• 会員限定
  • 2014/11/18 掲載

「働きマン」の休載は、女性の活躍が簡単ではないということを示唆している(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(19)

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
漫画「働きマン」で問題提起されているのは、女性と社会進出でも男性社会との闘争でもなく、「働くとは一体なんなのか」という、男も女も関係ない当たり前の問いである。物語のなかばで「働きマン」が中途半端な形で休載を迎えたという事実は、現代社会で起こっている混乱の複雑さを物語っており、第2次安倍改造内閣発足時に安倍 晋三首相自身が言い放った「女子力開花内閣」という言葉の響きは、なんとも虚しく、現実味がないものに感じられる。
前編はこちら。
連載一覧

「働きマン」の華々しさと裏腹に語られていく「鬱展開」

photo
漫画「働きマン」が示すのは「女性の社会進出」という課題を超越した
本質的な社会問題だった!?

 「働きマン」は、経済的にはネットバブルで好景気に湧くなかの作品でもあり、若い女性の威勢の良さ、きっぷの良さのイメージが強い。しかし、当時大きな話題を呼び一世風靡したこの作品を改めて読み返すと、意外なほどに暗い印象を受ける。

 第2巻以降、徐々に姿をあらわすのがいわゆる「鬱展開」的なエピソードだ。

 たとえば、作中に登場する雑誌「週刊JIDAI」の契約記者である野島 貴史(28)がその一番バッターだ。彼は、第二巻の影の主人公とも言える。

 第11話「一人前の働きマン」で、主人公の松方は、編集者として初めて、増刊号の編集長を任されることになる。自ら発案した企画がヒットし、その拡大版を出すという、願ってもない仕事。体調を崩しながらも必死になってまとめ上げる大活躍が描かれる。

 野島は契約社員として彼女を手伝う、そのプロジェクトの「いち兵隊」であったのだが、松方の投げかけた言葉を気に病んで仕事を放棄し、失踪してしまう。その失踪の顛末が描かれるのが第12話「逃げマン」である。

野島のこの独白に宿るリアリティこそ、本作品の眼目である。

野島 編集部に入って2年 はじめの半年は必死だった
   署名で記事を書けるまでは遠い道のりだ
   それまでは編集者が立てた企画のために
   下調べしたりデータとったり 取材行ったり記事書いたり

   一所懸命やってれば きっと いつか自分の企画の記事書けて
   次につながると信じていた
   やったらやった分ちゃんと報われるなんてのは
   理想であって 現実はそうじゃない

   サッカーの記事を書く記者になりたかった
   でも 日々の仕事に追われるうちに
   目標は「署名記事」に変わり
   「今週の仕事をこなす」に変わった

(回想)

松方 野島くん 例の「50人」なんだけど 記事はやらなくていいです
   取材とテープ起こしだけやってください

(『働きマン』 第12話 逃げマンより)

 野島は、不器用かもしれないが夢も目標もあり、真面目で一途な青年である。マネージャーである松方の一言が彼の気持ちを切れさせ、それが失踪に繋がった。第11話で描かれた華々しいお話の裏側が描かれている。

 このようなエピソードに一回を割いているということは、普通に考えると、作者である安野モヨコ氏の問題意識のあらわれである。だが、マネージャーである松方がそれに対する反省をするような描写はなされない。この一件で深く反省して、彼女のリーダーシップが改善されたとか、編集部の組織的な課題が浮き彫りになったとか、そういった話にはならない。

 この文脈はぷつんと切断され、それから先では何事もなかったかのように、全く違う話が語られていくのだ。

【次ページ】主人公が倒れる寸前まで、物語はつづく
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます