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  • 2015/08/31 掲載

現実を直視できない限りは、旧日本軍の失敗を乗り越えることはできない(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(35)

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太平洋戦争の敗因を形成したのは、皮肉にも日清、日露戦争という成功体験を通じて培われた「白兵銃剣主義」「艦隊決戦主義」のコンセプトだった。しかしそれは知的に劣っていたから間違った意思決定がなされたというよりは、経済的に劣っていたからそれ以外に選択肢を持てなかったという悲しい現実があった。ここから我々が獲得すべき第一の教訓とは、「現実に目を向けよ」という自戒の重要性である。
前編はこちら
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日本軍のケース・スタディから学ぶこととは?

 過去の失敗による正しいフィードバックを得るということは、次は失敗しないための確かな知識を獲得する、ということである。それは、その失敗の本質をとらえるということである。物事は、本質をとらえない限りは永遠に観測できないし、記述もできない。もちろんマネジメント=制御することが出来る日など、やってこない。

 第二次世界大戦を戦った日本軍がどのようなプロセスで敗北をしたのか、6つの戦闘をケース・スタディすることで浮き彫りにした名著、「失敗の本質」では、最終的な敗北の要因が、陸軍の「白兵銃剣主義」と海軍の「艦隊決戦主義」にあると結論づけている。

 もう少し丁寧に言うならば、明治維新から日露戦争にかけて、いくつかの成功体験を通じて培った「白兵銃剣主義」「艦隊決戦主義」等の考え方が、世界の軍事的潮流においては第一次世界大戦以降通用しないものとなったにも関わらず、それを修正することができずに敗れ去った、ということが語られている。

 これは、考えれば考える程、不思議な話である。「日本は明治維新からこのかた、世界の軍事的潮流に乗り遅れ続けて、結果、アメリカに敗戦した」という話であれば、それなりの筋が通るというものである。しかし、「日本は明治維新から日露戦争にかけて、驚異的スピードで世界の軍事的潮流にキャッチアップした。しかし、なぜかその次の戦争では、そうことはうまく運ばず、残念ながら敗北した」というのである。

 兵器装備が戦闘の勝敗に果たした役割を中心に、戦闘の変遷を歴史的に論じた書、金子常規「兵器と戦術の世界史」においても、日露戦争を転機として、世界の人々は「火器」つまり機関銃や大砲が戦争の勝敗を決定する主要因となったと考えるようになった、ということが語られている。

砲兵射撃の効果は西欧から派遣された従軍武官等には極めて大きく評価された。彼等の一致した具体的な戦術的教訓としては「①正面攻撃の失敗と包囲機動の成功 ②野戦築城と鉄条網のすばらしい防御力 ③機関銃の致命的効力の増加 ④そして最も顕著なのは、速射砲の威力」が挙げられたが、これらは既に世界軍事界の通説ともなっていた。

特に英国観戦武官が「砲兵は今や決定的兵科となった。・・・他の事が同等の場合最良の砲兵を持つ側が常に勝利を占める。」「砲兵の無限の重要性を絶対に確信する故に、たとえ他兵種を犠牲にしても大いに増加すべきであることに疑問はない」と評価したが、この見解は約十年後の第一次大戦において現実に証明されることとなった。

(金子常規「兵器と戦術の世界史」より)

【次ページ】世界の軍事的潮流にキャッチアップしたのに負けた日本
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