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RPAを始めとするITツールの導入が着々と進んでいるが、日本企業はその先に何を見ているのか。働き方改革の実現や人件費の削減が達成できたらデジタル変革の成功と言えるのか。アビームコンサルティングでRPA導入を支援している戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパルの安部慶喜氏が、同社が会員制情報サイト「RPABANK」を通じて実施した調査や先進企業のトップとの討議状況をもとに解説を行った。
中堅、中小企業でもRPAの導入が進む
アビームコンサルティングの協力の下、会員制情報サイト「RPABANK」は2018年10月~11月、RPAの利用実態調査を実施した。同社は6月にも同様の調査を行っており、「今回は前回と比較してその結果を伝えたい」と安部氏は語り、セッションをスタートさせた。
回答数は772社で、前回よりも50社ほど増えた。1000人以上の大企業からの回答が352社と一番多かったが、300~1000人未満の中企業が225社、300人未満の中小企業が195社と、企業規模にかかわらず、RPAが注目されていることがわかる。
前回と比べて、「いずれの企業規模においても、明らかにRPAの導入は進んでいる」と安部氏は語る。1000人以上の企業で85%、300人~1000人未満の企業で80%、300人未満の企業でも61%の企業がRPAの導入の取り組みを進めているという結果が得られた。
またRPAを本格展開中もしくは完了していると回答した企業の多くが、RPAの専門組織を立ち上げていることもわかった。専門組織の人員は事業部門、IT部門、経営企画の出身者で構成されることが多いという。「企業規模にもよりますが、6~7人で構成されていることが多いです。RPAの推進だけではなく業務部門も入り、その部門全体を巻き込んでの業務改革も進めていきます」(安部氏)
RPAの導入業務については、財務や経理などデータを扱う部署で導入が進んでいる傾向はあるが、まんべんなくさまざまな業務に導入されており、特に11月の調査では、その傾向が顕著になっているという。
採用されているツールについては、トライアル中はデスクトップ型が多く、本格展開になるとサーバ型が増える傾向がある。本格展開時に運用面、機能面で充実しているツールに乗り換えるという意見が多く見られた。
RPA導入時の課題の一番は「開発者不足」
RPA導入の課題についても、前回調査と結果はほぼ変わらず、最も課題として挙げる企業が多かったのは開発者不足だったという。そのほか、「運用・統制ルールの未整備」「ツール自体の課題」「対象業務選定の工数」「業務改革の必要性」「推進組織・体制」など展開時の課題が大半を占めていた。
この課題に対しては、「開発部署の設置や説明会・社内研修の実施、業務プロセスの標準化などによって対応。場合によってはRPAの活用を前提とした最適な業務プロセスを実現するため、業務自体のプロセスを変更しながら展開を進めているケースもある」と安部氏。またツールそのものの課題については、製品切り替えなどにより解決を図っているという。
RPAツールの課題として挙がったのが、「運用管理を利かせたいが、エンタープライズ型のRPAではコスト面での障壁が高い」というもの。そのため機能を抑えた廉価版のRPAを選択したり、RPA導入を断念したりするというケースもあった。その課題を解決するため、RPAツールベンダー各社は新しいサービス展開を開始している最中にあると安部氏は語る。
【次ページ】「デジタル改革の成功」を定義せよ、ただツールを導入すればよいのか
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