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  • 2020/04/06 掲載

ハイパーコンバージェンスとは何か? ガートナーが解説するHCI製品比較のポイント

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クラウドとオンプレを組み合わせるハイブリッド・クラウドが現実解になりつつある。こうした中、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(HCI)をはじめとしたハイパーコンバージェンスが注目を集めている。ハイパーコンバージェンスとはいったい何なのか。さらにHCI製品の特徴、あるいは製品比較のポイント、各ベンダーの状況について、ガートナーのシニア プリンシパル, アナリスト、青山 浩子氏に解説してもらった。
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ハイパーコンバージェンスが注目を集めている
(Photo/Getty Images)

ハイブリッド・クラウドが当たり前の世界になる

 企業がパブリック・クラウドサービスを使うのは、すでに当たり前の時代になった。だからといって既存のオンプレミスのIT基盤をすっかり捨て去るのではなく、適材適所で使い分けるというのが現状ではないだろうか。しかし今後、パブリック・クラウドの適用領域はますます広がっていくだろう。

 次世代クラウド戦略においてはハイブリッドが大前提となり、「オンプレミスかクラウドか」の議論は古いものとなる。この議論をいち早く卒業して「ハイパーコンバージェンス」の取り組みを進めておくことが重要だ。

 ガートナーでは、ハイブリッド・クラウドを「プライベート・クラウドとパブリック・クラウドのサービスを統合しタスクを補完しながら、シームレスにサービスを提供するコンピューティング・スタイル」と定義している。

 ポイントの1つは、ここでいうハイブリッドとは、「プライベート・クラウドとパブリック・クラウドの」ハイブリッドであるということ。複数のパブリック・クラウドを使う「マルチクラウド」や、従来のオンプレミスIT基盤を含む「ハイブリッドIT」とは区別しておく必要がある。

 ほかにも3つ、注意点が挙げられる。1つ目は、ハイブリッド・クラウドでは、“モード2”が前提になること。ちなみにモード2とは、ガートナーが提唱するバイモーダルITのアプローチの種類の話で、固定的なIT環境へのアプローチ「モード1」に対し、変化対応型のアプローチを「モード2」と定義している。

 2つ目の注意点は、ハイブリッド・クラウドではスケーラビリティが重視されるということ。そして3つ目は、従来の概念、統合管理、インテグレーションによるハイブリッドやマルチクラウドとは異なるということだ。

 グローバル、特に北米ではパブリック・クラウドの利用と相まって、オンプレミスのハイパーコンバージェンスの取り組みが盛んになっている。

 ハイブリッド・クラウド実現へのステップとして、オンプレミスの従来型インフラのボトルネックを解消しながら、プライベート・クラウドの環境を整備する。その後に、プライベート・クラウドとパブリック・クラウドをハイブリッドで回すスタイルへというステップを踏むことになる。

ハイパーコンバージェンスとは何か? 3つの価値

 ではハイパーコンバージェンスとは何か。「コンバージェンス」を直訳すると「収束」。これに「ハイパー」が付くから、たとえばハイパーコンバージド・インフラストラクチャ(HCI)とは「超・収束するインフラ」である。ストレージ、コンピューティング、ネットワーキングを1つのシステムに統合することで、複雑性を押さえてスケーラビリティを高める狙いがある。

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ハイパーコンバージェンス(HC)とは何か?

 次世代クラウド戦略における「ハイパーコンバージェンス」の価値は大きく3つある。

 1つ目は、調達・展開の迅速化への対応が可能ということ。「従来型の構築」は推奨されず、アプライアンスや構成検証済みのリファレンス・アーキテクチャを用いて調達や展開のスピードアップが求められる時代に即しているのだ。

 2つ目は、ITリソースの拡張性の良さ。クラウド時代には、ピーク時を見据えて普段は無駄になるハードウェアを用意する必要がない。オンプレミスをハイブリッド・クラウドの境目として意識することなく、しかもリソースバランスの無駄なく自動的に拡張してくれるハイパーコンバージェンスの価値は大きいといえる。

 3つ目の価値は、運用コストの最適化。ハイブリッド・クラウドは、たとえば数千~数万に及ぶコンテナが常に生き死にする世界だ。これを人が管理するのは現実的ではない。ハイパーコンバージェンスが、属人的なシステムを排する役目を果たすことになる。

 ガートナーが2019年2月に日本の企業500社を対象に行った調査によると、ハイパーコンバージェンスを「戦略・施策に含めている」とする企業は全体の4割程度だった。

 顧客企業からハイパーコンバージェンスについての問い合わせを受け、戦略に含めている企業とそうでない企業では、振る舞いに差が出てきていることを実感している。

 戦略に含めている企業は、自社インフラのロードマップの少し先を見て、そこにHCIをどのように有効に働かせていくのかをしっかりと議論している。

 HCIは革新テクノロジーの塊なので、ハイパーコンバージェンスを進めるには大きなチャレンジが求められる。今から戦略的に人やスキルに対しての投資を含めて取り組む企業と、ベンダー任せの企業では、数年先に大きな差が出てくるだろう。

ハイパーコンバージェンスとは何か?それに紐づく主要テクノロジー

 HCI製品を掘り下げると、どれにも基本的に備わっている必須のテクノロジーと、製品ごとにあったりなかったりする任意のテクノロジーがある。

 ベンダー製品を選ぶ際は、テクノロジーごとではなく、「HCIに共通に備わっている特性」に着目して比較検討を進めることが1つのポイントだ。この共通の特性こそが、次世代クラウドにおいて必須のものとなる。

 HCIは革新テクノロジーの塊であるゆえに、1つ1つを個別に見ていくと収拾がつかなくなってしまう。そのHCI製品によって自社の思い描く「次世代クラウドが実現できるか?」を2つの観点で問うことが必要だろう。

 1つ目は、次世代クラウド実現に直接的に貢献するテクノロジーの観点だ。

 たとえば、HCIの中核テクノロジーともいえるSDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)はその1つ。SDSによってストレージのハードウェアは不要となり、リソースの拡張は容易になる。

 日本ではSDSというとコスト削減手段の1つと見なされる傾向があるが、目を向けるべきは、ハイブリッド環境でのSDSというとコストの「生かし方」だ。

 具体的な使用例としては、エッジからパブリック・クラウドに流れてきたデータを、そこで処理し、それが終わったらオンプレミスデータセンターに戻すか、そのままグローバルに配信する。

 その後は、パブリック・クラウド上のサービスはシャットダウンするといった使い方が可能になる。

 各クラウドとオンプレミス、エッジの間を行ったり来たりするような自社のデータ・パイプライン、ハイブリッド・クラウドのワークフローを想定して、SDSの機能や製品ごと違いを押さえておくことが重要になる。

 押さえておきたいテクノロジーとしてもう1つ、統合管理機能と自動化が挙げられる。

 ハイブリッド・クラウドと一口にいっても、つなげる対象やレイヤーはユーザーの目的・実現したいことによって異なる。HCI製品も、ベンダーによってそのカバー範囲や統合度が異なる。

 特に、自動化やDevOps対応はその差が大きい。HCIによる自動化のターゲットは、人が繰り返している定型タスク、人的ミスが起こりやすい箇所から進めるべきだろう。ITリソースの管理は極力自動化し、その上でサービス提供をいかに運営するかが次世代クラウド戦略にとって重要だ。

【次ページ】HCI導入におけるたった1つの注意点
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