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新型コロナウイルスの感染拡大を機に民間企業で一気に導入が進んだテレワークが、地方自治体に波及していない。緊急事態宣言中に実施されたテレワークも企画部門など一部の職場に限定され、庁内全体に広がらなかった。窓口業務が多く、セキュリティ対策に不安があることなどが導入を妨げる理由に挙げられているが、従来の働き方から踏み出すことをためらう職員の意識も見え隠れする。早稲田大大学院アジア太平洋研究科の三友仁志教授(デジタルエコノミー論)は「業務管理や人事評価が従来の働き方を念頭に置いているため、テレワークを緊急避難的に考える一面もあるのではないか」とみている。
個人情報流出を警戒し、全庁への広がり見えず
「テレワークは新型コロナ対策で始めたが、個人情報を大量に取り扱うだけに、できる部署とできない部署がある。庁内全体に広げるのは難しい」。大阪府泉大津市政策推進課の担当者は渋い口調で振り返る。
泉大津市は新型コロナの感染拡大を受け、三密解消の緊急対応としてテレワークを始めた。しかし、テレワークで仕事をしたのは、企画部門などの10人ほどで、資料作成など庁内データにアクセスする必要がない仕事に限られた。
徳島県鳴門市は4月にテレワークを全部局に拡大し、非正規や再任用職員を含めた全856人を対象に集中実施した。土木課では工事発注の準備やマニュアルの作成を進め、水道企画課と水道事業課は出勤者を半分に抑えるなどした。
現在は集中実施を終え、もとの態勢に戻ったが、庁内にワーキンググループを設置し、今後テレワークをどう進めるか検討している。鳴門市人事課は「新型コロナの状況は刻々と変化している。庁内で今後の方向をよく議論したい」と述べた。
東京都新宿区は部署ごとに一部の職員をテレワークに切り替えたが、個人情報の流出を防止するため、職員の業務用パソコンを持ち出しや自宅からの庁内ネットワークアクセスを認めていない。このため、企画立案など一部の業務しかテレワークで進められなかった。
区民へ外出自粛を要請していた時期は、図書館や保育所でそれなりの人数がテレワークをしていたが、今はコロナ前の状態に戻っている。新宿区人事課は「区役所でのテレワークには限界がある」と話した。
仙台市は時差出勤を始めているものの、緊急事態宣言中からテレワークを導入していない。市内は一時、感染が広がり、保健所を中心に業務が激増した。定額給付金の作業も大変で、こうした繁忙部署へ人員を優先して割いたことも影響している。
ただ、新型コロナの第2波、第3波感染が心配されているだけに、別庁舎にサテライトオフィスを置き、テレワークを実施することを検討している。仙台市人事課は「民間企業のようにテレワークを進めるのは難しいが、できることを考えてみたい」という。
3月時点の実施市区町村はわずか3%
総務省が3月26日時点のテレワーク導入状況を全自治体対象に調べたところ、47都道府県は93.6%に当たる42団体、20政令指定都市は70.0%の14団体が実施していたが、1721ある市区町村は3.0%の51団体にとどまった。2019年10月時点の調査に比べ、20団体増えたものの、大半の市区町村は手を着けていなかった。
地方自治体のテレワーク導入状況(3月26日現在) |
|
導入 |
未導入 |
都道府県 |
44(93.6%) |
3(6.4%) |
政令指定都市 |
14(70.0%) |
6(30.0%) |
市区町村 |
51(3.0%) |
1670(97.0%) |
(出典:総務省資料から筆者作成) |
その後、緊急事態宣言でいや応なくテレワークに踏み切る自治体が増えた。だが、庁舎内での感染を防ぐため、一時的に実施したところが多く、子育てや介護などを抱える職員の多様な働き方実現などテレワーク本来の目的を達成しようとする事例はごく少数にとどまった。緊急事態宣言の解除でテレワークを打ち切った自治体も少なくない。
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