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企業がIT基盤のシステム形態を選択する際、従来は「生産管理などの基幹系システムは自社設備(オンプレミス)が適している」「グループウェアなどの情報系システムはクラウドが適している」と言われることも多かった。ところが、DX時代にはこうした経験則が必ずしも当てはまらなくなってきている。3つの視点を基に、調査を通じて「最適なシステム形態とは何か」考えていく。
システム形態を考える上で基本となる3つの視点
企業がシステム形態を考える際には大きく分けて、「ハードウェアの視点」、「アプリケーションの視点」、「設置場所の視点」がある。
ハードウェアの視点:
サーバやストレージといった基盤環境を企業が「購入」するのか、それともサービスとして「利用」するのか?
アプリケーションの視点:
さまざまな機能を実現するソフトウェアを「パッケージ」として購入するのか、「サービス」として利用するのか?あるいは「独自開発」として個別にシステムを構築するのか?
設置場所の視点:
企業が自社のオフィス内や自社で管理する設備に設置するのか?(「自社設備」)、または専門の業者が運営する「データセンタ」に設置するのか?
従来は
- アプリケーションが「独自開発」の場合には、ハードウェアは「購入」で、設置場所は「自社設備」
- アプリケーションが「サービス」の場合には、ハードウェアは「利用」で、設置場所は「データセンタ」(主に「SaaS」に該当するケース)
といった組み合わせが多かった。
だが、「IaaS」であれば、サーバやストレージをサービス形態で利用し、その上で稼働するアプリケーションは企業側が自由に構築することができる。つまり、アプリケーションは「独自開発」、ハードウェアは「利用」、設置場所は「データセンタ」という組み合わせも珍しくなくなってきているわけだ。
一方で、パッケージのライセンスも「購入」から「利用」へと多様化してきている。その結果、アプリケーションは「サービス」、ハードウェアは「購入」、設置場所は「自社設備」という組み合わせも十分あり得る。
サービスとして利用する場合、設置場所が必ず社外になるとは限らない。また同様に、独自開発であることが必ずしも社内への設置を意味するわけではない点に注意しよう。
働き方改革・人材不足に取り組む企業が選んでいるシステム形態は?
DX時代に向けて中堅・中小が取り組むべきIT活用にはさまざまな領域があるが、特に重要度が高いのが働き方改革や人材不足に対処するための取り組みだ。大企業に対してはすでに2019年4月から長時間労働の上限規制が施行されており、2020年4月からは中小企業庁の定義に基づく中小企業も対象となる。少ない労働時間で多くの成果を挙げる必要があるため、ITを活用した業務の効率化が不可欠となってくるわけだ。
では、上記のような取り組みに適したシステム形態とは何だろうか?以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「働き方改革や人材不足に対処するIT活用における望ましいシステム形態」を尋ねた結果である。
ハードウェアにおける「利用」の割合は一部にとどまっており、「購入」が過半数を占めている。そもそもハードウェアで「利用」を選択する最も大きな背景は、サーバ/ストレージの性能や容量を柔軟かつ迅速に増減したいというニーズだ。だが、中堅・中小企業のIT活用全般でそうしたシステム環境を必要とするケースはまだそれほど多くない。そのため、依然として「購入」が多くを占めているわけだ。
アプリケーションについては「パッケージ」と「サービス」の割合が同程度となっており、「独自開発」の割合がやや低くなっている。大企業だけでなく、中堅・中小企業においても自社の業務内容と密接に関連したシステムでは「独自開発」が選択されることも多い。だが、働き方改革や人材不足へのIT活用では法制度への対応も重要となる。その点では、バージョンアップやサービス更新によって法制度変更に追随できる「パッケージ」「サービス」が有利となる。こうした背景もあって、「パッケージ」「サービス」の割合が相対的に高くなっていると考えられる。
設置場所では「自社設備」より「データセンタ」の方が高い割合を示している。働き方改革や人材不足に対処するためには、社外からも利用できる業務システムが必要となることが多い。「自社設備」の場合にも社外から利用することは可能だが、離れた場所からも遅延なく安全にアクセスできる環境を自力で整えることは容易でない。それらを専門業者に任せた方が良いと考える企業が多いことを上記のグラフは示している。
まとめると、中堅・中小企業が働き方改革や人材不足に対処するためのIT活用で選択するシステム形態として、ハードウェアは「購入」、アプリケーションは「パッケージ」または「サービス」、設置場所は「データセンタ」という組み合わせが比較的多くなっている。
【次ページ】「チャット活用」を例に考える、システム形態選びの“盲点”
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