができるようにする。
もともと政府は、2020年夏に予定されていた東京五輪・パラリンピック期間中の東京都内の交通混雑を緩和するために「テレワークの推進」を掲げていた。ところが、皮肉にも、緊急事態宣言が発令されオリンピックを1年延期させた新型コロナウイルスによって、電車通勤時などの感染リスクを避けるために大都市圏中心にテレワークは普及することになった。
リフォーム業界はその機をとらえ、「コロナの禍を転じて福となす」ことはできるだろうか?
定着しつつあるテレワーク
テレワークは政府が推進する「働き方改革」や「子育て支援」にも沿っており、国土交通省は補助金の新設を目指している。
2020年10月4日付の日本経済新聞によると、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の対象に在宅勤務向け改修を加える形で2021年度予算の概算要求に関連経費を計上し、在宅勤務用の自宅リフォーム費用の3分の1を補助する制度を創設する。戸建て、マンションともに対象で、増築や防音対策、間仕切り設置などを念頭に個別に審査を実施し、補助金の上限は100万円とすることで検討中だという。
2020年5月に緊急事態宣言が解除された後は、「在宅勤務も大きく縮小した」と思われがちだが、総合研究開発機構(NIRA)と慶應義塾大学の共同研究「第2回テレワークに関する就業者実態調査」によると、2020年6月時点でも首都圏の約3割の勤労者がテレワークを利用し、利用者数はコロナ禍前の約3倍になっているという。業種や企業規模でばらつきはあるが、テレワークは新しい働き方として広く意識され、定着しつつある。
テレワークのための住宅リフォームの現実
自宅という環境でのテレワークを経験してみると、それなりに不満がでてくる。集中できる環境にしたいと思っても、狭さによる制約や金銭的な制約があるのが現実だ。
実際に、リフォームを実施しても多くは「リフォーム」とは呼べないような小規模な模様替えや手直し、家具の追加程度にとどまっていることが、リクルート住まいカンパニーが2020年5月に実施した「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態調査」で浮き彫りになった。
【次ページ】在宅勤務者の本音。テレワークによるリフォームビジネスへの影響
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