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  • 2015/06/16 掲載

営業目標が達成されないときには「打たれなくても鳴る」経営幹部が必要だ(前編)

連載:名著×少年漫画から学ぶ組織論(30)

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企業のトップは、本当に現場の実情が分かって経営計画を立てているのか? まともな計画が降りてきたことなど一度もなく、そもそも計画を実行するマネジメントがなっていないのではないか? そんな思いを、多くの組織人が抱きながら日々業務に向き合っている。実が、「墨家」の唱えた「兼愛」の言葉に、この課題を乗り越えるヒントが隠されている。

営業組織に必ずふりかかる、宿命的な悲劇とは

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 世の中にあるほとんどの企業には、毎年、毎四半期、毎月の売上目標というものがある。営業職とは、こうした売り上げ目標を追いかけ、達成することがミッションである。

 しかし、営業は自分一人だけの都合で案件を受注できるわけではない。世の中の景気や顧客の事情、また担当者の機嫌にも大いに左右される。ある種「運」の要素が極めて強く、事前にその成果に関する正確な見積りを立てるのが難しい仕事だ。

 そうしたなかで、どう考えても難しいような目標を立てる営業組織もあれば、極めて保守的に目標設定をする組織もある。そのあたりの組織文化は、経営者の好み・価値観の影響を受けるものである。

世の中に「目標の立て方」は様々あれど、結局は「売上」という結果が不足してしまうと、経営は立ち行かなくなる。そこで、営業組織というものに必ず起こる、宿命的な悲劇が生まれる。

 年度が切り替わり、心機一転、夢とともに立てた事業計画。今年こそはやるぞと気炎を上げ、花見の席で乾杯し、マネージャーが一席ぶつ光景には、多くの人に見覚えがあるものである。

 しかしながら、夢とともに描いた目標が、なかなかそう簡単に達成できないのもまた現実である。第三四半期ぐらいに差し掛かると、目標未達どころか、「経営状態的にこれ以下だとまずいことになる」という下限ラインまで視野に入ってきて、あの花見の席の夢もどこへやら、顔面蒼白で数字とにらめっこをする冬が訪れるのであった。

 厳しい状況のなか開催される営業会議は「企業経営のリアル」に満ちている。いまそこに迫り来る危機、打開策の見えない沈黙。口を開けば猿芝居、虚々実々の駆け引き。その裏で繰り広げられる、本音と本音のぶつかりあい。

 最終的には、トップの決断によって裁定が下され、あらたな目標が配分される。そこには、「これを達成しなかったら、どうなるのかわかってるんだろうな」という無言のプレッシャーが沈黙のうちに流れ、独特の緊張感が醸しだされる。

達成されない架空の目標設定で、どこか腑に落ちない気持ちに

 世の中というものは不思議なもので、本当に営業目標が未達だったとしても、それでいきなり企業の消滅に結びつくほどドラスティックにできているわけでもない。赤字は赤字でも、翌期の予算をやりくりし、様々な調整が行われることで企業体としての形を保たれることもある。多少、不自由なことは増えることになっても、人間とは喉元をすぎれば熱さを忘れるもの。あの時の「危機」とは、結局いったいなんだったのか? ということもまた、よくある話である。

 若手の営業マンは、なんだかモヤモヤとした気持ちを抱えながら、再び春を迎える。性懲りもなく花見の席で気炎を上げるマネージャーの言葉を浴びて、これはもしかしたら、いま生きているこの世は夢なのかもしれない・・・と、ほろ酔い加減で聞き流しながら、また一年が回っていくのであった。

 「架空の目標が立てられて達成されず。危機感のもとで改めてリアルな目標が立てられても、また達成されず。それでも会社は存続し、どこか腑に落ちない気持ちだけが残る」という現象が、今回のテーマである。

 こうした企業経営のあり方は、関わる従業員に不信感や無力感を与えるものである。

「一体トップは現場の実情が分かって経営計画を立てているのか。まともな計画が降りてきたことなんか一度もないし、そのうえ、それを実現するためのマネジメントが適当だから、いつもグダグダな結果になるんじゃないか。大体、うちの課長、営業会議で真面目に話を聞いている姿なんか見たことないよ・・・」

 このように、組織の意思決定者に対する信用が揺らぐと、現場のオペレーションに乱れが生じる。そうなると、安定した収益は実現しない。やってもやっても仕事はなくならず、いつまでたっても達成感が得られない、という状況である。

 会社組織とは、古典的な用語で言えば、ひとつの「天下」だ。トップに対する不信感は「天下の乱れ」すなわち、「秩序の不在」を招くものである。

 天下が乱れる原因とは、一体なんなのか。これは文明が生まれた時からの、人類の課題である。今回は諸子百家の時代における「墨家」の言葉に学びを得たい。

【次ページ】墨家が説いた「天下の乱れ」の原因
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