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- 2021/10/25 掲載
製造業や運輸業で「ローカル5G」はどう活用すべき? 調査で分かった業界別の期待分野
連載:中堅・中小企業市場の解体新書
ローカル5Gと通常の5GはLANとインターネットの関係に似ている
5Gは高速/大容量、低遅延、多数同時接続といった利点を持つネットワーク環境を実現する手段として注目を集めている。たとえば、製造業では「製造ラインに設置した多数のセンサーからリアルタイムに情報を収集し、生産性や品質の向上に役立てる」といった活用が期待できる。運輸業であれば、「荷物やパレットに装着したセンサーから得た商品情報や位置情報を用いて倉庫内のピッキング処理を効率化または自動化する」などが考えられる。一方、外出中にスマートフォンでWebサイトや業務システムを利用する際、一時的な混雑による遅延や切断を経験された方も多いだろう。こうした混雑による影響は5Gにおいても少なからず発生する。つまり、単に現状の4G回線を5G回線に切り替えるだけでは、遅延や切断が許されない上記のような業務シーンには適用しづらいという課題が残る。
そこで注目を集めているのが「ローカル5G」である。大手キャリアが提供する5G回線とは別に特定の地域内/敷地内に限定して基地局を設置し、専用の5G回線を利用できる仕組み/制度を指す。インターネットとLANの違いを大手キャリアが提供する5G回線とローカル5Gに当てはめてみると分かりやすいかもしれない。
図1のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、ローカル5Gの導入意向を尋ねた結果である。
通常、IT関連の新たな技術は年商規模の大きな企業層から低い企業層に徐々に波及する。だが、上記のグラフを見ると、5Gの導入意向は年商5億円未満や年商5~50億円といった比較的小規模な企業層で高くなっている。
冒頭で述べた活用シーンのように、工場や倉庫といった限られた範囲内で高い品質の無線接続が求められる場面は小規模な企業層で意外と多く見られる。ローカル5Gは中堅・中小企業、特に小規模な企業層が恩恵を受けられる新たなIT活用でもあるわけだ。
本業に直結する重要な業務シーンに適用すべき
「ではローカル5Gを導入して、まずメールやスケジュールといった手軽な用途から使ってみよう」と考えがちだが、実際にはそうしたお試し導入は現実的ではない。ローカル5Gを利用するということは、企業が基地局を設置して無線接続環境を提供する立場となることを意味する。そのため、限定された範囲内であっても免許取得などの手続きが必要となる。さらに、5Gに対応した各種のセンサーや収集したデータを活用するための業務システムなども必要となる。その結果、企業がローカル5Gを適用すべき場面はメールやスケジュールの参照ではなく、本業に直結した業務シーンとなってくる。
つまり、ローカル5G活用を検討する際には「自社の収益を支えている本業は何か?その本業において高品質な無線接続が必要となる場面はどこか?」をまず明らかにする必要がある。
こうした検討過程は業種によって大きく異なってくるだろう。そこで、以下では製造業(組立製造業)と運輸業を例として、ローカル5Gを導入する際のポイントを探っていくことにする。
【次ページ】組立製造業で期待されている活用シーン
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