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国内市場でもHCI(ハイパーコンバージドインフラ)の導入が加速している。導入メリットに対する認識が定着し、HCIに対する期待は高まる一方だ。ただし、それはまだ序章にすぎない。大半のケースは部分的な導入にとどまっており、ITインフラ全体の変革には至っていない。一部のユーザーの間では、HCIへの期待と現実とのギャップも明らかになりつつある。IDC Japanの宝出幸久氏が、調査結果を基にしたHCIの利用動向や市場予測を解説するとともに、HCIで実現する今後のITインフラの方向性を示唆した。
国内HCI市場は毎年約200%の成長率
デジタルトランスフォーメーションが進展する世界では、データこそがビジネス価値の源泉となる。では、それを支えるITインフラにはどのような変革が求められるのだろうか。クラウドシフトが急速に進みつつも、オンプレミスのITインフラに対する投資も決して怠ることはできない。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ シニアマーケットアナリストの宝出幸久はこう語る。
「パブリッククラウド、プライベートクラウド、エッジコンピューティング、インダストリークラウドなどを適材適所で使い分け、分散環境を統合的に管理する『ハイブリッドクラウド』、スケーラビリティと俊敏性を向上させた『次世代ワークロードへの対応』、運用環境と利用効率の両面からの『既存環境の効率化』が、デジタルトランスフォーメーション時代におけるITインフラの条件となります」(宝出氏)
そして、その中心テーマとして言及したのが、オンプレミスITインフラの変革の有力なソリューションとして注目されるHCI(Hyper Converged Infrastructure)である。HCIとは、簡単に説明すると、さまざまなSoftware-Definedの技術とコンバージド(垂直統合インフラ)のアーキテクチャーの“いいとこどり”をして融合したものだ。
実際に国内市場においてHCIはどのような成長を見せているのだろうか。IDCの調査によると2015年時点のHCIの支出額実績は42億円だったが、2016年には83億円、2017年には158億円へと規模を拡大している。
HCIの導入理由のトップ3に挙がるのは、「運用管理コストの削減」「ハードウェアコストの削減」「安定稼働の実現」だが、宝出氏は「スモールスタートが可能である」「性能や容量の拡張性に優れている」「導入/構築が迅速にできる」「ビジネスニーズに対応できる俊敏性の向上」といった理由も着実にランクインしていることに注目。
「HCIならではのメリットが多くの企業に理解され、定着しはじめたことが、国内のアーリーマジョリティーへの急速な普及を後押ししています」(宝出氏)
導入企業の多くが感じたギャップとは?
続いて宝出氏は、HCIに関してIDCがアンケートを実施した「2018年 国内ハイパーコンバージドインフラストラクチャ利用動向調査」のさまざまな結果を公表した。
まず、HCIを導入した企業がどのような基準で選定を行っているのか。製品の観点では「拡張性の高さ」「パフォーマンス」「既存のハイパーバイザー管理手法の継承」が、ベンダーの観点では「導入コスト/TCOの低さ」「HCIの実績/事例の豊富さ」「ベンダーサポートの品質」がそれぞれトップ3となっている。
ただ、HCI導入前に想定していた効果と実際の効果にはギャップも見られる。回答結果の上位に挙がったのは「運用管理を一元化できなかった」「運用管理を効率化できなかった」「導入時間を短縮できなかった」「利用効率が向上しなかった」「初期投資を削減できなかった」などである。
多くのHCIの統合範囲は仮想マシン、ストレージおよびコモディティハードウェアにとどまっており、ネットワークやデータセンター管理との統合はまだ十分とは言えない。こうしたことからHCIの導入効果を“限定的”と捉える企業は少なくない。
ただ、だからといって、HCIの導入にブレーキがかかっているわけではない。同調査の回答者の実に9割超が「HCIへのシステム移行を進める予定がある」としており、今後もオンプレミスITインフラをHCIに統合する動きは加速していきそうだ。
IDCは国内ハイパーコンバージドシステム市場について、2022年まで年平均20.6%の高成長を持続するという予測を示している。
「短期的な成長要因は仮想化環境向けインフラの効率化で、用途および導入規模が拡大していることです。中長期的な成長に向けては次世代ワークロードへの対応、コンテナやIoT/エッジコンピューティングなど、より柔軟性の高いITインフラの実現、拡張性や俊敏性の向上が求められるデジタルトランスフォーメーションの進展が鍵となります」と、宝出氏は展望を示す。
【次ページ】HCIで何を実現する?選定のポイントは?
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