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- 2014/08/15 掲載
「組織の愚」を描いた宮崎駿のメッセージを、風の谷のナウシカから読み解く(前編)
連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(12)
今現在の日本社会を生きる上でもそのまま通用する鋭い批評の書
山本七平「一下級将校の見た帝国陸軍」は、戦争末期に招集され、砲兵隊本部の少尉として従軍した著者が、当時体験したことについて考察し、その組織としての不合理さについての考えが述べられた書物である。その内容は、自身が招集を受けてからフィリピンで終戦を迎えるまで、召集、訓練、配属、転戦、そして敗戦・・・という形で、時系列的にて語られていくというものだ。当事者の書いたものであるにも関わらず、徹底的に醒めた視線に貫かれていて、当時の現場の様子が冷静な筆致で語られている。
ここで語られる教訓は、今現在の日本社会を生きる上でもそのまま通用する、まさか60年前の出来事とは思えないような話に満ちている。
例えばこの書の冒頭部で紹介されているエピソードからして、現在の企業社会を考えるにあたっても、大きなヒントが隠されているように思えてならない。
「ここが東武十二部隊、正規の名称は近衛野砲連隊である。(中略)第一中隊から第三中隊までが第一大隊、第四中隊から第六中隊までが第二大隊。本連隊は第三大隊は欠である・・・。」
「おかしいではないか、その表現は・・・」と私は内心で考えた。それではこの部隊が連隊と称するのは嘘で、近衛野砲兵二個大隊が、その内容に即応した正規の名称のはずではないのか。
(中略)
私が帝国陸軍なるものに、最初に疑惑を感じたのはこのときであった。この第一印象は非常に強く、以後何かあるたびに、「これは結局、二個大隊といわず、“連隊ただし一個大隊欠”と言いたがる精神構造と同じことではないか」と思うようになった。
(一下級将校の見た帝国陸軍 「すべて欠、欠、欠・・・」より)
「中隊」が3つ集まると、それは「大隊」と呼ばれる。「大隊」が3つ集まると、これを「連隊」と呼ぶ。配属先は「連隊」だと聞いて宿舎にやってきた筆者だが、実際は配属先の部隊の規模は、「二個大隊」であった。最初からそう言ってくれればいいものを、何故か“連隊ただし一個大隊欠”という表現をされた、というエピソードである。
一瞬、「そんなものかな」と思い過ごして受け入れてしまっても、問題にはならないような些細な話に見える。しかし、ここを見逃さないのが山本七平の感受性であり、これこそが本書の真骨頂なのであった。
【次ページ】目の前にあるの課題から目をそらさず、現実を見よ
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