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以前に本連載でも
触れたように、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は中堅・中小企業においてもサーバ仮想化を実現するシンプルな手段として注目を集めている。しかし、昨今では「伸縮性を持ったクラウドを活用したい」「業務アプリケーションやミドルウェアの管理負担を軽減したい」と考えるユーザ企業にとってもHCIが重要な選択肢となりつつある。なぜ、HCIがクラウドや業務アプリケーション/ミドルウェアと関連してくるのだろうか?最新の調査データを踏まえながら、その理由を明らかにしていこう。
HCIとは何か?
まず、「HCIとは何か?」を簡単に説明しておこう。
従来、サーバ仮想化を実現するためにはサーバ機器を高価なストレージ機器とつなげる必要があった。ストレージ機器が仲立ちしないと、複数のサーバ機器間で業務システムの情報を共有することができなかったためだ。
一方、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)では、ストレージ機器が担っていたサーバ機器間の情報共有をソフトウェアが担っており、個々のサーバ機器が持つ内蔵ハードディスクやフラッシュメモリを活用して、業務システムの情報を分散管理している。
これによってストレージ機器が不要となり、シンプルな構成でサーバ仮想化を実現できるようになったわけだ。つまり、HCIとは特定のベンダによる製品名ではなく、サーバ仮想化を従来よりもシンプルに実現する仕組みを指した一般的な用語を指す。
HCIの最新動向は?半分以上が導入に前向き
では、HCIの最新動向について見ていくことにしよう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「サーバ更新における今後の方針」と「HCIの活用状況」を尋ね、両者の関連性を集計/分析した結果である。
グラフの選択肢に記載された「オンプレミス形態」とは、ユーザ企業がサーバ機器を購入する場合を指し、月額/年額でサーバを利用する「クラウド形態」と対比して使われる用語だ。HCIもオンプレミス形態に該当する。
グラフを見ると、サーバ更新における今後の方針として「オンプレミス形態を継続し、サーバ機器のベンダを変更しない」と考えるユーザ企業の12.5%はHCIを導入しており、15.4%が導入を計画/予定し、23.4%が導入を検討していることがわかる。
ここで注目すべき点がグラフの下段に示された「クラウドへ移行し、既存ベンダと異なるサービスを採用する」と考えるユーザ企業におけるHCIの活用状況である。クラウドへと移行する方針であるにも関わらず、HCI導入済みの割合は12.3%、計画/予定は16.4%、検討は23.8%に達しており、グラフの上段とほぼ変わらない値となっている。
中堅・中小企業がクラウドを選ぶ主な理由の一つが「サーバ性能を迅速/手軽に拡張または縮退させたい」というニーズだ。一方、クラウドを回避する理由としては、「年額/月額の費用が高い」や「社外出せないデータがある」といった声を耳にすることが多い。では、年額/月額ではなくサーバ機器を購入して社内に設置するオンプレミス形態でありながら、サーバ性能を迅速/手軽に伸縮できる手段があったらどうだろうか?
HCIはサーバ機器を追加したり、取り除いたりすることによって業務システム全体の性能を増強したり、逆に縮小することができる。社内に設置できるので、社外に出せないデータも管理することが可能だ。
つまり、HCIは柔軟なサーバ環境を求めてクラウドを選んでいたユーザ企業にとっても有効な選択肢となりうる。その結果、グラフの下段が示すように、クラウド移行を考えるユーザ企業においてもHCIが受け入れられているわけだ。
したがって、今後は「HCI=サーバ仮想化をシンプルにする手段」という捉え方だけでなく、「HCI=柔軟なサーバ環境を社内に構築できる手段=クラウドの代替手段」といった視点を持っておくことが大切だ。
【次ページ】「HCI」がクラウドや業務システムを変革する理由
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