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- 2025/03/25 掲載
金融庁謹製「AIディスカッションペーパー」を解説、その“最重要メッセージ”とは?
金融庁謹製「「AIディスカッションペーパー」
事業者との対話の際に用いることを想定して金融庁が作成した今回のディスカッションペーパーは、同庁が実施したAIの利用に関するアンケート調査を踏まえた内容です。「金融機関等のAIの活用実態等に関するアンケート調査」は2024年10~11月に実施し、金融機関130社が回答。従来型AIと生成AIの利用有無や利用状況を質問した(※金融庁の定義では、従来型のAIとはあらかじめデータを与えて特徴や傾向を学習させ、入力データに対して回答を得るもの。生成AIはLLMなど膨大なパラメーターを有し、ネット上のデータを学習に使用して文書、画像、音声、動画など新たな生成物を得るもの)。
回答の中身を詳しくみると、新たな生成AIが従来型に比べてもより急速に定着しつつあることや、活用範囲については事業者ごとにバラツキがみられるといった実態が明らかになりました。
生成AIを具体的にどのような場面で利用しているかを選択式で尋ねたところ、準備段階を含めると「文書の要約」との回答が最多で、「翻訳」「文書等の構成・添削・評価」「ドラフト作成(組織の意思決定とは無関連)」「情報検索(社内FAQなど))と続きました。
また、生成AIのユースケースを3類型で区分。<1>社内利用(業務効率化等)、<2>対顧客サービスへの間接的な利活用、<3>対顧客サービスへの直接利活用のうちから選択式で導入状況を尋ねました。
すると、現状では<1>の社内利用にとどまっていて、対顧客サービスでの活用を検討すると回答した先が半数以上を占めました。すでに一定程度、生成AIの利用が定着していて、しかもその利用範囲にはまだまだ拡大の余地があることがうかがえます。
生成AIの利用を認めている範囲について尋ねたところ、7割超が広く一般社員向けに利用可能としていると回答。一方、14.9%が特定部署の社員に限定して利用可としているとし、利用していない、あるいは利用範囲について検討中との回答も12.4%を占めました。
生成AIの具体的なユースケースをみると、「文書の要約」が最も多く、「翻訳」「文書等の校正・添削・評価」「組織の意思決定とは無関連のドラフト作成」などが続きました(いずれも外部サービス利用や準備段階を含む)。
出来合いの生成AIのモデルをそのまま利用するか、自社向けにカスタマイズするかについても、事業者ごとの対応に違いがみられました。
社内データは活用せずChatGPTなど汎用の生成AIをそのまま利用している事業者は約半数に上っています。
一方、RAGなどを利用し、LLMと社内データベース等を組み合わせて利用していたり、社内データ等でLLMをファインチューニングして利用したりといった回答も多く見られました(※RAGとは既存の生成AIモデルに外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術。ファインチューニングは、学習済モデルを特定のタスクやユースケースに合わせて再トレーニングすることを意味します)。
用途によって対応を使い分けている事例もありました。具体的には、全社員向けには大手クラウド事業者の汎用的生成AIを使いつつ、特定業務に特化したRAGは別の大手クラウド事業者の生成AIを採用するといったケースがみられたといいます。
今回のディスカッションペーパーでは、必ずしも自社向けのカスタマイズが必要とは言い切れないという書きぶりになっています。LLMをわざわざ個社ごとにカスタマイズしなくても、プロンプトを工夫することで対応できる点に言及し、社内規定や取り扱う金融商品の概要を含めてプロンプトに打ち込むことで、一定の専門性をもった回答が可能になると指摘しています。 【次ページ】従来型AIより深刻化した課題とは何か?
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