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アマゾンは2022年1~3月期で四半期赤字を発表したのに併せて、フルフィルメントセンターやマイクロフルフィルメントセンターへの投資縮小を明かしました。これにより倉庫自動化への投資も小さくなると考えられます。この記事では、倉庫自動化市場に大きな影響を与え続けてきたアマゾンによる投資方針の転換が市場全体にどう影響を及ぼすのか、世界的な市場調査会社Interact Analysis(インタラクトアナリシス)社による解説を紹介します。なお、マイクロフルフィルメントセンターの市場については、インタラクトアナリシス社の市場調査レポート「
マイクロフルフィルメントセンター(MFC):MFCの新たな活用方法およびオートメーションの可能性の分析(2022年3月)」に詳述されています。
倉庫自動化市場はアマゾンが“シェア4割”
EC市場が成長する中、顧客から注文された商品をより速く届けるために、フルフィルメントセンターやマイクロフルフィルメントセンターが担う役割は高まっています。同時に、より効率的なセンター運営を実現するため、倉庫の自動化に対する需要も拡大しています。
このフルフィルメントセンター(FC:Fulfillment Center)とは、配送や保管、梱包、返品対応、問い合わせ対応といった業務を総合的に手掛ける倉庫を指します。一方、マイクロフルフィルメントセンター(MFC:Micro Fulfilment Center)とは、従来型の大きな倉庫ではなく、既存の店舗や営業所など、顧客の近くにある、5万平方フィート以下の小規模倉庫のことを言います。ここから、最終的な顧客となる消費者に配送します。
アマゾンは配送利便性を向上させるため、これらセンターを拡充するのに合わせてセンターの自動化に投資を惜しむことなく続けてきました。特に倉庫自動化市場には大きな影響を及ぼしています。実際、2021年の米国での倉庫自動化に対する投資総額は、アマゾンが35%以上を占めています(図1)。
このレポートでは、アマゾンの発表が倉庫自動化市場に及ぼす影響と、それが市場全体の成長減速につながるかどうかを検証します。
アマゾンの倉庫面積が「2年で2倍に」
ここ数年間において、新型コロナ(COVID-19)のパンデミックの影響により、ECは大きな成長を遂げてきました。米国国勢調査局のデータを用いたインタラクトアナリシス社の資料によると、米国の小売総売上高に占めるECの割合は、2020年1~3月期の11.9%から4~6月期には16.4%に上昇しています(図2)。
こうした需要の拡大に対応するためにフルフィルメントスペースを拡張する必要性が急速に高まっています。
そこでアマゾンは、倉庫網を拡大してさらなる成長に生かそうと考えました。同社の年次報告書によると、アマゾンの倉庫の総面積は、2019年末の2億7200万平方メートルから2021年末には5億2500万平方メートルに拡大しました。ただし、このすべてが純粋にフルフィルメントに使用されているわけではないことは強調しておかなければなりません。
そしてアマゾンは在庫を保有するためではなく、顧客への配送時間を短縮し、配送の効率化を図るために利用する、配送ステーション網の拡充に注力しています。この倉庫資産の増加は、他のどの小売業者よりも大規模なものとなっています。
しかし、コロナパンデミックによるロックダウン規制が解除されると、消費者にはオンラインショッピングの利用を継続するか、実店舗で買い物をするかという選択を迫られるようになりました。その結果、多くの消費者が以前のように店頭で買い物をするようになりました。その要因は、ECにおける配送料の負担増です。インフレや物価上昇の影響で、配送料を節約して実店舗で買い物をする人が多くなっています。
2022年1~3月期のEC市場の売上高は減少しました。パンデミックが買い物客の選択肢を減らしていなければ、ECの売上高は減少せず、安定的に伸びていた可能性があります。
【次ページ】アマゾンの「2つの赤字要因」と今後の「物流投資」
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