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- 2016/07/22 掲載
あなたの部下は星野源が「LIFE!」で演じる「うそ太郎」状態だ
コント番組「LIFE」の「うそ太郎」があぶり出す現場の課題
NHKで好評放送中のコント番組、「LIFE!」はウッチャンナンチャンの内村光良を中心としたタレント陣による、「人生」をテーマとしたコント番組である。会社内の人間関係や事件をモチーフにしたコントも多く、現代企業社会への風刺がきいていて、マネジメントの現場に対する鋭い問題提起となっているものもある。
例えば今シーズンに初めて登場したキャラクター「うそ太郎」は、その筆頭格ともいえる作品である。
この作品において、ドラマを繰り広げるのは三人の人物だ。店の大将(内村光良)と、丁稚の太郎(星野源)、そして、店を訪れる客(田中直樹)。
コントの内容を解説するというのも野暮な話ではあるが、まずは、この作品の概要を紹介しておきたい。現在のところ、このシリーズは4本ほど放送されているが、すべて同一パターンで話は展開されており、起承転結式でその構造を説明すると、このようになっている。
内村演じる大将がその直後に眼前にあらわれることで、すぐさまそのウソが暴かれるわけだが、その際、大将によって、丁稚が「あまりにウソばかりつくので、うそ太郎と呼んでいる」との説明がなされる。
承:客の目的が提示される。目的は、客のその時の設定によって、食事であったり、取材であったりするが、シャリを炊いていない、ネタの在庫がないなど、様々なウソによって、その目的は全く達成されない。
転:客は、自身の目的が達成されない不満を表明するが、それ以上に、このような丁稚に仕事をさせている店の経営に対する懸念を表明する。しかし驚くべきことに、大将は、太郎のことを弁護し、庇うという行動を見せる。
結:ウソ太郎はさておき、大将は常識的な対応をしてくれるもの、との期待が外れ、客、怒って店を出る。
この作品の要となるポイントは、「転」部分における、大将による太郎への愛情表明である。
客「僕が言うのもなんですけど、あいつ、なんとかしたほうがいいんじゃないですか」
大将「なんとかって?」
客「いや、大将死んだって、なかなかのウソですよ。もう少しで私、帰ってしまうところでしたよ」
大将「それは、私から謝ります。でも、あいつは、ウソつく以外は見どころがあるやつでねぇ。将来は、大将みたいな、日本一の寿司職人になりたいって、、、」
客「それもウソじゃないですか。ウソですよ絶対」
こうして、いかにも常識的で頼れる人物として登場した大将が、実は、客側(=現実世界、常識が通じる世界)の人間ではなく、ウソ太郎側(=理解不能な世界)の住人であったことが明るみに出るのである。
完璧な説明ができない部下はどこにも存在する!?
6月9日に放送された「うそ太郎」のコントで、この問題が最も明確に顕在化されている。店を訪れるのは、取材目的のグルメ雑誌記者である。例のごとく、太郎によって大将が不在であるとのウソが語られ、記者は太郎が店の責任者であると思い込んで取材をしてしまう。あらかた話を聴き終わったと思った矢先、大将が登場する。太郎が語った内容に間違いがなかったかを確認していくと、結果、太郎が語ったことは全てウソだった――という展開である。
記者「この店は、もともと、反物問屋から始まった――これは?」
大将「違いますね」
記者「この店の創業以来の信念、魚もギョッと、驚く寿司を出す、これは?」
大将「聞いたこと無いですね」
記者「いま、スイカと歯磨き粉を使った、全く新しい寿司を考えているという――」
大将「考えてません」
創業物語、事業理念、新商品開発とくれば、マネジメントをその職責として担当する読者であれば、必ずピンとくるのではないだろうか。この会話、営業マンが顧客に自社の成り立ちや製品について説明している状況の暗喩そのものとなっているのだ。
つまり、コント「うそ太郎」は、こう語っているのである。あなたがたの会社の営業マンが日々繰り広げているパフォーマンスとは、その構造においては、「うそ太郎」となんら違わない状況を呈しているのですよ、と。
何かのきっかけで部下と同行し、久々に会社紹介をしているところを見たところ、とんでもないようなトンチンカンな受け答えをしている現場に直面し、あたふたする経験は、必ずあるものだ。
だからといって、「うそ太郎」ほどひどい営業マンはいない――と、人は思うかもしれない、しかしそれはこの企業社会に蔓延する必要悪、「善意のウソ」に対して見て見ぬ振りをする人の言である。
そもそも、相対している人間に対して、「その状況に応じて、自社や商品の成り立ちを、的確かつ説得的に語れるようにする」ということは、極めて困難なことである。
相手が注目するポイントに焦点を当てると、全体観が犠牲になる。もうあと一歩、強く関心を持ってもらおうとすると、誇張が交じる。いやそもそも、何かを説明しようとして、言葉を選ぶという行為自体、真実とのズレ=ウソを孕むものなのである。そのようにして誤差を積み上げていった結果、営業マンの「トンチンカン」が生まれる。
そこには相手を騙すつもりもなければ、会社を偽る動機もない。このコントで語られているものの本質とは、ただ事業に貢献したい、普通の社員のそうした一念の結果として生じた、「善意のウソ」なのである。
【次ページ】部下が上司に対してつくウソの正体とは
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