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  • 2016/02/25 掲載

「孫子の兵法」は孫子ファンが編集していた? フレームワークは自らで再定義せよ

ビジネス書には載っていない「孫子の兵法」の真実(後編)

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「孫子の兵法」における重要フレームワーク「五事七計」は、実は孫子ファンたちによって編集されていた――。現代感覚で読み下すと、実は孫子の冒頭部分は相当なる悪文に見える。兵頭二十八氏は、著書「孫子」において、孫子における「故(ゆえに)」のほとんどは、論理関係を意味するのではなく、別の資料から切り貼りをしたあまたの「編集者」の「カット・アンド・ペースト」の痕跡、段落記号のようなものであると解説している。世界最古の実用的なフレームワークである「五事七計」がたどってきたアプローチを踏まえることで、現代社会におけるフレームワークの応用方法を身に付けることができる。
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ビジネス書には載っていない「孫子の兵法」の真実とは

孫武がもっとも苦手としたのは、「無能な君主」だった?

・戦争の大筋を把握する際は、「道、天、地、将、法」の「五事」で考える

・自軍と敵軍を比較する際は、「主、将、天地、法令、兵衆、士卒、賞罰」の「七計」で考える

 これによって、「五事」と「七計」の間にある三つの謎のうち、第二、第三の謎は解けた。残るは第一の謎、「主」「兵衆」「士卒」の要素が「七計」にあって「五事」にないということだ。

 「兵衆」「士卒」に関しては、平時と戦時の切り替えというポイントで理解ができるように思われる。特に「兵衆」については、普段は農作業に従事している農民を徴兵するわけなので、「五事」に出てこないのは自然なことである。「士卒」については、当時の職業軍人の生活状況に踏み込まなければ断定的なことは言いづらいが、「法」=「曲制(組織編成・軍法規)・官道(人事制度)・主用(後方兵站)」の部分で該当する内容については、指摘がされている、という理解で十分だと思われる。

 残る謎は、「主」の要素がどうして「五事」に挙げられないのか?である。君主が毎回毎回戦場に赴くわけではないため、むしろ「主」は「五事」寄りの概念であって、「七計」にあるのは違和感がある。

これを考えるために、「主」「道」「将」の記述について整理しなおしてみる。「五事」で指摘されている内容はこうだ。

・道とは、民をして上と意を同じくせしむる者なり。
・将とは、智・信・仁・勇・厳なり。

 一方、「七計」ではこうだ。
・主いずれか有道なる
・将いずれか有能なる

 「五事」で「将」について言及しているのは、その「人材要件の整理」である。そして、「七計」では「どちらが有能か」と、かなりドライでクリアに言及されている。

 「主」については、同じように整理するのが難しかったのかもしれない。何しろ君主である。「天」「地」と同じで、それを所与の条件として戦うしかない種類のものだし、不足があるからといって首を簡単にすげ替えるわけにもいかない。

 孫子全体を読んでいくと、「君主というものは、戦争の実情もよくしらないくせに好き勝手言いたいことを言ってきて、邪魔」という内容が度々登場する。それは「現代企業社会で、事業部長が経営者に、あるいは経営者が株主に感じるストレス」と同じ構造をなしている。

 孫武も本当は、「主も本当は、いずれか有能なるが大事」と書きたかったかもしれない、もしかしたら、「主いずれか有能な将を見分け、仕事を任せるか」と書きたかったかもしれない。現代企業社会でも、同じ悩みを持つ人は多いであろうから、自身に引き比べて考え、想像していただくのも良いのではないだろうか。

【次ページ】「孫子の兵法」は孫子ファンによって編集されていた?
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