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近年、さまざまな業界や業務に特化したASP、クラウドサービスが提供されている。こうした製品の長所は、導入が容易でランニングコストが安いことである。だが、「誰でも発注できて、誰でも受け入れができる」からこそ、「導入したが使われない」状況が生まれやすい。では、この状況を誰が打破すべきなのか? どうしたら打破できるのか? 答えは8種類の「発注者のタイプ」にある。
手軽に導入、そして使われなくなるクラウドサービス
昨今、BtoBクラウド製品は多岐にわたる領域でサービス提供がなされている。グループウェア、業務システム、CRM、マーケティングオートメーション、さらにはAI分析プラットフォームまで、なんでもござれだ。
こうしたサービスの台頭により、間違いなく企業社会のIT武装のスピードは上がり、より選択肢が豊かになっている。
従来の重厚長大型のシステムでは、その分野における専門家、すなわち情報システム部門の力なくしては導入というものは極めて困難であった。しかしいま、部門単位で業務システムが導入可能であり、より現場に近い人々がシステム選定、導入に携わることも珍しくなくなった。
もちろんそれは素晴らしいことなのだが、問題が一つある。現場担当者がシステム導入の知見を十分に有さない状態で導入を行ってしまい、結果、導入したサービスがうまく活用されずに機能が死蔵される、ということである。
もちろん、従来の重厚長大型のシステム導入においても、運用、活用に課題がある。しかし、この種のシステムは投資規模の大きさからして「使わないわけにはいかない」ものであるし、なんだかんだと言いながら、人がシステムに寄り添い、慣れることで、最終的には活用する方向への圧力があった。
近年の安く、手軽なクラウドサービスは、その導入のしやすさ、ランニングコストの安さゆえに、使えなくてもクリティカルな問題と認識されにくい。導入時には盛り上がったが、半年後には皆の記憶から消える、なんてことも十分あり得る。便利な時代ゆえの悩みである。
そうした状況においては、ユーザー側とベンダー側、双方の担当者の機転や意思疎通が実に大きな役割を担う。
ユーザーがいかなる課題を抱えていて、何をどのように解決したいのか。製品にはどのような長所や短所があって、どのように活用するとその価値が最大化されるのか。この結節点こそが、導入成功の鍵をにぎる最重要点なのだ。
「使われないクラウドサービス」こそベンダーのチャンス
筆者もそうした現場に立ち会い、プロジェクトマネージャーとして仕事をするものの1人である。そんな中で強く感じるのが、「ユーザー側担当者の知的負荷の高さ」である。
当たり前の話だが、そもそもクラウドって何、システムって何、という人は別に珍しくない。本業においてプロフェッショナルであることからといって、その業務システムについて精通しているとは限らない。むしろ、精通しているほうが珍しい。しかし、クラウド製品の話になると、誰でも導入できると考える人が多くなる。
サーバーを立てる必要もなく、プログラミングをするわけでもなく、ソース・コードをデプロイするわけでもない。確かに導入すること自体は簡単だ。ユーザーアカウントを作って、ポチポチと指示通りに動かせば、システムは動くのだ。
だからこそ、導入するのは専門家でなくとも良いんじゃないか、と考える人が出てくる。これはユーザー側の話だけではなくて、ベンダー側においても、それを販売・提供する担当者が十分な知識やトレーニングが積んでいないこともそれほどめずらしくない。
しかし、その先に悲劇は起こる。導入したシステムの使いみちがわからず放置するだけなら、実害はキャッシュのみだが、「業務上、どうしても必要なのにも関わらず、使用する現場の要求を満たしていない」ということも、しばしば発生する。
せっかくの便利な仕組みが生かされず、ただ期待はずれと不平不満が発生してしまうのは、悲しいことだ。
そうした悲劇を回避するために、当面重要な役割を担うのは、ベンダー側の担当者だ。
ユーザー側は、「使えなかったら違う方法を試す」という選択肢を有している一方で、ベンダー側は、その機転や工夫で、悲劇を防ぐことに、「売り上げの増加」という明らかなメリットがあるからだ。
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