ジェイ・エイブラハム氏×ピョートル・グチバチ氏対談(後編)
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世界的マーケティング・コンサルタントで米フォーブズ誌で全米トップ5の経営コンサルタントにも選ばれたジェイ・エイブラハム氏とプロノイア 代表取締役、モティファイ チーフHRサイエンティスト ピョートル・フェリークス・グジバチ氏は、日本企業の社員の62%しか仕事に熱中してない状況に警鐘を鳴らしつつ、その数字がもたらす弊害と損失に関して前編で語った。後編では、ジェイ氏の持論である「卓越論」や、ピョートル氏の人材教育の知見を踏まえ、従業員のエンゲージメントを高めるために経営者がすべきことを考える。特にジェイ氏からの7つの教えは、停滞する日本企業を変革するヒントになるかもしれない。
(聞き手・編集:編集部 佐藤 友理)
「卓越論」が日本企業を救う?
日本企業の社員は62%しか仕事に熱中していない。そんな惨状で、日本企業はグローバルで戦っていけるのだろうか? 企業の存在意義は何なのか? これほどビジネスが複雑化する中で、企業トップの悩みと課題はつきない。
ここで、ジェイ氏の「卓越論(Strategy of Preeminence)」は課題解決の糸口になるかもしれない。この卓越論とは、同氏が30年間、世界中のさまざまな分野のアントレプレナーやエキスパートに説いてきた戦略だ。
「卓越論とは、一言でいえば『自分には他人の人生を変えるほどの力があり、なんだってできる』と心から信じることです。それができれば、あなたはあなたの会社や、あなた自身をお客さまにとって一番信頼できるアドバイザーになれます。つきつめれば、『あなたからしか買いたくない』と相手に思ってもらえる存在になれます。それを実践するには、あなたが関心のあることでなく、『相手がどういうことに関心があるか』『どうすれば最大利益を得られるのか』ということを考えて行動しなければなりません」(ジェイ氏)
ジェイ氏の卓越論では「まず相手の人生を追及し、それを評価し、認めることが必要だ」という。相手の考え方をすぐに悪いものと決めつけたり、裁いたりせず、誰もが異なる考えやモノの見方を持っていること、多様な価値観を持っていることを知り、相手を認めることが大切なのだ。
恋に落ちるべき4種類の人たち
ジェイ氏は「相手を認めるためには、自身の視点をシフトしていくことが求められます。多くの会社は自分の会社、自分の会社の商品やサービス、自分自身と恋に落ちています。たとえば、自分の会社がどれだけ強いセールス力を持っているとか、どういった特質があるということにフォーカスしていますが、卓越性を手に入れるには『あなたが仕える人々、買ってくれる人々や相手』と恋に落ちる必要があるのです」と説く。
恋に落ちる相手には、4種類ある。まずは自分にお金を払ってくれる、商品を買ってくれる人だ。次は自分のもとで働いてくれる人やチームだ。また自身に気づきを与えてくれるアドバイザーたちも対象だ。そしてベンダーや取引業者も含まれる。
「買い手は別として、ほかの人々には自分がお金を払う立場なのに、なぜ恋に落ちなければならないのか? と疑問に感じるかもしれません。しかし彼らを成長させ、忠誠を得ることができれば、大変革を起こせるのです。ですから、彼らにも自分とともに1つのミッションを担っているという気持ちを知ってもらわなければなりません。これにより多角的な見方ができるようになるのです」(ジェイ氏)
同氏は、かつて自身がコンサルティングしたメキシコのクライアントの例を挙げた。その企業は、建築と住宅ローンを生業としていた。社員たちは、顧客のために住宅ローンを組んだり、家の建築について他社と比較し、自社のメリットをアピールすることが仕事だと考えていた。
「家をつくることは、住む環境をつくり直す機会であり、同時に人々の将来を変えることでもあるのです。新しい我が家は、その家の働き手が喜んで仕事に出かけ、帰還する場所です。よい家に住めば、その地域の学校で子どもに素晴らしい教育を受けてもらえる可能性もあります。つまり家をつくる人には、多くの人生を変えていく力があるのです。この案件では、クライアントに顧客と手紙のやりとりをするよう勧めました。顧客との直接的なやり取りを通し、クライアントは自分たちの仕事にはお客さまの人生を変える力があることに気づきました。これも卓越論ですね」(ジェイ氏)
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