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- 2025/04/21 掲載
なぜ、福岡銀・山口銀は好調?逆境でも…「法人ローン」を伸ばせる“賢い戦略”
連載:「地銀」ビジネス最前線(第4回)
法人向けローン好調、特需に沸く「数少ない地銀」
足元では、米国トランプ政権による関税政策による影響を注視する必要があるものの、国内では、半導体工場の新設、大阪万博の開催やインバウンド増加による観光地での開発需要、スタジアムやアリーナの新設などを背景に、大都市圏だけでなく地方でも地価上昇が続くなど明るさを戻りつつある。たとえば、台湾の大手半導体企業TSMCが半導体工場を新設する熊本県では、新たな雇用が創出されたことに伴い、地価上昇やインフラ整備が進むなど活況に沸いており、地銀にとっても千載一遇のビジネスチャンスとなっている。
そうした中、たとえば、九州フィナンシャルグループ傘下の肥後銀行では、台湾の玉山銀行との業務提携、半導体クラスター推進室や台北駐在員事務所を開設。内外の旺盛な資金需要に対応し電子デバイス関連融資は累計970件、1,873億円(2024年9月末)に達している。
台湾最大規模の民間金融機関である台湾CTBC Bank(中國信託商業銀行股份有限公司)傘下の東京スター銀行は、2024年8月に熊本オフィスを出張所に格上げするとともに、中国語人材を積極的に採用し配置することで、TSMCとともに熊本などに進出してきた関連企業や台湾からの駐在員向けに金融サービスを展開している。
また、北海道千歳市では、次世代半導体の国産化を目指すラピダスの進出に伴い、地元の北洋銀行では、成長戦略企画室の人員増員などにより、道内外企業の設備・インフラ支援、マッチングに努めている。半導体関連融資は、累計270億円(2024年9月末)から、2027年度には約2,000億円を見込んでいる。
どれだけ苦しい?「特需ナシ」の地銀のリアルな現状
もっとも、残念ながら、熊本や千歳のように日本全国で貸出先や貸出金が、この先大幅に増加する可能性は低いと見ている。半導体特需に沸く北海道や熊本など一部を除けば、全国各地で設備投資や運転資金が必要になるほど、日本の景気が良い訳ではないからだ。日銀の利上げを背景に、金利上昇による銀行の収益増加が期待されているが、日本では、預金が有り余っており、貸出先に乏しい状態が続いているほか、融資を受ける取引先企業にとっても利上げは利払い負担の増加を意味することから、今後、貸出が大きく伸びていく状況は予想しにくい。
2024年の倒産件数が11年振りに1万件を超える(東京商工リサーチ)など、物価高や人手不足に金利負担が加わることで、足元の倒産増加傾向とあわせ、この先銀行の不良債権が増えていく可能性もある。また、金利が上昇すれば、国債など債券価格は下落し、その分、銀行は含み損を抱えることになる。
このため、特に、地銀の主要取引先である地元の中小企業向けローンにおいては、金利の引き上げは容易ではなく、拙速にこうした貸出金利を引き上げれば、取引先企業の業績が悪化し、場合によっては、不良債権化することで結局は地銀の業績や地域経済の悪化に跳ね返ってくることにもなる。
苦戦する地銀が実践している「3つの逆転戦略」
それでは厳しい環境下で、地銀はどうすれば良いのだろうか。地銀は、引き続き地元の中小企業向けローンなどを主力にしながらも、「金利ある世界」となっても、貸出需要がすぐに伸びるような環境にはなく、日々集まり積み上がってくる預金により預金貸出ギャップの解消には至らない状況が続いている。一方で、人口減少や過疎化による地元経済の縮小、異業種の金融進出やデジタル化の進展による顧客の地銀離れは現在進行形で進んでいる。
このため、大手地銀などを中心に、収益の多角化の観点からも、(1)ストラクチャードファイナンスなど専門金融での貸出を増やす、(2)シップファイナンスを増やす、(3)東京など首都圏や隣接他県の貸出を増やす、といった対策が取られている。
ここからは、苦しい環境下で、(1)~(3)の取り組みにより、成果を出している地銀の事例を解説する。
逆転戦略(1):専門金融で成果出す “ある地銀”
ストラクチャードファイナンスとは、再生可能エネルギーのプロジェクトや航空機などの資産、不動産など、企業の将来の事業収益や資産価値を返済原資として資金を調達するファイナンス手法の総称である。ストラクチャードファイナンスには、プロジェクトファイナンスやLBOローン、不動産ファイナンス、PFIなどが含まれる。
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