- 会員限定
- 2025/03/25 掲載
営業AIエージェント「Origami」の大躍進、異次元のノウハウで「人はもう不要」に

売上最速記録を塗り替えるAIエージェントを活用したプロダクト
昨年以来、注目を集める「AIエージェント」テクノロジーだが、このテクノロジーを活用したプロダクトの躍進が止まらない。コーディングアシスタントツール「Cursor」を開発するAnysphereは、設立からわずか12カ月で年間経常収益1億ドルに到達する史上最速記録を樹立した。この記録は、これまでSaaSスタートアップが達成してきた最速の成長率を大きく上回る。たとえばWiz(18カ月)、Deel(20カ月)、Ramp(24カ月)との比較においても、その差は歴然だ。
他社が高単価契約を武器に成長したのに対し、Cursorは異なるアプローチをとる。36万人の開発者から月額20~40ドルの低単価なサブスクリプション収入を積み上げることで、急成長を実現した。
この成功の原動力は、徹底的にAIエージェントを活用した事業モデルだ。従来型の成長モデルでは、人的リソースの拡大が必須だったが、Cursorは「AIエージェントが複雑なタスクを自律的に実行し、スケーラビリティを実現している」という。
コードエディタにとどまらない包括的な開発支援機能も売上に寄与している。Cursorは2024年11月のアップデートで自律型エージェントを導入、文脈を自動理解し、1回のプロンプトでタスクを完了できる機能を実装した。
さらに12月のアップデートでは、AIエージェントによるターミナルコマンドの自動実行機能「YOLOモード」を追加し、リンターのエラーを読み取って自動的に問題を修正する機能など、エージェントの能力を大幅に強化している。
OpenAI、Midjourney、Perplexity、Shopifyなど著名企業での導入も進み、企業価値は設立時から6.5倍に相当する26億ドルにまで上昇。スタックオーバーフローの調査では、開発者の76%がAIコーディングアシスタントを利用中か、利用を計画していることが判明するなど、同社の収益基盤はかなり盤石なものとなりつつある。
設立4カ月、ベータ期間2カ月で月間経常収益5万ドル達成のOrigami
Cursorと同様に、短期間で収益を伸ばす別のAIエージェントプロダクトも存在する。営業支援AIエージェントを開発するサンフランシスコ拠点のOrigami Agentsだ。同社は2024年9月に設立された非常に若い企業だが、8週間のベータ期間で月間経常収益5万ドルを達成、Y Combinatorの現バッチで最速成長を記録しているとされる。
同社設立のきっかけは、創業者のケンソン・チャン氏とフィン・マレリー氏の営業支援分野における経験にある。チャン氏は、欧州の大手企業向け営業自動化スタートアップでCTOを務め、マレリー氏はFizzの市場投入戦略に携わりながら、20社以上のスタートアップに向けてカスタムのアウトバウンドソリューションを構築してきた。
2人はともに営業チームと協働する中で、ある共通の課題に気づいたという。営業チームは週に30時間以上を手作業での調査に費やすか、AIを活用した大規模な自動化といった安易な解決策に頼るかの二択を迫られていた。しかし、スプレー・アンド・プレイと呼ばれるこのアプローチは、見込み客を遠ざける結果となっていた。
この課題に対し、Origamiは人間のように情報を理解し、行動するAIエージェントを開発。これにより、営業担当者の日常業務のうち約3時間を占める調査作業を効率化することに成功した。具体的な成果も表れており、不動産管理マーケットプレイスのStellarでは、顧客基盤を8倍に拡大、メール営業の成約率は業界平均の4倍を記録した。
具体的には、リンクトインプロファイルの確認、Webサイト上のカタログ調査、グーグルマップを活用したビジネス情報検索などを自動化することができる。
さらに、Origamiの独自のテクニカルアーキテクチャも特徴だ。人間のチームと同じように、フィードバックを受けることで学習し、成長する仕組みを実装。一度フィードバックを受けた内容については、2度と同じ間違いを繰り返さないという。
現在の営業支援市場では、11xやArtisanなどの競合他社が数千万ドルを投じて、営業活動の完全自動化を目指すAIアバターを開発中だ。一方、Origamiは人間の営業担当者を支援するアプローチを採用。その独自の視点と、設立以来の急成長が、Shopifyの最高執行責任者(COO)やYext、BloomTech、LayerZeroの創業者らからの支持を集める要因となっている。 【次ページ】Origami成功の鍵は濃縮された「営業ノウハウ」
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR