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- 2024/03/22 掲載
「良い人」が必ずしも「良いリーダー」ではないと断言できる本質的理由
「あの人、良い人だよね」と言われるリーダーの落とし穴
ここで話題にする「良い人」とは、冒頭で示したような、ついつい他者を気遣う人です。メンバーには気持ち良く働いてもらいたいと考え、元気がないメンバーを励ましたり、壁にぶつかって苦しむメンバーの代わりに仕事をこなしたりするほか、ルール違反が起きてもできるだけ目をつぶろうとします。メンバーからすれば自分たちの働きやすさを第一に考えてくれる“良い人”に映るでしょう。しかし、ここには落とし穴があります。リーダーがメンバーに合わせようとするあまり、チームのパフォーマンスが低下する恐れがあるのです。
仮に、ある2人の社員が正反対の要望を出してきたら、両方を叶えるのは不可能でしょう。しかし、良い人は何とか妥協点を探ろうとするか、無理なお願いにはじっくりと時間を割いて部下の納得を得ようとします。
結果として、本来の業務に集中することができません。それに、メンバーも納得した振りをするだけで、次第にリーダーへ不信感を募らせるようになります。
「相手のため」を思って「優しさ」を重視した結果……
かくいう私にも苦い経験があります。現役を引退し、追手門学院大学に誕生した女子ラグビー部の監督を任されたときの話です。当時の部員はわずか2人で、ともにラグビー経験はありませんでした。小学校からラグビーに親しみ、社会人まで厳しい練習を積んできた私は、人間関係で嫌な思いをし、ラグビーが嫌いになりそうになった時期もありました。
だからこそ、2人には楽しくラグビーをしてほしい、ラグビーを好きになってもらいたいという思いを胸に「とにかく優しい人」で居続けようと考えていたのです。今考えれば完全に間違いでした。
選手の要望を聞こうとする私に、当初遠慮がちだった選手たちも、「こうしてほしい」と積極的に伝えてくるようになりました。そのうちに、何が起きたかというと、「コーチは向こうの話ばかり聞いて、私をないがしろにしていませんか」と2人から言われるようになったのです。「そんなことはない。平等に接しているつもりだ」と伝えても納得してもらえず、一時は2人とも退部する寸前までいきました。
もちろん、選手に一切責任はなく、完全に私の指導が間違っていた結果です。誰だって、指導者に要望を尋ねられたら無理にでも答えようとしますし、それが叶うなら次々にリクエストを出すようになります。
私が選手のためを思って指導に当たったことは間違いありません。ただ、このときの私は「良い人」であっても「良いリーダー」ではなかったのです。 【次ページ】「良い人」が「良いリーダー」とは言えない決定的理由
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