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- 2017/08/29 掲載
今さら聞けないハイパーコンバージドインフラ(HCI)の基礎 導入で注意すべき点は?
連載:中堅・中小企業市場の解体新書
HCIの仕組み、従来のサーバ仮想化と何が違うのか?
たとえば「ハードウェアが故障した時のために、システムを冗長化しておきたい」といった場合、旧来は業務システム毎にサーバ機器を2台ずつ用意しておくことが必要となるケースもあった。
そこでサーバ仮想化を適用すれば、システムAとシステムBのそれぞれにサーバ機器を1台ずつ用意しておき、どちらか一方のサーバ機器が故障した場合には1台のサーバ機器でシステムAとシステムBを臨時で稼動させるなどの運用が可能になる。
2台のサーバ機器が同時に故障した場合は対処できないが、起きうるリスクと対策に要する費用を比較すると、サーバ仮想化による上記の対策は現実的な解決策の1つといえる。
従来、サーバ仮想化を実現するためには下図の左側のようにFC-SAN/IP-SANといった高度なネットワーク(SAN、ストレージエリアネットワーク)を構築し、複数のサーバ機器から共有できるように設定する必要があった。この複雑なストレージ環境が中堅・中小企業にとってはサーバ仮想化導入の大きな障壁になっていたわけだ。
だが、昨今は下図の右側のように、サーバ機器に内蔵されたハードディスクやフラッシュメモリを共有することで、サーバ仮想化に必要なストレージ環境を構築できるようになっている。これが「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)」と呼ばれる仕組みだ。つまり、HCIとは特定のベンダによる製品名ではなく、サーバ仮想化を従来よりもシンプルに実現する仕組みを指した一般的な用語ということになる。
また、図の右側においてサーバ機器に内蔵されたハードディスクやフラッシュメモリを共有する役割を担うソフトウェアをここでは「HCI基盤ソフトウェア」と呼ぶ。「HCI」とは「IP-SAN/FC-SANが担っていた役割をサーバ内臓のハードディスク/フラッシュメモリとHCI基盤ソフトウェアの組み合わせよって代替する技術」と言い換えることもできる。
HCIを導入する企業は増えたのか?提供メーカーは?
では、HCIは実際にどれだけ導入されているのだろうか。以下のグラフはサーバ機器を導入している年商5億円以上~100億円未満の中堅・中小企業に対してHCIの導入状況を尋ねた結果を2016年と2017年で比較したものだ。導入率は1割未満とまだ少ないものの、いずれの年商帯においても2016年から2017年にかけて導入率を伸ばしていることがわかる。サーバ仮想化そのものは中堅・中小企業にも広く認知されている。それをシンプルに実現する手段という点で、HCIはまったく新しい未知のIT活用分野というわけではない。そのため、上記のグラフが示すように早い段階でも導入を着実に伸ばしているものと考えられる。
また、HCIを提供/販売する側についてもデル、HPE、レノボ・ジャパンなどの外資系ベンダを中心として、価格面などで中堅・中小企業に配慮した製品ラインアップへの取り組みが盛んになっている。
通常、新しいIT活用分野は大企業における導入がある程度進んだ後、しばらく経ってから中堅・中小企業にも波及していくケースが少なくない。だが、上記に述べた諸々の状況を踏まえると、HCIに関しては比較的早く中堅・中小企業においても導入が進んでいく可能性が高いと予想される。
【次ページ】HCI導入で本当に注意するべきポイント
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