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  • 2018/11/13 掲載

その経営課題、本当に「人工知能」「RPA」が最善か? 判断軸は「3つ」ある

連載:中堅・中小企業市場の解体新書

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中堅・中小企業がIT活用を検討する際に直面する悩みの一つが、「ある経営課題の解決策として、ITが本当に最善の選択なのか?」という問いかけだ。たとえば、働き方改革に伴う残業抑制に取り組もうとした場合、「経営コンサルティング」を受けて管理職や社員の意識を変えるべきなのか、それとも「業務システム改善」を行って効率化を図るのか。それを判断することは容易でない。だが、調査データをひもといて見ると、そのヒントが見えてくる。
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経営課題の解決にはテクノロジーが不可欠、というのは誤解かもしれない
(©takasu - Fotolia)


経営課題を解決する手段はひとつではない

 中堅・中小企業が何らかの経営課題を解決しようとする場合、その手段にはいくつかの選択肢がある。冒頭で述べた「経営コンサルティング」や「業務システム改善」もその一つだ。さらに自社でカバーできない業務を外部に委託する「業務アウトソーシング」や外部から人材を供給する「人材派遣サービス」といった方法も考えられる。想定される手段を整理してみると、おおむね以下のようになる。

経営コンサルティング:
経営層や管理職を対象としたセミナー講習や対面相談を利用する

業務アウトソーシング:
必要とされる業務の実施や遂行を外部の専門業者へ委託する

人材派遣サービス:
必要とされる業務を担う人材を外部の業者から派遣してもらう

業務システム改善:
業務システムを更新/刷新することによって、生産性を向上させる

業務フローの見直し:
業務の流れや慣習を見直すことによって、生産性を向上させる

 上記の選択肢の中で「IT活用」に最も直結するのは「業務システム改善」である。さらに、「業務フローの見直し」についても、見直しの結果として業務システムの導入につながる可能性がある。だが、他の選択肢については必ずしもIT製品/サービスの導入を伴うとは限らない。

 逆説的ではあるが、ITを賢く活用するためにも「IT以外の選択肢があることを理解する」ことがまず大切だ。

「働き方改革」に絶対のベストプラクティスはない

 では、実際に多くの中堅・中小企業はさまざまな経営課題において、どのような手段を選んでいるのだろうか?以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、さまざまな経営課題について、どのような解決策が必要と考えているか?を尋ねたものだ。(解決策として挙げた選択肢は先述の通り)

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社会情勢や法制度の変化に伴って必要と考える取り組み

 グラフ中に掲載された4つの経営課題(社会情勢や法制度の変化)の説明は以下の通りだ。

「働き方改革に伴う残業時間の上限規制遵守」
36協定の特別条項として許されていた無制限での残業が禁止となり、上限が設けられる

「働き方改革に伴う同一労働同一賃金の実現」
正社員と非正規労働者の待遇(給与や福利厚生など)に差が生じないように求められる

「インバウンド需要拡大(外国人観光客の増加)」
外国人観光客の増加に伴い、外国語で対応できるサービス体制の整備などが求められる

「AIなどの最新技術が労働環境に与える影響」
AI(人工知能)などを活用することでヒトに頼っていた業務が自動化されていく

 「働き方改革に伴う残業時間の上限規制遵守」に向けた取り組みとしては「先に退社するのが気まずい」という日本固有の企業文化に焦点を当てて、それらを是正することを目的とした「経営コンサルティング」の提案も少なくない。

 だが、上記のグラフが示すように実際は「業務フローの見直し」を望む中堅・中小企業が最も多くなっている。中堅・中小企業は人員数も限られるため、企業文化を変えたとしても業務を効率化しない限り残業を削減することはできない。そのため、解決策として「業務フローの見直し」を挙げる割合が高くなるわけだ。

 一方、同じ働き方改革関連でも「働き方改革に伴う同一労働同一賃金の実現」では「業務フローの見直し」を挙げる割合が10ポイント以上低く、「業務アウトソーシング」や「業務システム改善」といった解決策の割合がやや高くなっている。働き方改革の主旨に添えば、中堅・中小企業においても非正規労働者の正規雇用への転換やそれと同等の待遇改善が進むことが望ましい。

 しかし、上記のグラフを見ると、非正規労働者が担っていた業務を「業務アウトソーシング」で補う、もしくは「業務システム改善」による効率化を進めて少ない労働力でカバーする、といった取り組み方針が垣間見える。

 「働き方改革に伴う残業時間の上限規制遵守」の施行が2020年4月(大企業は2019年4月)と間近に迫っているのに対し、「働き方改革に伴う同一労働同一賃金の実現」の施行は2021年4月(大企業は2020年4月)と少し先(東京オリンピック後)になる。そのため、まだ対策を本格的に検討していない中堅・中小企業も多いかもしれない。

 だが、上記の結果からも分かるように、同じ「働き方改革」関連の法制度でも、中堅・中小企業が取るべき対策は異なってくる。「働き方改革」という総称でひとくくりにしてしまわずに、個々の法制度によって何が変わるのか?を把握しておくことが大切だ。

【次ページ】「ITが最善かどうか?」を判断する3つの軸
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