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  • 2015/05/29 掲載

ドラゴンボールから読み解く、孫悟空的エキスパート人材を育成するための課題(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(29)

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超人気漫画「ドラゴンボール」に登場する「孫悟空―孫悟飯―ピッコロ」の関係とは、ビジネスの世界に置きかえると「エキスパート―素質を見出された後輩―それをとなりで見守る他部署のリーダー」のようなものである。才能を見出される新人は、人並み外れた素養とスキルがあるために、任された業務分野において、表面上は適応する。しかし、最も肝心な「動機」が存在しないまま、第一世代に巻き込まれるようにして現場に身をおくということもままある話であり、それが致命的なアダになる場合がある。

動機を持たないまま、パフォーマンスをあげさせられる第二世代

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 孫悟飯の悲劇は、高いポテンシャルをもって生まれ、そのポテンシャルを好戦的な第一世代に見出されてしまったということにある。初登場シーンのセリフは「大きくなったら、学者になりたい」と言っていたほどで、そもそも、このすれ違いこそが、ドラゴンボールという作品の後半部分における、最も大きなモチーフとなっている。

 本人は大きくなったら学者になりたいと繰り返し主張しているにも関わらず、「こいつはものになる」と、大人達に厳しい修行に無理やり駆り出され、望みもしない戦いに巻き込まれ、挙句の果てに、人類の行く末を託される。

 確かに地球の平和を脅かす敵は打破すべきである。確かに学者になりたいという自分の夢にとっても、そこは当然利害が一致するところではある。もちろん、人並みに正義感や使命感もある。自分に力があるのならばそこに協力をしたい。

 こうした心理状況で、人並み外れた素養とスキルがあるために、「敵と戦って地球を守る」という業務分野において、表面上は適応する。しかし、最も肝心な「戦うための動機」が存在しない。動機なきまま、第一世代に巻き込まれるようにして業務の現場に身をおいてきたということが、いつしかアダになる。

 「表面上は適応しているが、心の底からそこに喜びや充実を感じているわけではない」という状況を、上位の者が正確に把握するのは難しい。上位の者がその分野を開拓してきた第一世代であるならば、それはなおさらである。

 パフォーマンスが発揮されていなければ、明らかにそれが問題視され、課題として前景化される。しかし表面上適応し、パフォーマンスを発揮している状態では、上位の人間はそれが自分と同様のモチベーションによって成立していると早合点してしまうのである。

 そのような状況であるからこそ、下位の人間にはストレスが溜まり続け、ここ一番の肝心な局面で、その矛盾が噴出して、パフォーマンスがまったくあがらないという残念な状況が生まれてしまうことになる。

【次ページ】二代目が凡庸さを克服する方法論は存在するか?
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