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2020年1月にはWindows 7がサポート終了を迎え、同年4月には中小企業も長時間労働の規制対象となる。すでにPC端末の入れ替えや業務アプリケーションの更新に着手している読者の方々も少なくないだろう。だが、企業のITインフラにおいて忘れてはならない要素がもう1つある。それは社内外のデータ授受を担う「ネットワーク」だ。VPNやリモートアクセスなどのデータ通信、およびペーパレスFAXなどの音声/FAX通信についてデータを基に考察する。
インターネット接続と無線LANだけでは不十分
ネットワークと言うと、「インターネットに接続できて、無線LANがあれば十分」と考える方も多いかもしれない。だが、中堅・中小企業におけるネットワーク関連ニーズは変化しつつある。
下記に記したグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業全体に対して、「働き方改革や人材不足に対処するIT活用に際して導入したいと考えるネットワークサービス」を尋ねた結果だ。
なお、選択肢に記載したネットワークサービスの説明は以下の通りである。
データ通信に関する項目:
- 「仮想ネットワーク(VPN)」
拠点間やオフィス/データセンタ間を仮想的なネットワークで接続し、安全や品質を確保する
- 「専用線接続」
拠点間やオフィス/データセンタ間を占有されたネットワークで接続し、安全や品質を確保する
- 「拠点間ネットワーク統合」
拠点間やオフィス/データセンタ間をつなぐ複数のネットワークを用途や混雑に応じて使い分ける
- 「リモートアクセス」
社外からオフィスやデータセンタのシステムに安全に接続する
音声/FAX通信に関する項目:
- 「電話着信管理」
顧客からの電話を社内の適切な部署/担当者もしくは外出中の従業員の携帯電話に着信させる
- 「内線通話のIP化」
クラウドで交換機の機能を実現し、PCやスマートフォンを社内外で内線通話器として利用する
- 「ペーパレスFAX」
FAX通信機能をクラウド上で実現し、PCやスマートフォンによるペーパレスの送受信を実現する
その他:
- 「音声とデータの回線統合」
音声通話用回線とデータ通信用回線を統合し、管理や費用の負担を軽減する
- 「データ通信の公私分計」
個人が所有する端末において業務利用のデータ通信料金を企業が負担する
- 「音声通話の公私分計」
個人が所有する端末において業務利用の通話料金を企業が負担する
上記のグラフを確認すると、「仮想ネットワーク(VPN)」(17.6%)の回答割合が最も高く、「リモートアクセス」(15.6%)が2番目に高い値を示していることがわかる。
なぜVPNやリモートアクセスが人気なのか
仮想ネットワーク(VPN)と言うと、「建設業において、現場と事務所の間で図面情報を安全に共有する」などのように、複数の拠点を持つユーザー企業が安全なデータ授受を実現するための手段として認識されていることが多い。そのため、拠点が1カ所のみであれば仮想ネットワーク(VPN)は必要ないと考えてしまいがちだ。
だが、昨今では業務システムをデータセンタに預けるケースも増えてきている。そこで、社内のLAN環境と同等の使い勝手を保ちながら、安全なデータ授受を実現する手段として仮想ネットワーク(VPN)が選択されるわけだ。
一方、働き方改革や人材不足に取り組むためには従業員が社外から業務を行える仕組みを整えて、「見積確認や日報提出のためだけに時間をかけて客先から帰社する」などの非効率な場面を減らすことが大切だ。
メールやスケジューラーといった情報系のアプリケーションはブラウザーで操作するものが多いので、社外からも比較的利用しやすいが、見積を作成する販売管理システムや日報を提出する顧客管理システムなどはクライアント/サーバ形態も多い。そのため、「ブラウザーに対応していないので、社外からは利用できない」と諦めてしまってはいないだろうか?
こうした場合に有効な解決策が2番目に回答割合の高い「リモートアクセス」である。リモートアクセスを実現する基盤技術として仮想ネットワーク(VPN)が用いられることもある。
このように業務システムの運用形態やワークスタイルの変化に応じて、企業が必要とするネットワークサービスも変わりつつあるわけだ。これまでの知識だけにとらわれず、「業務システムでの対応は難しいが、何かのネットワークサービスを利用したら実現できるかもしれない」という視点を持っておくことが大切だ。
【次ページ】卸売・小売業ではペーパレスFAXが強い人気、そのワケは?
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