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日本の低い労働生産性への特効薬としてデジタル労働者、デジタルレイバーとしてのRPAが期待されている。RPAやAI、ロボティクスなど最新技術への懸念として「人の仕事が奪われる」という声も上がるが、実際はどうなのか。デジタル労働者によって、働き方にどのような変化が見られるのか。RPAのリーディングカンパニー5社が議論した。
パネリストとして登壇したのは、RPAテクノロジーズ 大角暢之氏、エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ) 大塚貴徳氏、Blue Prism 千原寛幸氏、オートメーション・エニウェア・ジャパン 杉原博茂氏、UiPath 田邊智康氏の5人。ファシリテーターをアビームコンサルティング 安部慶喜氏が務めた。
低迷する生産性にRPAはどんな効果を与えられるのか
(アビームコンサルティング 安部慶喜氏)──日本の生産性が低迷しており、G7の中でも最低と言われています。その根本原因と、その課題に対してRPAはどんな貢献ができるのでしょう。
RPAテクノロジーズ 大角暢之氏:日本の労働生産性が低い、G7の中で最下位と言われますが、これは好景気だった1970年からのことなので、今に始まったわけではありません。
労働生産性は分母が就業者数、分子がGDP、もしくは分母が労働時間で、分子が付加価値で表されます。労働生産性が低くなるのは、「属人的でおもてなし精神にあふれている」という日本人の特性が一つの要因だと考えられます。おもてなしの時間は労働時間に加算されますが、売上には転嫁されません。そのため、社員1人当たりの粗利が低くなる。ある意味仕方のない部分です。
労働生産性の低下の危機的要因は地方にあると捉えています。「生産人口の激減」「高齢化」「若者の流出」というトリプルネガティブインパクトに見舞われており、日本人の強みが生かされない指標の中でさらに生産性が悪化していく状況にあります。
ネガティブインパクトの第1、生産人口の激減はRPAによって誕生するデジタル労働者、デジタルレイバーで解決できます。業務を代行するだけではなく、私たち人間よりも何十倍も休みなく働くことができ、レバレッジが効きます。
第2、第3のネガティブインパクトは付加価値の問題です。社員1人当たりの粗利が指標化されておらず、イノベーションが生まれにくい環境になっているのです。そこで売上にかかわる領域にもデジタルレイバーを活用していく。
これはRPA活用の第二段階ですが、このようことはすでに起こっています。たとえばオリックス損保はデジタルレイバーの導入により、3年前と比べて売上が1.5倍になり、かつ分母の労働時間を1時間短縮して、賃金のベースアップも実現しました。生産力だけではなく収益を上げ、日本特有の強みをしっかり生かしていく会社が続々と誕生しています。
──今は社内のコストを下げるところにRPAを活用しているが、今後は事業に転嫁させる部分へとRPAの活用が進化していくということですね。RPAの国内市場は伸びています。その一方で、人の仕事がロボットに取って変わられるという不安が蔓延しています。ロボットが人の仕事を奪うのでしょうか。
UiPath 田邊智康氏:結論から言うと、「奪われません」。労働人口が減少しており、今でも人材不足が叫ばれていますが、20年後にはさらに足りなくなります。この状況の中で、いかに国の成長を維持するため、企業が今の人員より少ない人員で今の活動水準をどうキープするかという時が来ます。
この労働力不足を解決する方法の一つがデジタルレイバーの活用です。人とシステムとデジタルレイバーを経営資源として、いかに配分していくかが、今後のビジネスを行っていく上で重要な戦略になると思います。人を守りではなく、生産性向上につながる攻めの分野に配分できるかがポイントだと思います。
【次ページ】“RPAは明治維新”のワケ、従来のシステムとの違いはなにか
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