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- 2015/04/09 掲載
NHK 吉田照幸氏インタビュー:なぜあのリーダーは「黙っていてもおもしろい」のか
「おもしろい人」になれば、他の人の力を得やすくなる
──「おもしろい人」になれば、人気者にはなれると思いますが、仕事もうまくいくのでしょうか。吉田氏:「おもしろい人」が「すごい人」「仕事のできる人」と何が違うのかというと、他人の力を得やすいということです。「すごい人」「できる人」というのは「あの人は私たちとは違うから」と距離を置かれますが、「おもしろい人」には周りが一緒に仕事をしたいと集まってきます。そのため「おもしろい人」は、自分の持っている以上の力を発揮できるのです。
しかも、一緒に仕事をしていると楽しいから、それが長続きします。
私のいる放送業界は特殊だと思われるかもしれませんが、放送会社も組織として成り立っていて、仕組みは他の企業とまったく変わりません。何かのプロジェクトが立ち上がって、そこに人々が集まり、ゴールに向かって一緒に進んでいく。みんなで進めていくビジネスなんです。
現代は情報があふれている時代、自分一人で情報を集めようとしてもうまくいきませんが、多くの人を集めることができれば、それだけたくさん英知を集めることができます。リーダーとなる人にとって、その力を得られるということが最大の武器になるわけです。
吉田氏:私のいう「おもしろい」ということと「笑える」ということはイコールじゃないんです。人間は真面目なことにも「おもしろい」と感じます。宇宙の謎だって「おもしろい」と思うでしょう? 「おもしろい」というのは、人間にとって新しいこと、新鮮なことだったりするのです。新しいことをやってみようというリーダーは「おもしろい人」なんです。
では、コミュニケーションの上でどう「おもしろい」を発揮すればいいかというと、相手が自分のことを求めてくれる人のことがおもしろいと思ってしまうんです。「出身はどこ?」「いいネクタイしてるね」と関心を寄せると、その相手は「おもしろいな」と思うのです。なぜなら「自分のことに、こんなにも興味を持ってくれるなんて」となるわけです。
リーダーはまず、自分から相手のことに関心を寄せないと。この大切な第一段階が欠けている人が非常に多いですね。そうやって部下のキャラクターをつかんでおけば、会議のときに「みんなで頑張りましょうなんて言っているけど、おまえは娘のことになると帰っちゃうからな~」と言ったりすることがツッコミとなって笑いになったりするんですね。最初の段階で、仕事に関係ない情報もしっかりつかんでおくことが大事です。
そうした信頼のうえで、新しいこと、今までだれもやったことがないことをやると、「あの人おもしろい」となるわけです。好意を持ったうえで、新しいことをやることが大切です。
絶対に言えることは、おもしろいことというのは「最大公約数」ではないということ。全員が信じていることでは、歴史が変わるはずもない。たとえば、かつて地球が丸いかどうかという議論では、丸いほうが少数派でした。世界の発明とはみんなそうだったのです。にも関わらず、最大公約数が正解だと思っていること自体が、もうおもしろくないんですね。
もちろん、最大公約数を否定しているわけではありません。最大公約数は最大公約数でしかないということを認識し、その中でどんな新しいことができるのか、ということなのです。
おもしろい人は最大公約数を背負っていません。たとえば、これっておもしろいと思いませんか?と聞かれて、「いま世の中では流行っていないから」と否定する人がいます。「お前が世の中の代表か?」と聞きたくなりませんか? であれば、「俺は、いまは無理だと思う」といった言い方をすればいいわけです。1:1の対話であればおもしろさは崩れませんが、上にいる人ほど世の中を背負ったものの言い方をしてしまいがちです。
──上司の側でみると、自分の伝えたいことを裏付けるため、あるいは部下を動かすために、世の中の流れを語ると思いますが、それではおもしろくないのでしょうか?
吉田氏:「おもしろくない」ですね。一方的に話して、それで完結してしまっているんですから。一方的に話しておもしろいのは芸人さんだけです。一般的な会話、コミュニケーションの「おもしろい」というのは双方向で成り立っているんですよ。
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