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  • 2014/06/21 掲載

ONE PIECEの主人公を反面教師に? リーダーがやってはいけない5つの危険(前編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(8)

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ONE PIECEの主人公、「麦わらのルフィ」から、リーダーシップを学ぶことができるのか――。私たちが「組織がうまく機能していない」という実感を持つ時、果たして、どのような視点で考えればよいのだろうか。また、有効な対策はあるのだろうか?今日の社会を生きる誰しもが向き合わざるを得ないこの課題に対して、「孫子兵法」と「ONE PIECE」という二つの作品を通して、リーダーシップ論の視点で、現代社会におけるヒントを探る。
連載一覧

ONE PIECEの主人公 ルフィはリーダー失格か?

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孫子とONE PIECEの主人公とのリーダーシップの違いとは?
 本連載は、マンガやアニメ、映画など、サブカルチャーにおける作品を、古典の目を通して読むことで、実社会に役立つ教訓を引き出そうという趣旨のものである。

 サブカルチャーを通して、実生活や社会に対するヒントを見出すという考えは、昨今急速に市民権を得ており、哲学的な解釈、社会科学的な解釈、自己啓発的な解釈と、まさに百花繚乱といった感もある。

 そのなかで、例えば「ONE PIECEに描かれる主人公、『麦わらのルフィ』には、リーダーシップにおける一種の理想像が描かれている」といった言説も、頻繁に目にするわけだが、しかし、ヒット作品の主人公がすなわち「社会的な役割の理想像」に必ず一致するかというと、そうではない。

 ということで、「ONE PIECEは本当に、リーダーシップを考えるうえでのお手本となり得るのか?」というのが、今回のテーマである。

 もちろん、表題の通り、本稿における意見は、「現実社会に生きる我々は、マネジメントの実践において、『麦わらのルフィ』を無邪気にお手本にするのはよろしくない」というものである。

 それはそんなに難しい論理ではない。ごくごく単純な話で、例えば孫子兵法では、「五危」すなわち、「リーダーが犯してはならない五つの危険」なるものが説かれているのだが、ONE PIECEというこの作品では、ことごとくこれに反したリーダー像が描かれているという、それだけの話なのである。

 実際に「五危」読むと、誰しもが納得できると思われる。

 将に五危あり。必死は殺され、必生は虜にされ、忿速(ふんそく)は侮られ、廉潔(れんけつ)は辱められ、愛民は煩(うるさ)さる。凡そ此の五つの者は将の過ちなり、用兵の災いなり。軍を覆し将を殺すは必ず五危を以てす。察せざるべからざるなり。

(孫子兵法 九変篇より)

第一の危険「必死」
 まず指摘される第一の危険は、「必死」である。

 リーダーが「必死」、つまり死の危険をかえりみないのは組織にとって良くないことである。そのようなリーダーは危険を犯すあまり、将来文字通り殺される可能性が高い、と、これに何を付け加えることもできないほどにシンプルな指摘である。

第二の危険「必生」
 この次は「必生」とあるが、これは、「何をおいても生き延びようとする人間は、すぐに敵の軍門に下り、捕虜にされる」ということだ。

 リスクを取り過ぎるのはもちろん危険だが、リスクを避け過ぎるという態度もまた問題だ、ということだ。

 この二つのバランスは人類にとっての永遠の課題ともいえるが、明らかにONE PIECEの主人公は「必死」に寄りすぎている。どのような敵と戦うにあたっても、自分の保身をかえりみず、とにかく必死であり、完全にそのバランスを欠いている。

【次ページ】孫子の教えをことごとく守らないルフィ
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