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昨今、「RPA(Robotic Process Automation)(ロボティック・プロセス・オートメーション)」に注目が集まっている。RPAはオフィス業務における非効率な手作業を自動化する技術だが、「言葉は聞いたことがあるが、詳しいところはよく分からない」といった読者の方も多いかもしれない。そこで、最新の調査データを確認しながら、RPA活用の留意点を考えていくことにしよう。
RPAの実態はソフトウェア
RPA(Robotic Process Automation)には「Robotic = ロボット」という単語が含まれているが、機械仕掛けのロボットが仕事をするわけではない。あくまで、コンピューターが実行するさまざまなデータ処理を自動的に行う「ソフトウェア」であることに注意が必要だ。
Microsoft Excelを使ったことのある方の多くは「マクロの自動記録」という機能をご存じだろう。ヒトが行う操作を記録して、同じ処理内容を繰り返すことのできる仕組みだ。ごく大まかな捉え方ではあるが、これを進化させたものが「RPA」である。
つまり、RPAとは「コンピューター上で行う事務処理を自動化するソフトウェア」を指すわけだ。自動的に仕事をするという意味で「ロボット」という単語が含まれていると理解しておけば良いだろう。また、RPAはデータ処理を担う労力といった意味合いで「デジタルレイバー」と呼ばれることや、ソフトウェアで実現するロボットという観点から「ソフトロボ」と表現されることもある。
まだ限られた用途での活用にとどまる
「RPAによってさまざまな事務処理がどんどん自動化されて、ヒトが要らなくなるのでは?」という懸念を抱く方もいるかもしれない。だが、最新の調査データを見る限り、現段階ではそうした心配はなさそうだ。以下のグラフはRPAを導入している年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「RPAを適用したいと考える用途の数」を尋ねた結果である。
「用途数1」の割合が半数弱の47.6%、「用途数2」は22.9%である一方、用途数が3以上の合計割合は29.6%と3割程度にとどまっている。つまり、少なくとも現時点ではオフィス業務のあらゆる場面が自動化され、ヒトが不要になってしまうという状況には至っておらず、一部の限られたオフィス業務においてRPA活用が進みつつある段階といえる。
現時点では「データ転記」への適用が中心
では、RPAが適用されているのはどのような場面なのだろうか?以下のグラフはRPAを導入している年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「RPAを適用したいと考える用途(複数回答可)」を尋ねた結果のうち、代表的な項目をピックアップしたものである。
「紙面データからの転記」は「紙面で書かれた領収書を精算管理システムへ手作業で入力する」や「紙面で書かれた申込書を顧客管理システムへ手作業で入力する」といった業務が該当する。
「Webサイトからの転記」は「競合他社の製品価格をWebブラウザで検索し、その結果をMicrosoft Excelシートに一覧として整理する」といった業務が該当する。
「Q&Aサイトの自動応答」や「メールの自動返信」は上記の2つの業務とは大きく異なり、質問内容やメール内容に応じて最適な返答を自動的に作成し、答えを返すといった非常に高度なRPA活用に該当する。
上記のグラフを見ると、現段階は「データ転記」の用途が多くを占めていることが分かる。実際、RPAの成功事例として紹介されている事例も「データ転記」が多い。たとえば、大手の銀行業や保険業では、顧客が紙面で書いた申込書が日々大量に発生する。従来は紙面からシステムへの転記をヒトが手作業で行っていた。そこでRPAを活用すれば、紙面をOCR(光学式文字読み取り装置)で読み取り、記載内容をシステムへ自動的に入力することが可能となる。実際、年間で数万時間または数千万円のコスト削減を達成したという報告例もある。
一方、Q&Aやメールの返答を自動的に行うといった高度なRPA活用は日々進化しつつあるが、中堅・中小を含む多くの企業が手軽に利用する段階に至るまでにはもう少し時間を要すると予想される。
したがって、現時点のRPA活用は「データ転記」の用途が主体であり、特に紙面やWebサイトなどからの大量のデータ転記の場合は高い導入効果が期待できる状況となっている。
【次ページ】データから分かる、RPA活用で大事なコト
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