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コロナ禍で多くの産業界が激変していく中、賃貸用の物流センターである「物流不動産」は建設ラッシュと大量供給で隆盛を極めている。その背景には常態化する異次元緩和、行き場のないマネーの優良な投資先、そして巣ごもり需要で急伸するECなどがある。この物流不動産は、その名の通り物流と不動産という2つのビジネスが組み合わさったものであるが、具体的にはどのようなビジネスなのか。本稿では、大きな成長を続ける物流不動産の概要や注目すべき事例などを紹介する。
目前に迫る「物流業界の崩壊」
まず物流業界は、市場規模が約24兆円と大きいものの、物流業界における中小企業の割合はトラック運送事業が99.9%、倉庫業は91%。ほとんどが中小企業で構成されている。
昨今の最も大きな課題はトラックドライバーの高齢化だ。厚生労働省の
調査 によると、大型トラックドライバーの平均年齢は49.4歳、中小型トラックドライバーが46.4歳と、全産業平均(42.9歳)に比べて高い。物流業界は高齢者の割合が高く、各社は血眼となって若いドライバーの募集に努めている。
そのような時代に新たな壁が立ちふさぐ。「
2024年問題 」だ。働き方改革関連法に伴う時間外労働時間の上限規制がトラックドライバーにも適用となるまで残り2年を切った。2024年4月から適用され、時間外労働時間の上限は年間960時間(月平均80時間以内)となる。
トラックドライバーは運転するだけが仕事ではない。納品先や荷物待ちの待機時間、そしてドライバー自らがフォークリフトを操って、荷降ろしを行い、所定の保管場所まで搬送することが多い。また、荷物を載せるためのパレットを利用しない現場もいまだ存在しており、荷物の手積み手降ろしという過酷な作業を1時間以上も行うことがある。
これらも勤務時間とカウントされるのは当たり前だが、残業時間が規制されれば大きな問題が発生する。年を追うごとに労働力不足の深刻さが増しているからだ。物流不動産、倉庫まで荷物を運ぶ人がいなくなってしまうことになる。
こうした厳しい状況に、物流業界の中でも「物流業界の崩壊が目前に迫っている」と叫ばれている。
成長を続ける「物流不動産」とは何か
厳しい事業環境が続く物流の中でも、物流不動産は大幅な市場拡大を続けるビジネスとして注目を集めている。特に昨今では、地上波のCMが数多く放映され、世間の間でも身近な存在として認知されているだろう。CMの舞台となるファンドマネーで建設された大型物流不動産は外環自動車道を中心とした首都圏の高速道路インターチェンジ(IC)周辺で立ち並び、各地で多くの「物流団地」が形成されている。
国土交通省のホームページ では、物流不動産について次のように記載している。
物流不動産とは、物流業務を行うための施設として第三者へ賃貸される、倉庫・物流センター等の建物。
▷物流不動産のビジネスモデルの特徴として、賃貸面積に応じた賃料を収受することで成立することが挙げられる。
(⇔従来型の倉庫業は、輸送・保管量に応じた料金を収受)
▷施設の特徴として、ダブルランプウェイ、免震・制震構造、太陽光発電など、倉庫・物流センターとしての機能拡充に資する最新鋭設備を備えた物件が増えているほか、カフェテリア、託児所など従業員の働きやすさに配慮した物件の開発も進んでいる。
要約すると、物流不動産とは、最新設備を備えた高機能かつ大型の賃貸用物流施設を指す。従来型倉庫との違いは、大型でランプウェイがある点が代表的だ。利用するユーザー(テナント)はテナントの1棟借りであるBTS(Build To Suit:1社専用に開発する物流施設)と、倉庫面積の区割りで賃貸するマルチテナント型の2種類の用途がある。
この物流不動産、報道では賃貸倉庫、メガ倉庫、最新物流施設、超大型高機能型物流施設と称されることもある。表記の統一がなされていない産業ではあるが、それはまだ歴史の浅いビジネスであるからだ。
物流不動産のスタートは2000年代初頭の東京都江東区新木場。この1号案件を手掛けたのが物流不動産専門の米デベロッパー、プロロジスで、日本に進出してきたのは1999年だ。江東区新木場にDHL専用のBTS型物流不動産の「プロロジスパーク新木場」(名称は当時)を開発した。
都心部という好立地に大きな空間を要し、賃貸型として利用できる新たな倉庫のモデルとして展開された。大きな空間という使い勝手の良さなど、そのメリットに気づいたテナントニーズに対し、国内外のデベロッパーは物流不動産にこぞって参入、日本全国の物流適地に大型施設を開発していった。
【次ページ】物流不動産が注目を集めるワケ
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