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  • 2017/12/19 掲載

RPAで20人月分の工数を自動化、オリックスが大きな成果を出せたワケ

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リース事業を起点に法人金融や不動産、事業投資など幅広いビジネスを展開するオリックスグループは2009年、前年に発生したリーマンショックを受けて、バックオフィス/ミドルオフィスの改革というテーマを打ち出した。それに伴い、同グループのシェアードサービスセンターとして活動するオリックス・ビジネスセンター沖縄(以下、OBCO)では、生産性革新を目指すプロジェクトに着手、労働時間の削減や働き手の多様化など大きな成果を生み出した。
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オリックス・ビジネスセンター沖縄(OBCO)
企画開発部 部長の喜舎場信江氏

生産性管理を起点に働き手の多様化まで進化

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 1999年11月にオリックスの100%出資で設立されたOBCOは、グループ企業12社から27種類の直接業務を受託している。ここでいう直接業務とは、たとえば法人向け金融サービスの与信申込の受付や契約条件の確認、あるいはメンテナンスリース事業で注文書・売買契約書の作成などで、ミドルオフィス/バックオフィスの“営業アシスタント的”な業務を指している。

 従業員数は2017年4月1日現在で808名、男女構成比は女性9に対して男性が1で、圧倒的に女性の比率が高い。「第12回 BPMフォーラム 2017」で登壇した企画開発部 部長の喜舎場信江氏は「これが後々の働き方改革につながる我々の大きな特徴」と説明する。

「小さな子供を持つ女性が多い職場では、時間外の仕事が難しいといった状況が多々発生する。そのため我々の社風の中には、皆で助け合って早く帰ろうという雰囲気が以前からあった」

 OBCOでは2009年から生産性革新のための「ECOまる活動」を開始、喜舎場氏は「まさにBPM活動と同じ主旨の活動」だと説明する。ちなみにECOまる活動のECOは、地球に優しいエコなどを意味し、まるは沖縄の方言で“ゆいまーる(=相互扶助)”に由来する。喜舎場氏曰く「ECOまる活動という名前は、効率を上げて、皆で早く帰るぞという思いを込めたもの」とのことだ。

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ECOまる活動の概要

 ECOまる活動は、まず“どうやって生産性を上げていくか”という『生産性管理』への取り組みから始まった。

「オリックスの業務改革室が主体となって外部のコンサルティング会社も加え、我々はプロジェクトメンバー3名をアサインして、共同で生産性の見直しに着手した」

 その際の目玉となったのが、“すべての業務を可視化”することだ。そのためには“業務計測”も必須となる。同時に業務計測も開始した。

 こうした生産性向上のための施策を土台として、2015年からは『働き方の多様化』にも乗り出し、新たに常時/随時の在宅勤務制度と、民間企業では珍しい1時間単位での有給休暇制度も導入した。あわせてBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)フローも全社で統一した。

 そして2016年には、働き方の多様化から『働き手の多様化』へと軸足を移していく。この取り組みの中には、クラウドワーカーやRPA(Robotic Process Automation)などの活用も含まれている。

すべての業務を書き出すところから始まったECOまる活動

 ECOまる活動の第一段階である生産性管理のフェーズでは、まず業務を漏れなく書き出し(=可視化)、リアルタイムで計測し(=計測)、業務の繁閑差や生産性のバラつき、業務単位のコスト・KPIなどを明らかにして(=分析)、チームを超えた支援体制の構築や数値に基づく改善提案を行う(=改善)というPDCAサイクルを回していくことが主体となる。

「たとえば計測なら、1日の勤務時間の業務内訳を、アルバイト/派遣社員を問わず全従業員分、毎日計測する。そしてその計測結果を分析して、業務の繁閑調整やスキルのミスマッチを改善していく。我々はこうした一連のPDCAサイクルを現在に至るまでの8年間、ずっと回し続けてきている。これがECOまる活動のベースとなるもの」

