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  • 2014/10/24 掲載

上司が部下を「詰める」という日本特有の文化は、本当に生産性を上げるのか?(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(17)

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現場で起きる事象は多様性に満ちていて、「想定外のことに直面しないほうが珍しい」といってもいいぐらいである。すなわち、ビジネスの現場とはすなわち「混沌」であり、そのなかで戦略を実現するために、「上下関係」という「秩序」がある。昨今、欧米式の組織体系と日本式の組織文化の衝突、融合が進んでいる。俗に「詰める」と呼称される新たなマネジメント文化は、この構造変化において発せられるマネージャーの「悲鳴」のようにも思われる。
前編はこちら

様々な意味を内包する「上下関係」という関係

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上司が部下を「詰める」という企業文化は、どのようにして生まれたのか?

 上下関係と一口に言っても、それが内包する意味は幅広い。

 最も基本的な上下関係とは、指示命令系統を正しく運用するための「指令を発するものと、それを受けて実行するもの」としての関係だ。

 話がそれだけであれば単純なのだが、日本的な社会においては、これ以外にも様々な意味が付与される。

 例えば、日本流の組織で上下関係といえば、「教えるものと、教わるもの」という意味合いも色濃い。それが単純に「指示内容」を教えるということのみを意味するのであれば話はシンプルなわけだが、そうではない。

 ここで「教えられるもの」が含む領域は、極めて多岐にわたる。業務を進める上でのスキルの習得や、その会社組織を円滑に運営していくための公式的なルール、非公式的な文化やマナーも含まれる。時には、人生の「ロールモデル」として、仕事観や人生観を伝承していくといったような役割もある。

 これは「先輩後輩関係」と呼ばれる文化であるが、日本の会社組織における「上下関係」とは、単なる指揮系統関係というだけでなく、先輩後輩関係という意味合いが付与される。

 他の意味も付与される。自分のところで面倒を見る以上は、生活面も含めて、その面倒を見る、すなわち親代わりに見守り、大袈裟に言えばその人の人生を導くことに責任を持つ、という文化である。

 すなわちこれは「親分と子分」的な人間関係である。部や課の中心人物が精神的支柱となって、擬似親子関係のような形で「みんなの面倒を見る」という状況である。

 こんな書き方をすると、「そんな馬鹿な、ずっとむかしの終身雇用時代にはそういうこともあったかもしれないけれど、いまはもっとドライなものじゃないの」という感じを受けるかもしれない。

 確かに、能力や成果に応じて報酬を支払うとか、終身雇用を前提としない人事制度など、欧米的な雇用慣行が浸透してきた昨今では、そのような「面倒な話」は抜きにして、業務上の問題だけを論じていれば仕事になる、というあり方が少しずつ浸透しているように思われる。

 だがしかし実際のところは、日本人主体の組織においては、そうした欧米的な文化が形式的に導入されたとしても、有名無実な制度となるか、中途半端な運用で誰も得しない状況になるか、そのどちらかである。

 国民文化になじまない制度を導入した時に何が起きるかといえば、「自分にとって都合の良い場合にだけそれを振りかざす」という厄介な状況である。雇用する側もされる側も、鏡合わせのように似たようなことをやっていて、互いに不信感を募らせるという残念な話も珍しくない。

 こうしたなかで、ある種の危機的状況に立たされているのが「マネージャー」達である。不確実性に満ちた今日の社会において、マネージャーという職務が何を実現すべきものなのか、それを明確にしないということは、組織にとっての自殺行為なのではないかとも思われる。

【次ページ】「詰める」文化はいかにして生まれたか?
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