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  • 2014/10/21 掲載

上司が部下を「詰める」という日本特有の文化は、本当に生産性を上げるのか?(前編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(16)

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現代風のパワー・マネジメントともいえる、上司が部下を「詰める」という企業文化。無用の緊張を強いて表面的な上下関係の所在だけを明らかにするようなこのコミュニケーションは、一体どのようにして生まれ、この社会に根付いたのだろうか。昨今、社会問題となりつつあるブラック企業と安易に同一視することのできない「詰める」企業文化は、果たして企業の生産性向上に寄与するのだろうか。
後編はこちら
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上司が部下を「詰める」という企業文化は、どのようにして生まれたのか?

いつしか始まった仕事の内容を「詰める」という文化

 どこの誰が始めたことかはわからないが、このような「マネジメント」が、今日もどこかで行われている。

・◯◯さぁ、そんなことじゃクビになるよ、なんでやらないの、前もいったよね?
・君の一時間にクライアントからいくら払われてるか、わかってる?
・何でできないんだよ!ヤル気あるの?
・もう一回やってきて。完璧にしてから持ってきて!完璧だよ、完璧。完璧の意味、わかってるよね?

 これは、いわゆる昔ながらの軍隊方式や体育会文化とはまた違った、現代風のパワー・マネジメントという感じがする。こうしたコミュニケーションが語り草となるのは、コンサルティングや金融など、知的レベルの高いイメージの職場を連想する人も多いかもしれない。

 なされるべき仕事が単純作業的なもので、作業進捗のみが問われるような場合は、ある種の強制力はときに、このように「詰める」ことは必要だと言えなくもない。また、極めて強いトップダウン型の組織体制で、下層に行けば行くほど判断の余地が許されない場合も、こうした強権的なマネジメントが行われることもある。あるいは、高い知的生産性が求められる職務においてよい成果をあげるためには、「緊張感」は必要だろう。

 しかし「なんでできないの?」といったような問い方は、部下が「できるようになること」を目指した発言というよりは、答えなき問いによって相手を問い詰めることで、相手を精神的に支配しようという意図のもとになされる種類のものである。

 このような、無用の緊張を強いて表面的な上下関係の所在だけを明らかにするような、通称「詰める」コミュニケーションは、一体どこから生まれ、この社会に根付いたのだろうか?

組織行動の基幹をなす「上下関係」という秩序

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 人が集い、組織として、ともに何かを実現する。そこにいる人と人は、様々な関係性によって結ばれる。企業という場における人間同士の関係性とはなにかといえば、その本質は「上下関係」である。

 世の中にはフラットな社風を謳う企業もたくさんあるではないか、と言われるかもしれない。しかしそれは「コミュニケーションをするときに、威圧的な態度を良しとしませんよ」という意味であって、指揮命令系統という意味での上下関係が全く存在しないということはない。

 そして、人が組織として何らかの目的を達成するために行動するときには、優先順位というものが存在する。大本営から最前線まで、組織が有機的につながって一体的に動くために「優先順位を共有する」ということは極めて重要だ。この優先順位を明確化するのが上下関係であると言い換えることもできる。

 組織行動において何が難しいかといえば、めいめいが好き勝手に動いてしまうと、まともな連携がとれないということだ。資源は有限である。また、外部環境は不確実性に満ちている。こうしたなかで、選べる行動はたった一つであり、そこで、選択を間違えてしまっても、やり直しはきかない。

 極論すれば、戦略とは煎じ詰めれば、何を優先するのかということにつきる。組織的な活動を効果的なものにするためには、いかなる順序で資源を使って物事を進めるか、まずどのような攻略目標から攻め落としていくかという、優先順位に関するメンバーの同意が必要となる。

 「組織は戦略に従う」とはアルフレッド・チャンドラーの名言であるが、まさしく組織構造はその戦略の実現の成否を決める重要な要素である。だが、「組織構造が正しければ必ず目標が達成できるのであれば、そんなに簡単な話はないよ」というのが現場の実感でもある。

 ということで、今回は、組織に偏在する関係性のあり方に着目をしたい。組織が円滑に機能するために必要なものとは、いかなるものなのだろうか?

【次ページ】現場とは想定外の事象に満ちた混沌である
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