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  • 2014/03/06 掲載

アベノミクスは中小企業の活性化につながったのか?翻弄されずに取り組むべきこと

ノークリサーチ連載:中堅・中小企業市場の解体新書

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中小企業においても景況判断指数や設備投資計画といった種々の経済指標は好転の兆しを見せつつある。アベノミクスが一定の効果を見せ始めたといっても良いだろう。しかし、実際に中小企業の方々とお話をすると、「恩恵を受けているのは大企業だけ」という意見もまだまだ多い。実際、中小企業の同じ業種/業態であっても、業績を改善できている場合とそうでない場合があるようだ。そこで、本稿では中小企業における最新の業績状況やIT投資意向を尋ねた調査結果を元に、中小企業が自らの力で持続的に業績改善を続けるためには何をすべきなのか?を考えていくことにする。
 アベノミクスでは中小企業向けの支援策にも力を入れている。従来の製造業などに加えて、サービス業も新たに対象として加わった「新ものづくり補助金」(中小企業・小規模企業ものづくり・商業・サービス革新事業)もその一つである。ただし、こうした支援制度の採択を受けるためにはしっかりとした事業計画作成が不可欠だ。つまり経済環境の変化にせよ、さまざまな支援策にせよ、その恩恵を受けるためには中小企業側にもそれなりの取り組みが必要ということになる。

「DI値」の特性を理解して経済指標を読み解くことが大切

 まずは全体の傾向を俯瞰しておこう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業1000社に対し、経常利益とIT投資の増減を尋ねた結果をDI値としてプロットしたものである。

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IT投資DIと経常利益DIの全体変化

IT投資DIとは?
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」を指す。2014年1月時点でのIT投資DIは2013年10月~2013年12月と比べた場合の2014年1月以降のIT投資意向を示す「先行指数」となる。IT投資の「実績値」ではなく、投資意向を反映した「見込み値」である点に注意する必要がある。

経常利益DIとは?
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」 を指す。2014年1月時点での値は2013年10月時点と比較した場合の経常利益増減の実績値となる。

連載一覧
 IT投資DIと経常利益DIともに2012年末から改善を続け、直近の2014年1月にはプラス10に近い値にまで改善してきている。だが、こうした右肩上がりの変化が自身の肌感覚と必ずしも一致しないと感じられている方も多いのではないだろうか?

 「DI値」とは上記の説明にもあるように、「増えた」という回答と「減った」という回答の差分である。しかし、実際には「変化がない」と回答した企業が7~8割程度存在する。

 このように「DI値」とは景気動向を牽引する力がどの方向に働いているか?を示すものであり、大多数の企業業績を平均化したものとは異なる点に注意が必要だ。政府などが発表する経済指標にも「DI値」を採用したものが少なくない。ニュースなどで経済指標を読み解く際には、この「DI値」の特性を理解しておくことが大切だ。

経常利益がプラスとなった企業が以前から取り組んでいたこととは?

 業績の変化をもう少し詳しく見てみよう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、2013年10月時点と2014年1月時点を比べた時の経常利益増減の理由(複数回答可)を尋ねた結果のうち、比較的回答件数の多かったものをプロットしたものだ。

画像
経常利益がプラスとなった要因(複数回答可)
画像
経常利益がマイナスとなった要因(複数回答可)

 経常利益が前四半期と比べてプラスとなった理由のうち、「アベノミクスによる景気回復が効果を出し始めている」「企業の設備投資が増えている」「公共事業に伴う案件が増えている」といった項目はアベノミクスによる成果の一つといえるだろう。

 企業による期待感が高まることによって設備投資が増え、同時に公共事業を増やすことによって建設業を中心として新たな仕事が増えるといった構図だ。

 しかし、こうした期待がいつまで続くかは不確実だ。また、「4月の消費増税を見越した駆け込み需要がある」といった項目も比較的多く挙げられており、4月以降の反動による落ち込みも懸念される。

 一方、アベノミクスによる副作用にも注意が必要だ。経常利益が前四半期と比べてマイナスとなった理由を見ると「円安で原材料や燃料のコストが上がっている」「電気料金の値上げが負担となっている」といった項目が目立つ。大手自動車メーカにとっては追い風となる円安だが、国内の中小企業にとってはコスト負担の増加という悪影響を及ぼしていることがわかる。

 大手製造業が円安などで得た収益は中小の製造業には伝播しておらず、その実態は「取引先がコストに見合う値上げに応じてくれない」という項目にも表れている。

【次ページ】業績が厳しい中でも続けていくべきこと
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