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  • 2015/06/23 掲載

営業目標が達成されないときには「打たれなくても鳴る」経営幹部が必要だ(後編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(31)

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墨家は、世に安定をもたらす「兼愛」を実現するために、「非攻」を掲げたことでよく知られている。大国がその武力でもって小国を侵略しようとしたときに、独自の戦術と技術で城を守り抜き、私利私欲に基づいた野望を、文字通り実際に打ち砕いて回ったのである。墨家の平和思想は、実は極めて「インターネット的」なのだ。
前編はこちら

実は極めて「インターネット的」であった、墨家の平和思想

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 秩序形成とは、人々が行動の原則を共有するということである。この行動原則の共有という点において、儒家と法家は、目指す方向こそ互いに近かったと言えるが、その方法論が大いに違っていた。

 前者が「偉大なる君主の徳が、自発的に広がり、その結果として秩序が生まれる」というアプローチであったのに対して、後者は「強制的に法を制定し、信賞必罰によって徹底的に人々を組織化する」であった。ここには自発か、他律か、という対立軸があった。

 墨家と儒家の対立に着目すると、また違った切り口が見えてくる。墨家は、「親子関係」や「君臣関係」というトップダウン的な秩序を否定し、自律分散的な秩序を目指したのである。すなわち、個々の人々が自己中心的な考え、行動を廃止して「兼愛」に目覚めたら、その結果として、自ずと秩序が現われるはずだ、と考えたのだった。

 儒家と法家は小さな差異はあれど、いずれも大型コンピュータによる中央集権的管理思想を思わせる。一方で、墨家はエージェント指向、自律分散型である種「インターネット的思想」だったとも言える。

 下表のように整理すると、儒家、法家、墨家が、秩序形成の源泉/維持という観点で見ると、きれいに「三つ巴」を形成していることがわかる。

儒家法家墨家
秩序が生まれる源泉トップダウントップダウンボトムアップ
秩序が維持される力自律他律自律

儒家と法家に埋もれてしまった墨家の思想

 これらの思想が成立していった歴史的な流れを時系列的に見ていくと、中国大陸における秩序形成手法の揺籃期の雄大な姿が浮かび上がってくる。

■紀元前500年頃・・・孔子の時代。 周王朝が力を失いながらも、各国は盟主として周王朝をいまだ敬っていた時代。孔子は周の建国の功臣の一人、周公旦を理想の聖人として崇め常に夢に見ていた。言わずと知れた、儒家の始まりであり、諸子百家の時代の幕開けの時代である。

■紀元前400年頃・・・墨子が登場し、活躍した時代。 周王朝がついに一小国と化し、時は戦国時代まっただ中。国家同士の戦争が大規模化し、世の混乱が益々深まっていくなか、墨家は強固な結束力のもと、高い軍事技術を諸国に提供した。

■紀元前300年頃・・・孟子が登場し、活躍した時代。 戦国時代末期。亜聖と呼ばれた孟子は、孔子の思想を受け継ぎ、仁義による王道政治を中核とする政治理論を説いた。堯舜(ぎょうしゅん)などの歴史上の古代聖王の政治を理想とし、説いた。

■紀元前221年・・・法家の時代、秦王朝の成立。 法家にその思想的基盤をおいた宰相、李斯(りし)の補佐のもと、始皇帝による中国大陸の統一が実現した時代。李斯は法家の思想を実践し、度量衡の統一などの実績を残した一方で、紀元前213年には焚書を始めとする弾圧なども実行した。

 このように見ていくと、儒家の思想が、まず墨家に敗れ、再興すれども次は法家に敗れたという大きな流れが見える。しかし結局のところ、秦の崩壊は法治主義の限界を示すことになった。

 その後、漢の時代では徳治、法治のハイブリッド政治が実現されていったが、墨家の唱えた兼愛思想だけは、漢に取り入れられることはなかった。

 墨家は究極のボトムアップ型組織を志向した思想集団であった。それはそのまま、儒家に対する極めて先鋭な批判となっていった。そしてその最大の争点が、君主に対する「忠」のあり方だったのである。

【次ページ】世が乱れているときにこそ輝く墨家の教え
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