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  • 2018/08/31 掲載

RPAやデータ分析が「スマートデバイスと密接につながっている」ワケ

連載:中堅・中小企業市場の解体新書

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スマートフォンやタブレットなど「スマートデバイス」は広く普及してきており、外出時にメールや文書を確認する手段として活用している方も多いだろう。一方、昨今では情報化/デジタル化が日常生活に浸透する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と呼ばれる動きに注目が集まっている。たとえばデータ分析やRPA、AI活用がその代表的な例に当たる。実はこの変化が企業のスマートデバイス活用にも影響を与えつつあることをご存知だろうか。情報化/デジタル化が進む時代に即したスマートデバイス活用とは何か、市場調査データを元に見ていく。
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もはやスマートデバイスを導入する理由は「安いから」「軽いから」ではない
(©peshkov - Fotolia)

「安さや手軽さ」理由のスマートデバイス導入は頭打ち

 以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「スマートデバイスを利用する理由」を尋ねた結果のうち、主要な4つの選択肢の値をプロットしたものだ。ただし、各選択肢の値は「スマートデバイスを導入する予定の企業群における回答割合」から「スマートデバイスを導入済みの企業群における回答割合」を引いたものになっている。

 つまり、プラスになっている選択肢は「これから増える導入理由」、マイナスとなっている選択肢は「これから減っていく導入理由」ということになる。

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スマートデバイスを利用する理由の変化

 まず、マイナスとなっている選択肢から見てみよう。スマートデバイスが登場した当初は「タブレットをノートPCの代わりに使えば、端末費用を抑えられるのではないか」と期待する動きもあった。これがグラフ中の「スマートデバイスの方がPCよりも安価である」という導入理由に該当する。

 また、スマートデバイス向けには多数の無料アプリケーションが提供されており、インターネットを介して手軽にインストールすることができる。簡易なメモ、スケジューラ、リマインダなどを活用している方も少なくないだろう。グラフ中では「無料のアプリケーションを手軽に併用できる」という導入理由がこれに該当する。

 しかし、日々利用するPCにはスマートデバイスに対応していない業務アプリケーションも数多く存在する。そのため、端末の価格が安かったとしてもタブレットをPCの完全な代替とするのは難しい場合も多い。また、無料アプリケーションには個人での利用を想定したものも多く、データ連携やセキュリティ設定といった面で業務用途に適さないこともある。

 もちろん、「高度な仕組みを用いてタブレット上にPCと同じ環境を再現する」「セキュリティ対策を講じて無料アプリケーションを安全に利用する」などの取り組みも不可能ではない。だが、本来の目的であった「安さや手軽さ」を考えると、中堅・中小企業にとっては敷居の高い選択となってしまう。そのため、これら2つの選択肢は「これから減っていく導入理由」となっているわけだ。

スマートデバイス導入の裏にRPAやデータ分析あり

 では、「これから増えていく導入理由」として挙げられた2つの選択肢を見てみよう。

 1つ目は「PCだけでは顧客との接点が狭くなってしまう」という導入理由だ。この理由によってスマートデバイス対応の必要性が意識されている分野が「RPA(Robotic Process Automation)」である。RPAとは「複数の店舗から送られた売上報告を1つのシートにまとめる」や「競合他社の価格をWeb上で検索して一覧表にまとめる」などの業務作業を自動化する仕組みを指す。

 日々の業務には「ヒトにとっては退屈な繰り返しの作業だが、従来の業務システムで処理することができない」という場面が意外と多かった。ヒトが行っている作業を記憶して再現するなどの仕組みによって、こうした作業を自動化するのがRPAというわけだ。

 たとえば、「Webサイトで商品Aを見た顧客に対して、商品Aのキャンペーン時に案内メールを送る」といった処理もヒトの手作業ではミスや忘れが発生する恐れがある。これをRPAで自動化しようとした時、顧客側はWebサイトやメールをスマートフォンで見ているかもしれない。特に若い世代では日常生活における情報収集手段としてPCよりスマートフォンを用いるケースが多いと言われている。

 したがって、「RPAによる業務の自動化」に取り組む際はPCだけでなくスマートデバイスも考慮しておかなければアプローチできる顧客層が限られてしまう。これが「PCだけでは顧客と接点が狭くなってしまう」というスマートデバイス導入理由が生じる具体的な根拠である。

 2つ目は「業務上、携帯性に優れた端末が必要である」という導入理由だ。この理由が多く挙げられるIT活用分野は幾つかあるが、中でも興味深いのは「店舗における顧客動線分析」である。これはカメラやセンサーを店舗に設置し、顧客が店内をどのように歩き回るか分析することで、商品の配置を最適化するという取り組みである。

 この場合、「なぜ、スマートデバイスが必要になるのか?」と疑問に思われるかもしれない。実は重要な点は「分析を行った後に何をしなければならないか?」という点にある。

 顧客の動線は時間によって刻々と変化する。分析の結果を生かすためには、変化する顧客の動きに合わせて商品の配置を換える必要がある。そのためには、店舗裏の倉庫からも「今はどの商品を出すべきか?」を即座に確認できる機動性が欠かせない。この業務を担う端末としては携帯性に優れたスマートデバイスが適しているということになる。これが「業務上、携帯性に優れた端末が必要である」というスマートデバイス導入理由が生じる具体的な根拠である。

 ここで述べた「RPAによる業務の自動化」や「店舗における顧客動線分析」はヒトの手作業や経験が担っていた部分を情報化/デジタル化するという観点に立てば、まさに「デジタルトランスフォーメーション」にほかならない。

 そして、デジタルトランスフォーメーションに取り組んだ結果として「PCだけでは顧客との接点が狭くなってしまう」「業務上、携帯性に優れた端末が必要である」といったスマートデバイス導入理由が新たに生じるわけだ。「これから増えるスマートデバイス導入理由」は「デジタルトランスフォーメーションへの取り組み」によって生まれてきているといえるだろう。

【次ページ】データで理解する、スマートデバイス利用の課題
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