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洗練された製品を使い込んでいると、ビジネスとテクノロジーの「交差点」が見えてくる。先進企業はこの交差点を巧みに活用した新しい発想で、顧客に喜ばれるビジネスモデルを構築し、収益を上げている。ポイントは、「顧客ペイン(不便さや不快さなどの困りごと)」×「テクノロジー」×「ビジネスモデル」を掛け合わせて考えている点だ。今回は、ダイソン(家電)、ペロトン(宅内バイクマシン)、テスラ(EV)の具体例を紹介しながら、これらの企業がどういった考えで、新しい仕組みを製品に組み込み、収益を上げて成功しているのか、ひも解いてみたい。
ダイソン:「売り切り」から「替え刃」モデルへの転換
ハウスダストの軽度なアレルギー持ちの筆者は、空気清浄機をいくつも使ってきた。今までダイキンやシャープといった国産を何台も使用してきたが、最近買い足したのはDyson(ダイソン)だ。
理由は、ユーザーエクスペリエンス(UX)の違いにあるが、そこにはビジネスモデルの転換も大きく関わっている。
多くの国内メーカーの空気清浄機では、フィルターを取り出して掃除機などでほこりを除去するか、水洗いをする必要がある。ビジネスモデル的に見ると、空気清浄機はユーザーの買い切りの商品で、企業にとっての主な利益は売った時にのみ発生する。
買い切りのため、ユーザーは空気清浄機のフィルターをメンテナンスしながら使い続ける。このメンテナンスの時に、顧客のペインが隠れている。掃除の際に集塵したほこりが舞うので、ハウスダストや花粉のアレルギー持ちの人にとってはとてもつらい作業になってしまう。
これに対し、ダイソンの空気清浄機の場合、空気中からちりやほこり、ごみなどを取り除くために用いられるHEPAフィルターと、活性炭の2種類が一体化したフィルターが用いられており、これが使い捨てとなっている。フィルターの使用時間がモニタリングされ、1年程度使用すると、アプリや本体にフィルター交換の通知が来る。
ユーザーとしては、たまったほこりをそのまま袋に入れて処分できる。つまり、メンテナンス時のペインを省略しながら、新品のフィルターにより、購入時と同じ清浄能力を手に入れられるUXになっている。
ここで注目したいのは、顧客のペインを取り除きながら、売り切りモデルではなく消耗品を提供し続ける「
替え刃モデル(ジレットモデル)」に転換し、サブスク的に収益を得るビジネスモデルにしている点だ。
企業の収益面で見ると、筆者が購入したダイソンのヒーター付き空気清浄機は2020年当時7万7,000円で、フィルターは年1回交換の推奨で7,700円としている。つまり、10年使い続けると本体1つ分の売上が立つ計算だ。ユーザーとしても、高価な本体を毎年買い替えなくてもフィルターの買い替えにより新品の清浄能力を保てるのはうれしい。
このように、顧客ペインを取り除きながら、テクノロジーの設計を変更して、ビジネスモデルの転換をすることで継続的な利益を上げられるようにしている。企業とユーザーの間にWin-Winの関係が生まれる逆転の発想と言える。
ダイソン:空気清浄機とは“真逆の”発想の掃除機
従来、掃除機は本体購入後に紙パックを買い足し続ける替え刃モデルとなっていた。しかし、Dysonは掃除機の紙パックが必要な替え刃モデルから、消耗品が不要な脱替え刃モデルへと転換した。面白いことに、先ほど解説した空気清浄機とは真逆の方向にビジネスモデルを転換している。
このビジネスモデルの転換にも「ペインの解消」が隠れている。
ダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソンは、掃除をしていると紙パックが目詰まりし、吸引力が落ちることにペインを感じていた。彼は5127台もの試作品を作り、定期購入する紙パックが不要で吸引力の落ちない掃除機を開発。紙パックが膨らむ構造でなくなり、本体は大幅に小型・軽量化した。透明の容器にごみがたまり、ごみ箱に直接捨てられる掃除機を発明した。
実際に使ってみると、吸引力が落ちないことに加え、紙パック式と違い、掃除の実績が目に見えるので、掃除の達成感を得ることもできる。買い足す必要のある消耗品が不要で、本体も小型化し軽いので、筆者は長期の海外旅行の際は持っていくことにしている。Airbnbで滞在すると、家によっては床がほこりっぽく掃除機も当てにならないので、非常に役に立った経験がある。
ここでも吸引力が落ちるというペインを、テクノロジーで解消し、消耗品不要のビジネスモデルへと転換していることが分かる。
【次ページ】ダイソン・テスラ・ペロトンの創業者の「共通点」とは
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