 ここで喜舎場氏は、自社開発したという業務計測ツール「ECOまるアーツ」を紹介した。ECOまるアーツは、OBCOの従業員が出社すると最初に必ずログインするシステムで、トップ画面はチーム単位でリアルタイムの稼働状況が見える構造になっている。

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ECOまるアーツのトップ画面

 たとえば画面上には、計測単位となる業務ごとに現在の処理状況が表示されており、各業務に対して処理予測件数や基準パフォーマンス(=基準となるメンバーの処理能力)といった項目が割り当てられている。チームリーダーは、今日はこれぐらいの処理件数が入ってくるだろうという予測数字をあらかじめセットし、基準パフォーマンスを元に当日アサインできる人数を入力する。そうすると、本日の終了予定時刻が自動表示される。

「ここで終了予定時刻が14時頃となっていれば、業務時間内に終わるので問題はないが、22時と表示されると、それまでは帰れないということになる。そこでチームリーダーはこの終了予定時刻を睨みながら、他のメンバーの支援を手配する。また各メンバーの実績が、基準パフォーマンスより上なのか下なのかも分かるようになっているので、その状況を見ながら個別にスタッフの指導も行っている」

 こうした業務計測と関連付けて、喜舎場氏は2015年から全社展開したBPMNフローについても言及した。

 「2009年から業務計測を続けてきた我々にとって、業務プロセスを定義してビジュアル化するBPMNフローは、概念的な互換性が非常に高かった。業務プロセスのスタートから終わりまでを図面に書き出したBPMNフローの各プロセスは、我々の計測対象となる業務プロセスにほぼマッチする。それによって、BPMNフローの中で示されたこの業務は、1件当たり10分かかっているというような説明も容易になった」

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BPMNを用いた業務改善

 OBCOでは、BPMNフローを27チーム分、すべて揃えており、さらに全体業務フロー(プロセスレベル5)を起点として→詳細業務フロー(プロセスレベル6)→詳細業務手順(プロセスレベル7)というようにプロセスの粒度を細分化して、業務改善につなげるという取り組みも展開している。

「プロセスを細分化していくことで、外に出せるプロセスもより細かく定義できるようになる。その意味でBPMNフローは、後で説明するRPAやクラウドワーカーを活用する際の非常に重要なツールだとも言える」

難易度の高い業務でも一部を定型業務化して再配置

 こうして業務プロセスを細分化して計測することで、OBCOでは定型化が難しく、難易度が高い業務が、全業務の約30%になることが分かったという。

「しかし、そんな業務でもよくよく眺めてみれば、さらに細かく分解することができる。たとえば決裁業務は、東京でなければできないと何度も言われてきたが、実は受付→不備確認→可否判断(選択)→決裁処理というさらに細かい4つのプロセスに分解できる。この詳細レベルで改めて難易度を考えてみると、受付は難易度低、不備確認と決裁処理は中、可否判断は高となる。このうちの少なくとも受付は定型業務化できるのではないか。こうして今まで属人的だと思われていた業務も細分化することで、最適配置が可能となる。現在我々はこの視点に立って業務設計を行っている」

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難易度が高いと思われていた作業も細分化で最適配置が可能に

 また業務の可視化によって、チームごとの稼働率の推移や、各メンバーの業務処理量のバラつきも見えるようになった。これによって、たとえば月末/月初が忙しいチームと、月中が忙しいチームが双方で応援支援体制を敷くようになり、またチームの平均業務処量を下回っているメンバーに対しては、リーダーがどこで詰まっているのかを確認しながら、スキルアップを図っている。

 こうしたECOまる活動は、1人月当たり11時間(×808名分)の労働時間の削減へとつながった。そしてOBCOでは、創出した余剰時間を新規業務の受け皿とし、さらにRPAを活用するなどの新しい取り組みを考え、活動する時間に充てている。

 またECOまる活動は、働き手の多様化の促進にも効果を及ぼしている。業務プロセスを細分化して非定型業務の一部を定型業務に移行していくことで、これまで社員しかできなかった仕事を、RPAやクラウドワーカーなどにもシフトすることができるようになった。

【次ページ】働き手の多様化に応えるためRPA活用を開始
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